何故だ
「え?誰か居るの?」
部屋の中の愛乃が仏壇の前から立ち上がり、庭の方へ歩み寄る。
僕の姿は見えない筈だし声も聞こえない筈なので、恐らく別の何かに気を取られただけだろう。
「翔馬?」
え?
応接室の庭に面したガラス越しに愛乃を見ると、明らかに愛乃の目線は僕の方を見ている。
見え…てるの…か?
僕は無理矢理笑顔を作り、愛乃に向って手を振ってみた。
「翔馬!!!」
ガラス戸が勢いよく開けられ、僕に飛び掛からんとする勢いで抱き付いてくる。
が、触れられるわけもなく、愛乃はそのまま庭の芝生の上にダイブした。
「いたたた…」
潰されたカエルのように芝生に貼り付いた愛乃をあっけに取られて見ていると、愛乃はがばっと体を起こして僕の方に振り返り、その涙でぐちゃぐちゃではあっても可愛らしい顔を僕の鼻先に突き付けてきた。
「ちょっと翔馬!酷いじゃないのっ!」
「あ、いや、ごめん。てか…僕が見えるの?」
「見えるわよ!」
「声も…聞こえてる…んだ…」
「ええ!はっきりくっきり聞こえてるわよ!」
何でだ?
まぁ今は愛乃に見えている事だけでも喜ぼう。
「愛乃ぉ!」
僕は愛乃の手を掴んで再会を喜ぼうとした…が、さすがに触れる事は出来ないようで、愛乃の手を掴もうとした僕の手は空を切った。
「何やってんの?」
「いや、何でもない。それより愛乃は驚かないんだね。」
「十分驚いてるけど、翔馬に会えたのが嬉しくて…」
「会えたって言っても幽霊だけどね。」
「うん…それでも…嬉しい…」
何て愛らしいんだこの幼馴染は。
触れられないのがもどかしすぎるので、形だけでも頭を撫でる仕草をしておいた。
「ここじゃ何だから私の部屋に行こ。」
「愛乃の部屋なんか何年ぶりだろうな?」
「小さい頃はよく遊びに来てたのにね。」
愛乃はうちの玄関から出て隣の自宅へ、僕は庭からそのまま愛乃の部屋に流れて行った。
「ふぅん。それで幽霊になっちゃったのかぁ。」
愛乃の部屋。
僕は天井付近をふわふわ浮かびながらこれまでの経緯を語って聞かせた。
愛乃はベッドの上に座って僕の話に耳を傾けていたがあっさり納得しているようだ。
「全く疑わないんだ。」
「ん?だって翔馬の言う事だからね。信じてるもん。」
僕を見ながら笑顔を見せる愛乃。
何だこの可愛い幼馴染は。
触れられるならあの盛り上がった二つの膨らみや制服のスカートから覗くむちむちの太腿を…
僕の体に全身の毛根が焼け焦げるかと思うくらいの電気が走った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます