Shoot!
魔呼はじっと黒い渦に視線を注いでいる。
「あれ、何なんですか?」
ひとしきり眺めていた目線を伏せ、『はぁ…』と小さく溜息をつく魔呼。
「あんた…まぁ知らないのも無理ないか。あれは下級魔が餌にした人間から吸い上げた魂が霧になって立ち込めているだけね。」
魔呼は大して興味無さそうに言う。
「魂を…吸い上げる…?」
「あんたらの言う悪魔は、現世の人間が持つ色んな欲望を糧に成長するの。欲望は魂に起因してるから、つまり悪魔の餌は人間の魂って事になるわね。」
「そんな事されたら魂を吸われた人間は…」
「ええ、勿論死ぬわ。」
あの霧の下には!
「あそこに僕の親友が!」
魔呼は黒い影を見つめたまま、僕の頭を鷲掴みにして『同じ所を良く見ろ』と言わんばかりにぐりっと首の向きを変えさせた。
「落ち着きなさい。その魔眼ならちゃんと見える筈よ。」
言われた通りに黒い影の辺りをじっと見る。
影ではなく、影の根元…松葉杖をついた龍樹の前にもう一人…見覚えはあるが…。
黒い影は龍樹ではなく、龍樹の前に立っているもう一人の男から立ち昇っていた。
二人は何やら話をしているようだが、さすがにここからでは何も聞こえない。
「…した…ねら…あばく…?」
黒い影を凝視したままの魔呼が何やら単語をぶつぶつと呟いていた。
「どうしたんですか?」
「どうやらあんたの親友とやらと話してるヤツがあんたの死因に絡んでるみたいね。」
「え?」
魔呼がすっと僕の背後に回り、頭を左右からがっと抱えて黒い影を正面に捉えさせた。
「いい?あの黒い影の根元のあいつをじっと見ておきなさい。」
「え?あ…はい…」
何か分からないけど言われた通りにしておこう。
「目を離しちゃダメよ…そう…その調子…」
何が起こるんだ?
「魔眼に気を集めなさい。」
「え?気?ど、どうやって…?」
「力入れりゃいいのよ。」
そんなので『気』とかいうのが集まるのか?
まぁ言われた通りにしておかないと、またあの棍棒で殴られてはかなわない。
これまた言われた通りに額に力を入れる。
額が少しずつ熱を帯びてくるのが分かる。
な、何だ?
「そのまま…そのまま…いい子ねぇ…」
魔呼が何やら嬉しそうな声を出しながら、僕の額に人差し指と中指を揃えてそっと触れさせた。
「しゅーとっ」
魔呼の口から可愛らしい言葉が発せられる。
ビッ!!!
鋭く空気を切り裂くような音と共に、僕の額…いや魔眼から紫色をした一本の光が真っ直ぐ黒い影に向かって伸びた。
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