親友の存在
龍樹の家は僕や愛乃の住んでいる住宅街の一番通り沿いの一角にある。
愛乃の家を出た僕と愛乃は、周りの景色を眺めながらゆっくり龍樹の家へと向かった。
愛乃は徒歩で、僕は空をふわふわと漂いながら。
ピンポーン
「はーい。」
龍樹の声だ。
玄関がカチャっという静かな音を立てて開き、龍樹が顔を覗かせた。
「どちらさm…って愛乃ちゃん…どうしたの?」
「突然ごめんね…ちょっと翔馬の事で教えて欲しい事があって…」
「あ、あぁ…いいよ。上がってく?」
「んっと、そこの公園でもいいかな?」
「分かった。じゃあちょっと待ってて。」
中に引っ込んだ龍樹が何やらドタバタと騒がしくしてから外へ出て来た。
ドアから顔を覗かせただけの時は気付かなかったが、外へ出て来た龍樹は、左足にギプスを巻き、松葉杖を付いていた。
「ど、どうしたのそれ?」
愛乃が驚いて問い掛ける。
僕も『どうしたんだ?」と声に出したが龍樹に聞こえている筈もないか。
「いやぁ、ちょっとヘマしてね。心配いらないよ。」
「そぉ?出るのしんどいならお家でもいいよ?」
「ううん、たまにこうして運動しないと元に戻らなくなるから。」
明るい笑顔だ。
しかし、僕と違って運動神経抜群の龍樹が、ちょっとしたヘマ程度で松葉杖生活になってしまうような怪我をするだろうか?
「それで、翔馬の事で訊きたい事って?」
公園に着いてベンチに腰掛けると同時に龍樹が口を開いた。
「うん…あの事故の事なんだけど…」
愛乃は事前に話した僕が気になっている事を中心に質問してくれた。
龍樹は愛乃の口から出る質問をじっくり噛み締めるように聞き入ってくれていたのだが…
「愛乃ちゃん、正直に答えて欲しいんだけど…」
「え?」
「愛乃ちゃんは翔馬の事故の事、本当に何も知らないんだよね?」
突然龍樹が質問する側になった事と、予想していなかった質問が飛んできた事で、僕も愛乃もいったい何の事か分からず、龍樹の顔を見たまま固まってしまった。
「うん…だからあの時一緒に居た一条君なら何か知ってるかと思って…」
少し申し訳なさそうに愛乃が返す。
龍樹の顔に笑みが浮かぶ。
「『何か』じゃなくて『全部』知ってるよ。」
「え?」
松葉杖をついて龍樹がベンチから立ち上がる。
「でも今は言えない。」
「どうして?」
愛乃の顔が険しくなっている。
「解決したら全部話すから。今は言えないんだ。」
龍樹は器用に松葉杖を使いながら家へと帰っていった。
龍樹は何を知っているんだ?
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