覚悟を決めるか
「何れにしても、貴方をこのまま放置する事は出来ないわ。」
「僕はどうすればいいんでしょうか?」
「今までに例の無い事なので上手くいくかどうかは分からないけど、貴方が死ぬ直前に受けた『衝撃』が何なのかを探れば何か分かるかもしれない。」
「探るって言っても…どうやって…?」
魔呼はすっと立ち上がると、今度は得意気な顔で僕を見下ろしていた。
「貴方は彷徨っているのよ。」
「は、はぁ…」
「天界と地獄へは行けないけど、あんたたちの言う『幽霊』になって現世を覗く事は出来る筈よ。」
「え?それって…つまり…」
「何よ?」
「女湯覗き放題…」
どこから出したか、魔呼の右手には牛をも真っ二つに切り裂けそうな巨大な刀が握られていた。
「もう一度、死んでみる?」
「冗談です。もう二度と言いません。ごめんなさい。」
僕は魔呼の前に頭を地面にめり込ませる勢いで土下座した。
「ったく…こんなの一人で現世に行かせたら何しでかすか分かったもんじゃないわね。」
魔呼は僕の胸倉を掴んで引き起こすと、その長い爪を額に当ててゆっくり押し付けだした。
『ずぶりっ!』っと魔呼の爪が僕の額に沈み込んだ。
「痛い!死ぬ!痛い!死ぬ!痛い!死ぬ!痛いぃぃぃ!!!!!」
「うるさい!あんたもう死んでる!生きてた時ほど痛くない!我慢なさい!」
「あ、うん…確かにそんなに痛くないかも…って何したんですか?」
魔呼がしゅっと爪を僕の額から引き抜くと、額の真ん中にじわっと熱が籠るのが分かる。
「ふぅっ!あんたの額に『魔眼』を埋め込んだのよ。」
「まがん?」
「そう。この魔眼は私の目と繋がってるの。あんたが現世で邪な行いをしないように監視する為にね。」
「ソンナコトシマセンヨ。」
「もし良からぬ事をしでかしたら、その魔眼を通じてあんたの全身に魂が砕け散る程の痛みが走るからね。」
「え…?」
そんな…折角幽霊になって誰にも咎められる事無く女湯や女子更衣室が出入り自由になると言うのに…。
思うや否や、脳の奥から臀部に掛けて電気でも流されたのかと思うような鋭い痛みが一直線に走った。
「ひぎぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
尻を押さえてもんどり打つ僕を、魔呼が冷ややかに見下ろしてきた。
「あぁ、頭で考えるだけでも思考は私に届くからね。」
「そ、そんな…」
「何の為に現世を覗きに行くのよ?」
「は、はい…」
色即是空空即是色…僕は煩悩を必死で抑え込んでいた。
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