支援

日本国 首相官邸


「とんでもないことになってしまったな。」総理は外務相からの報告に大きなため息をつく。


「武装勢力の攻撃により6つの国で王が死亡、そのうち2つの国では後継者争いですか。」総務相が言う。


「報告の続きですが16の国から支援要請が来ています。」外務相が言う。


「支援物資と人員を送るべきでしょうか?」内務相が言う。


「それは難しいでしょうね。」国土交通相が言う。


日本がこの世界に召喚されて来たとき、航行中の船は一緒に召喚されてきたが大半の船はそうではなかった。恐らくは元の世界に置き去りになっているのだろう。確かめる術はないが。いずれにせよ、日本の海運力は召喚前に比べると大幅に低下している。


「しかし、どうせ彼らの貯蔵穀物を日本に運び込むため貨物船を向かわせるのですよね。行きで積んでいけばいいのでは?」環境相が言う。


「ただでさえ少ない船を護送船団方式で運用しているのです。16ヵ国に同時に向かわせる余裕なんてありません。」国土交通相が言う。


「我々としても艦船が足りません。」防衛相も反論する。


「なら一部の国へ向かわせたらいいだけでしょう。」環境相は懲りずに続ける。


「そんなことをすれば、向かわせなかった国に反感を買います。」外務相も反論に加わる。


「周辺の武装勢力は排除できたのですよね。ならば!護衛船団方式を解除してもいいのではないですか?」


「二回の船舶の襲撃のせいで、組合が及び腰になっているようです。」経済産業相が言う。


「あれだけ、護送船団に反対していたのにな。」総理は呆れ混じりに言う。


「因みに、具体的な現地の状態はどうなったいるのですか?」もう議論は終わったというように防衛相が報告の続きを促す。


「砲撃が激しかったらしく、住居を失い難民化した市民は140万人ほどだそうです。当初予定にあった貯蔵分の穀物の日本への輸出も、貯蔵庫自体の崩壊で不可能となっています。」


「16の国に、均等に支援を送るのは不可能だな。しかし、全くなにもしないわけにもいかんだろう。資源の多い国に医療物資とテント、できれば医者も優先的に支援し今後の関係を優位に進めたい。他の国にも形だけでも支援をしようか。具体的なことは官僚に任せよう。」


「報告したいことがあと一件あるのですが…。」外務相がそう言うと、総理は顔を強張らせる。


「また何か起こったのか!」


「いえ、サンドール王国より派遣されていたアウグスト大使が帰国されました。」面倒事を聞くことに慣れた一同は安堵のため息をを漏らす。


「しかし、船が出ていないのではなかったか?」国土交通相は訝し気に聞く。


「公式にはです。金さえ掴ませれば渡してくれる密航業者がいるようです。」


「そうか。正直に言って彼の身柄をどうするべきか考えあぐねていたところだ。向こうから去ってくれたのは正直助かる。」総理は正直に意見を言う。


「そういえば、人工衛星の打ち上げはどうなっている?」


「もう間もなく準備が終わると聞いています。」文部科学相が答える。


「そうか、なるべく早く頼む。」


「はい、伝えておきます。」


会議はお開きになり、大臣と官僚は各々の仕事へ戻っていった。

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