初級試験
呆然としていると、魔呼に弾き飛ばされた小山田が瓦礫を払いのけながらゆっくり立ち上がった。
「まだ動くのか?」
「障壁に当たって飛んでっただけだもの。痛かっただけじゃない?」
魔呼は平然としている。
そりゃ、魔呼はあんな力を持っているのだから下級魔くらい平気だろうけど、僕にとっては命を奪われるかどうかの…ってもう無いんだった…じゃなくて魂になってるのに掴まれたり投げられたりで相手にならないんだが。
「じゃあまずはあいつから目を離さないようにして。」
「え?」
「当てればいいって言ったでしょ?」
「いや…だから…」
何が楽しいんだか分からないけど、相変わらず魔呼はニコニコとしている。
「野球でもテニスでも、ボールから目を離したら当たらないでしょ?」
「よく知って…じゃなくそれとこれとは違うような…」
「いいからやってごらん。」
どうなっても知らないぞ。
僕は立ち上がって向かって来る小山田をじっと見た。
「違う違う。そっちの目じゃなくて魔眼で見るの。」
「へ?」
小山田が僕の方へダッシュしてきた。
「大サービスよ。もう一回OJTやってあげるから体で覚えなさいね。」
「お、おーじぇーてぃー?」
「後で調べなさい。」
言うと魔呼は僕の背後に回って頭を両手で掴み、顔を小山田が近付いてくる方へと向けた。
「目を離しちゃダメよ。」
「は、はいっ!」
「次どうするか覚えてる?」
「えっと…額に力を入れる!」
「正解っ!」
ぐっと額に力を入れる。
額がジリジリと熱くなって熱が籠る。
魔呼が人差し指と中指を揃えて僕の額に添え、可愛らしい声で呟いた。
「しゅーとっ」
ビッ!!!
紫色の閃光が僕の額から小山田に向かって伸びたと思った瞬間には、既に小山田の眉間を貫いていた。
ズボッ!!!
小山田は体から黒い霧を吹き出しながら走って来た方向と真逆に吹き飛んだ。
魔呼に弾き飛ばされた瓦礫の所まで飛んでいった小山田は、呻きとも叫びとも取れぬ声というか音というか…を吐き出しながら動かなくなった。
「あた…った…」
「でしょ?」
魔呼は僕にニッコリと笑顔を見せ、視線を倒れている小山田の方へ向けた。
「あとは、あんたが経験を積んでいくだけね。」
「え?でも小山田も今ので…」
「あんたも凄いけどあいつも大したもんよ。」
小山田に覆い被さった瓦礫が崩れ、小山田が立ち上がる。
「取り敢えず、サポート付きの初級試験は合格ね。」
ここからが本番と言う事なのだろうか。
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