つまりそういうこと
その後、魔呼は暫く入れ替わり立ち代わりやってくる肌の色が赤やら青やら緑やらで頭に黄色いツノみたいなのを付けた男の人とあれこれ話をしていた。
どれくらい放置されていただろうか。
たっぷり待たされた後、僕は魔呼に呼ばれた。
「色々調べたけど、どうも貴方は何かの衝撃で間違ってこっちに飛ばされたみたいね。」
すっげぇ漠然としていて何の事かさっぱり分からない。
「えっと…もっと具体的に教えて貰えませんか?」
分からないままでは動きようもないので詳しく訊きたかったが、どうも魔呼もこの状況がよく分からない様子で、少し困ったような顔をしている。
「まず、貴方は既に死んでいるって事だけは間違いないわ。生きている人間はどう間違えても此処へは来ないから。」
そっか…僕はあの事故で死んでしまったのか。
「で、死んだ人間はまず天界へ行くか地獄へ行くかが自動的に判別される門をくぐるんだけど、どうも貴方はその最初の門をくぐっていないみたいなの。」
「え?それって…まさか…」
「そのまさかの可能性が高いわ。何らかの衝撃を受けて、門をくぐらず直接此処へ飛ばされたって感じね。」
「事故現場ではそんなに跳ね飛ばされた感じじゃなかったですけど。」
事実最後に目にした、あの道路に倒れていたのが僕であるなら、車からそれほど離れていない所に倒れていたのだから。
「いいえ…ここで言う『衝撃』ってのは物理的な衝撃じゃなくて心理的な衝撃よ。」
「心理的な…衝撃…」
「つまり、肉体と魂が切り離される直前に精神的なショックを受けた…しかも生前考えた事も無いようなショックを受けたとなれば可能性として無くもないかな…と。」
そうは言われても、事故すらはっきり覚えていないのに、その直前にショックを受けるような事があったなんて全く記憶に無い。
「そして、このままだと貴方の魂は天界へも地獄へも行けず、永遠に現世との間を彷徨う事になるわ。」
「えー…地獄へは行きたく無いけど天国へ行けるような徳も積んでないし…かと言ってこのままこんな所を彷徨うのも嫌だなぁ。」
「人が住んでる所を指してこんな所とは何よ!」
「あ、ごめんなさい。悪気は無いんです。」
ふぅっと小さく溜息を吐いた魔呼は、僕の目の前にしゃがみ込んで言った。
「分かってるわ。つい苛立ってしまって私こそごめんなさいね。」
何か急にしおらしくなったぞ。
逆に怖いんだけど。
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