港湾都市
アンゴラス帝国 港湾都市デザイル 酒場マスラトール
「姐さん、ビールとソーセージ!」
「こっちもビール追加で!」
「パスタお願いしまーす!」都会に憧れ家を飛び出し、この酒場で給使を始めてはや2年。こんなに、忙しいことは初めて見たかもしれない。
「店長!ソーセージとパスタ1丁!」
「りょーかい」顎髭を生やしたここの主は言う。
「本当に最近は忙しすぎますよ!」
「たしか、今日が出征式だったからな。明日にはもとにもどるさ。しかし、大陸軍の出征なんて何百年ぶりだろうな。これを逃したら一生目にできんだろうな。」
「見に行っていいですか?」リリーは目を輝かせて言う。
「ダメだ。この客は誰が捌くんだ。」
しばし間が空いて、リリーは口を開く。
「あ痛たたたた!仮病でお腹が痛いです!ちょって外で休んできます。」リリーは駆け出す。
「おい、まてっ!自分で仮病って言ってるじゃないか!戻ってこい!カムバック!」しかし、その声がリリーに届くことはなかった。
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道路は既に人で一杯で、屋根の上、木の上、停車しているゴーレムの上で人々は一生に一度あるかという光景を目にしようと躍起になってある。リリーもその一人だ。港にはいつもより多くの船がならび、一足早く縄を解いた船は、列を組み並んでいる。
埠頭では、軍楽隊が軽やかに行進曲を響かせ出征を祝っている。
「帝国万歳!」隣の観客が口にだし、リリーもそれを繰り返す。いつしかそれは合唱にかわり、群衆に興奮と一体感もたらした。
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大陸軍第三艦隊旗艦ローレンス
葉巻を燻らせながら艦隊司令エセルバードは呟く。
「素晴らしい見送りだな。」人の波を満足そうに見つめる。
「大陸軍の出征なんて400年前の大魔導危機以来ですからね。デザイルはお祭り騒ぎですよ。」
「彼らの期待に答えねばならんな。」エセルバードは嬉しそうに言う。
「全艦、出港準備完了しました。」通信士が報告に来る。1200隻の船からの通信を数人で切り盛りしたせいなのだろうか。少しやつれている。しかし、彼にはまだ休まれるわけにはいかない。
「とうとうか。全艦に伝達、魔導機関始動!日本へ向けて進路を取れ!」通信士は小走りして階下へ戻って行った。
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