此処は何処?

 「ふぅん。それで気が付いたらここに居たと?」




 気の無い話し方をするのは魔呼まこと名乗った女性。

 本人曰く『閻魔大王の姪』だそうだが、どこからどう見てもコスプレした女子高生にしか思えない。

 頭にはよくあれでバランス取れるなと思うほど大きくぐるっと巻いた羊のようなツノ。

 肌は黒いが地肌なのか塗っているのかよく分からない。

 あれでよく物が持てるなと思うほどに伸びた爪。

 今にも零れ落ちそうな豊満な胸の膨らみは辛うじて薄い布で隠されている。

 これまたちょっと激しく動いたらナニがコンニチハしそうな布が下半身を覆っている。


 「何ジロジロ見てんのよ?」

 「あ、いえ、何も見てないです。」

 「嘘吐け。いやらしい目で見てんの分かるんだからね。」

 「ごめんなさい。見てました。」

 「次嘘吐いたらチ○コ引っこ抜くよ。」

 「え…舌…じゃないんですか?」

 「それやってるの伯父さん。」


 色々あるんだなぁ。

 一つ勉強になった。

 けどチ○コ引っこ抜かれてはたまらないので二度と魔呼に嘘は吐かないようにしようと誓った。


 「けどねぇ…」


 魔呼が難しそうな顔をして、広辞苑も負けないくらい分厚い本をパラパラと捲って言った。


 「あんたの名前が無いんだよねぇ…こんなこと有り得ないのに…」

 「はぁ…それより…」

 「何よ?」

 「此処は何処なんですか?」


 魔呼は一瞬驚いたような表情をした後、『はぁぁぁ…』と大きな溜息をついて言った。


 「名前が無いなら知らなくて当然か…。此処は地獄の入り口のずっと手前にある門なの。此処に来る人がこの先進むべき方向を示すのが私の役割よ。」

 「へぇ~大事な役割なんですね。」

 「そ、そうね!私が間違えたらそれこそ大変な事が起きるわねっ!」

 「どんな事が起きるんですか?」

 「さ、さぁ?…今まで起きた事が無いから分からないわ。」


 魔呼はさも得意気な表情で大きな胸を突き出して威張っている。

 あんまり突き出すとポロリしそうだ。

 何かチョロそうな感じもするけどまぁいいか。


 「此処に来る人は全てこの『来訪者リスト』に載ってる筈なんだけど、貴方の名前が何処にも載ってないのよね。つまり、貴方は此処に来るべき人では無いと言う事になるわね。」

 「見落としてませんか?」

 「そんなわけないでしょ!何年やってると思ってんのよ!」

 「何年くらいやってるんですか?」

 「女性に年齢訊くような野暮な真似はしない事ね。」

 「あ、はい。」


 魔呼の顔が真顔になってる。

 真剣にこの人は怒らせない方が良さそうだと思った。


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