本質的量産型自己表現
小説を書く。
なぜなら特別な自分でありたいから。クラスメートと一線を画した存在でありたいから。
そんなふうに量産型の個性をぶら下げているのが嫌になった。
頭のどこかで国語の点数の低い人たちを見下しているのを自覚するたびに、目の前が暗くなる。隣の芝生が枯れていると確認したくなる。
誰もこんな人間になりたかねえよな。
自分の足元を見つめる。真っ黒に焼け焦げた芝生。なにも生えていない。
こわい。
ネットにアップした小説に評価がくるのが。自分の承認欲求が深まるのが。
肥大してぷっくりと膨れたにきびのような心をぷちりとつぶしてしまいたくなる。
大した評価もないのに粋がってんじゃねえよ。
スマホの通知画面を見ては、新たな評価が来ていないかを気にする。
心は化膿する。醜い。潰れた傷口からは黄色い膿が垂れる。汚い。血が混じっている。
私は私として生きたいだけなのに。他の誰でもない私として。
本当の望みを考えれば考えるほどに、陳腐だ。結局、量産型の人間なのだ。
こんなことを考えていると、人間であることすらやめたくなる。
天井を見つめる。明かりを消した天井。木目に人の顔を見出す。見透かされている気がする。私の醜い人間らしい心の全部を。
私は小説を書く。
陳腐でも、無個性でも、量産型でも構わないと開き直ったふりをして。
評価をもらえるか否かに一喜一憂をするのはやめられないけど。心の膿は無くならないけど。
この行為以外に代わりはないのだ。
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