退魔
ずどぉぉぉぉぉん!!!
僕の額から伸びた紫色の光は、龍樹の前に立っていた見覚えのある男の体を貫き、黒い影を焼き払うかのような爆炎を作り上げた。
「うわぁぁぁぁ!!!」
龍樹の居た辺りに真っ黒なキノコ雲が立ち昇る。
爆風が僕と魔呼の居る場所まで襲い掛かってきた。
何て事だ…こんな爆発じゃ龍樹まで木っ端微塵になってるんじゃないのか?
「ビンゴォォォ!すっごぉぉぉい!!!」
嬉しそうに奇声を上げる魔呼。
「ビンゴじゃねぇだろ!僕に何て事させちゃったんだ!」
「あははは!よく見てごらんよ。」
僕は魔呼の指さす方向…龍樹の立っていた辺りに視線を移してじっと見る。
あれ?
キノコ雲らしき余韻はあるが、公園周辺は被害らしきものは何も無い。
龍樹も普通に松葉杖を持って立っていた。
目の前に居る男はそのままだ…が何やら様子がおかしい。
キョロキョロと辺りを見回しているようだ。
「何があったの?」
「あんたの魔眼から出した光で退魔したのよ。」
「たい…ま…?」
「そ。あの男、下級魔に憑かれてたみたいだったから、そいつだけふっ飛ばしたってわけ。」
わけが分からん。
「あの光は『魔』だけを浄化する光なの。だから関係の無い人畜や構造物には何も被害を及ぼさないわ。」
あっけに取られたまま光が伸びた方向を眺める僕。
「あの男も今のところ普通の精神に戻ったみたいね。」
「つまり…あいつは下級魔とかいうのに操られていたって事ですか?」
「そういう事ね。」
「でも、操って何をしようとしてたのか…分からないままじゃないです…か?」
魔呼がニコッと可愛らしい笑顔を見せる。
「心配しないで。あの男に憑いてる下級魔は一匹や二匹じゃないから。」
「え?」
「さっきふっ飛ばしたのは憑いてる内の二匹くらいね。」
「まじで?」
「初めてで二匹消せるなんて大したもんよ。自信持ちなさい。」
まぁ、超遠距離からの狙撃で霧散するくらいだから大した事は無かったのだろうけど。
「さっきの爆発でちらっと見えた奴が居たの。あの光を受けたのに退魔させられなかった…多分そいつがあの男を操ってる本体ね。」
もう一度龍樹の立っていた場所に目を向けると、龍樹がその男に松葉杖を振りかざして今にも殴り掛かろうとしていた。
「龍樹!止めろ!」
龍樹に声が届いたとは思わないが、振り上げた松葉杖は振り下ろされる事無く止まった。
龍樹が男に何やら言い放つと、男は這いながらその場を立ち去った。
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