2-2
その威力――相手を一撃で沈黙させるほどの威力はチートと言われても過言ではないのだが、動画を視聴しているユーザーはデンドロビウムをチートとは思わなかったという。
デンドロビウムは他にもハンドガンを持っており、そちらの方は火力が剣よりも低いだろう。数発命中しても相手が沈む気配がない。
「我々の武器の威力に恐れ、そんな強がりを言うのか!」
別の男性プレイヤーがミサイルランチャーを発射するが、そのミサイルが爆発する事はなく、ハンドガンの弾丸が命中しただけでミサイルが消滅する。
この光景を見た別のプレイヤーはデンドロビウムがチート使いだと考えた。
「チートや不正ツールを使って、恥ずかしくないのか?」
別のプレイヤーが発言した、これが自分の首を絞めるような自爆発言だった事は――後になって気付いたのだと言う。
後にネット上で拡散し、チートプレイヤーに対するネット炎上が拡大している段階でお察しだろうか。
「この私をチートだと? 貴様は自分がやってきた事を棚に上げて――どの口が言う?」
デンドロビウムに地雷発言をしたプレイヤーは、彼女が展開していた蛇腹剣で串刺しにされたという。
串刺しと言っても大量出血するような物ではないのだが、命中したプレイヤーは絶叫の末にスタート地点へ強制リスポーンされた。
どうやら、出撃コスト的な問題でも発生したのかもしれないが――詳細は相手プレイヤー側のみが知る。
何かされたのに気付かない相手は、リスポーン地点に転送された段階で何が起こったのかに気付く。
「まさか――瞬間的に決着したのか?」
プレイヤーの一人は、ここに転送された段階でフルになっている事に気付き、ガジェットを使って輸送機の場所を探っていた。
それ以外のプレイヤーはデンドロビウムに一太刀でも浴びせようと、発見地点へ急行する者もいる。
「待て! それ以上の人数が向かったら、輸送機が目的地に――」
輸送機の位置を調べていたプレイヤーが他のプレイヤーに指示を出し、デンドロビウムのいた場所へ向かうプレイヤーを止めようとする。
しかし、その声を聞き入れようと言う人物は誰もいなかったと言う。
その後、他の味方プレイヤーはデンドロビウムの無双とも言える光景を目撃する事無く――無事に輸送機を目的の場所へ誘導に成功する。
それに気づいて駆けつけた相手側プレイヤーも目的地寸前までたどり着いた段階で阻止行動に出るのだが、駆けつけたのが3人程度では結果が分かっていた。
明らかな戦術ミスが、今回の敗北に直結したと相手プレイヤー側は思うだろう。
この動画を発見した人物は複数存在し、まとめサイト等にリンクを載せていたと言う。
しかし、アップされた動画サイトで発見し――そこで見ていた人物の方が多かったのは言うまでもないだろうか。
その理由はまとめサイトがアフィリエイト目的や超有名アイドルグッズを購入する為の資金稼ぎ用のクローンサイトだったというのもある。
「彼女が噂の――デンドロビウム」
様々な武器関係の本が並んでいた本棚、いわゆるロマン武器のレプリカ、ロマン武器を装備したロボットやキャラのフィギュア――。
そうした物があふれているような部屋でタブレット端末を片手に動画を見ていた女性がいた。
服装はタンクトップにスパッツ、腕にはリストバンドもしている。体格の方は明らかに筋肉質と言うか、現代版アマゾネスと言えるだろう。
「でも――彼女も、このゲームの本質を理解していない」
タブレットを持っていない方の左手の人差し指で画面を操作しつつ、彼女は周囲を見回して何かのカタログを発見した。
カタログを発見してからは、タブレット端末はテーブルに置き、カタログの方をパラパラとめくっている。
彼女がデンドロビウムの行動等に違和感を持っていたのは、彼女がめくっている冊子の表紙に答えがあった。
【イースポーツ】
他にも色々と書いてありそうなカタログだが――彼女はデンドロビウムが何を理解していないと言うのか?
困惑しているような表情は、間違いなく理解していないと判断している証拠と言えるが。
「アーケードリバースは、ただのARゲームじゃない――」
他にも彼女は何かをデンドロビウムに言いたそうな表情をしていた。
動画の中のデンドロビウムが彼女の話を聞ける訳もない。それは当然なのだが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます