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 ウォースパイトの装備、それはスナイパーライフルに何かの装備を付けたような武器、黒マント、デュアルアイのARメットが特徴だった。

不良グループはARメットのような装備をしていない。つまり、拡張現実で作られた装備は確認出来なかったと言える。

あるいはチートガジェットを使っていた関係で装備を見る事が出来なかった可能性も高い。

その後、ウォースパイトはスナイパーライフルを使う事無く、近接武器で次々と不良グループを沈黙させていった。

そのスピードは想像以上で、忍者と言える位の早さだ。反応速度もそれに近い可能性が高いのは言うまでもない。

『貴様たちには――分からないだろう!』

 不良グループの一人を道路に叩きつけ、そこからスナイパーライフルに装備されていた別の武器を展開、それを腹に――。

『これが――ARゲームの痛みだ!』

 攻撃を受けた不良は腹を抑えるような仕草を取ろうとしたのだが、その直後に気絶した。

その威力は異常と言えるような物なのだが――不良グループ側もジャックの装備を考えないで戦闘を行った為、ある意味でも自爆と言えるだろうか。

「パイルバンカーか。スナイパーライフルを使用する遠距離型のプレイヤーと思ったが、メインは近接と言えるかもしれない」

 モニターで映像を見ていた彼女は、ウォースパイトのメイン武装が分かっていた。

不良の腹に固定した武器、それはパイルバンカーと呼ばれるロマン武器。

何故、ウォースパイトがロマン武器を愛用するのかは――この際どうでもいい。

今はどのような戦術で不良を駆逐したのかを知るべきだったから――。



 バトルを視聴後、ギャラリーの一人が彼女に襲いかかろうとした。

周囲のギャラリーも気づいているかもしれないが、下手に関わり合いを避けたいと考えて通報しなかったのだろう。

「――デンドロビウムめ!」

 どのような理由があるのかは不明だが、彼女の事をデンドロビウムと叫び、ナイフを刺そうとするのだが――その行動は無駄だった。

そのナイフの刃は――彼女の顔をかすめる事もなく、消えてしまったのである。

どうやら、持っていたナイフはARウェポン――つまり、本物ではなかった。

「何の恨みがあるのかは知らないが――君の様な人間に覚えはない」

「覚えがないだと! 超有名アイドルのテレビ番組を知り合いに見せる目的でアップロードしたのを――」

 男性の発言に反応したのか不明だが、デンドロビウムは血相を変えて何かを即座に呼び出し、それを男性の首元二〇センチ辺りまで近付けた。

最初の冷静な一言とは違い、明らかに感情的になっていそうな――反応速度でもある。



 デンドロビウムが持っている武器、それがチェーンソーである事は周囲のギャラリーも分かっていたのだが、警察に通報しても無視されるのは目に見えていた。

それに――チェーンソーの重さは相当なもののはずなのに、デンドロビウムはまるで木刀を振り回す感覚で持っている。

それでは明らかに、これがARゲームと言っているような物――。

 ARゲームの事件は警察の方でも捜査権限がないと言うよりも、馬鹿馬鹿しくて介入したがらないというのが見解だからだ。

実際、警察が過去数年の間にARゲーム関係の事件へ介入した事は一度もない。SNS炎上案件でも、警察が直接に関与したのは数例しかないのも理由の一つだろうか。

「テレビ番組の違法アップロードは犯罪だと、CMで教わらなかったのか?」

 デンドロビウムは抵抗を続けようとする男性に対し、チェーンソーを近づける。

その距離は、首元まで五センチ――チェーンソーのチェーンは動いているように見えるが――。

「犯罪者と言う言葉でまとめるのも――警察に迷惑だな。風評被害になるかもしれない」

 デンドロビウムは、最終的にチェーンソーの刃を首元数センチ位までで止めた。

実際はチェーンソーと言ってもARウェポンなので、人間に害がある訳ではない。

ARウェポンを凶器や大量破壊兵器として使えたら――それこそ事件になるのは間違いないだろう。

「チートプレイヤーは、誰であろうと情け無用――!」

 そして、デンドロビウムはチェーンソーを解除し、そのまま何処かへと姿を消した。

チートプレイヤーを犯罪者と言うカテゴリーにする事も――風評被害かもしれないが、ある程度はマシと言う結論だろうか?



 そして、彼女は後に【不正破壊者チートブレイカー我侭姫デンドロビウム】と呼ばれる程の実力者となる。

平成の時代、ARゲームが様々な事件で風評被害を受けた。それに対し、これを芸能事務所の仕業と言う者もいるだろう。

あるいはアカシックレコードに書かれた予言が現実化したという人物もいるだろう。

 しかし、彼女はそんな事はどうでもよかった可能性が高い。

全ては――チートと言う名の犯罪を根絶する為に、彼女は戦い続けるのだから。

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