僕の力

 「魔呼…さん…どうして…?」

 「もう忘れたの?あんたの魔眼は私と繋がってるって。」


 魔呼の視線は小山田を捉えたまま動かさない。


 「あいつ何かおかしいと思ったけど、どうも憑かれてるのとは違うみたいね。」


 僕は滑るように魔呼から降り、魔呼と同様に空に浮かぶ小山田を見た。


 「違うってどういう事ですか?」

 「正確には分からないけど、憑かれてると言うよりはって感じかしら。」

 「憑かせてる?」


 国語の文法が間違っていなければ、小山田は下級魔を自分の意思で取り込んでいるって事なのか?


 「そんな事…」

 「普通は出来無いわね。余程精神力が強くて、そして欲望が強くなければ。」

 「欲望…」


 愛乃を自分のものにするという欲望か。


 と、上空の小山田が雄叫びを上げたと思うと、僕と魔呼に向かって突進してきた。


 「うわっ!」


 身を伏せようとする僕の隣で、魔呼が右手を小山田の方へ向けて微動だにしない。

 小山田が魔呼に掴みかかろうとした瞬間、魔呼と小山田の間に見えない壁のようなものが現れ、小山田は弾き飛ばされた。


 「ふんっ。たかが下級魔取り込んだ程度で調子に乗るな。」


 魔呼かっけぇ!


 弾き飛ばされた小山田は地面に叩き付けられて動かない。

 魔呼は先程現れてから始めて僕の方を見た。


 「あんた、自分の大切なものを守りたいと本気で思う?」


 突然何だ?


 「あいつの欲望の対象、あんたの大切な人なんでしょ?」

 「あ、うん…そうみたい…です。」

 「だったら自分で守りなさいな。」

 「でも…さっきの見たでしょ?僕じゃ全然敵わないですよ…」


 弱気な事を言って魔呼に怒られるかと思ったが本心だ。

 だが魔呼は優し気な笑顔で僕を見ていた。


 「力の差が分かっているならあんたは十分強くなれる。」

 「力の差は…たっぷり思い知らされました…」

 「じゃあどうするのがベストかしら?」


 力では勝てない。

 技なんか持ってないし…スピードもただ浮かんでいる程度。

 と言うか今まで『力』と呼べる事って…


 「火力?」

 「That's right!」

 「けど、いくら火力があっても当たらなければどうと言う事は無いって何処かの赤い人が言ってましたよ?」


 魔呼は何故か嬉しそうな顔をしながら、ごく簡単に言った。


 「当てればいいのよ。」


 いや、そうなんだけど…間違ってはいないけど…。


 「言っておいてあげるけど、あんたのね、多分あれだけの火力ある人は地獄でもそう居ないわよ。」


 僕は魔呼の顔を見て、目をぱちくりするしかなかった。


 

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