想定外の勝利 下
サマワ王国
王都には艦砲射撃により破壊された建物の瓦礫が幾重にも重なる。
「なんたることだ…」サマワ王国の王、サマワ・ラ・マタワは悲愴感に包まれながら言う。
「陛下。お気を確かに。大半の住民は避難しておりました。」
「そうです。帝国軍の攻撃があったにも関わらず、それを押し返せたことを喜ぶべきです。」外務相は言う。
「そうだな。日本には感謝していると伝えてくれ。」
「しかし、船1隻は沈みはしたものの、あの帝国軍を赤子のごとく捻り潰すとは…」
「白竜にすら砲があたっていました。とんでもない命中率です。」と内務相。
「鉄でできた竜?その速度も素晴らしかった。」
「日本の力はアンゴラス帝国を遥かに上回っている。勝ち馬に乗れたことを感謝せねばな。」とサマワ・ラ・ワラマ。
「日本より要請があった、各国大使を日本観光旅行への仲介の件ですが、14の国より前向きな返事がありました。」外務相が報告する。
「良かった。今のうちに少しでも恩を売らねば。」サマワ・ラ・ワラマは安堵しながら言うのだった。
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サマワ王国 とある酒場
倒壊した建物が並ぶ中、酒場は無事であった。だが、振動の衝撃で瓶が割れ酒が提供できる状況ではない。それにも関わらず、大勢の人が集まっていた。
「帝国の奴らめ。よくも俺の家を。」
「家だけならまだましだろ?あいつの子供なんて瓦礫の下敷きになって…」項垂れた男を指差しながら言う。
「避難しなかったのか?」
「途中ではぐれたんだとよ。」
「そりゃ、まぁ…」
「しかし、日本の船と竜は凄かったよな。」澱んだ空気を変えようと男が話し出す。
「あれは凄かった。あいつらなら帝国なんかに負けない。絶対仇を討ってくれるさ。」
アルコールの無いせいか、話題は暗いものが多かった。
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日本国 首相官邸
「まさか、護衛艦が沈むとは…。」総理は悲観の表情を浮かべる。
「攻撃が予測よりもかなり早かったですな。防衛相省は全く何をしてるのだか。」環境省が言う。
「独立宣言の2日後に襲撃があるとは、アンゴラス帝国の位置から見て考えられませんでした。前回、及び今回の戦闘に伴い対艦、対空ミサイルが著しく不足しております。サマワ王国よりアンゴラス帝国の総艦艇数は7000隻を越えるとのことです。このままでは底をついてしまいます。」と防衛相。
「予算は通すが、今日通して明日増える訳ではないからな。暫く大規模攻撃が無ければよいが。」
「代えの護衛艦の建造も予算に組み込んでいただいても?」
「分かった。」
「続いて外務省より報告です。サマワ王国の仲介により、14の国より観光客、実質的な外交使節団が派遣されます。その後の進展によっては、各国より不当に国を占拠する武装勢力の排除の要請が成されるでしょう。」外務相が言う。
「少ないな。外務省の怠慢ではないのか?」環境相が文句を言う。
「アンゴラス帝国の恐怖が染み付いている国や地域も少なくありません。しかし、各国の独立が実現すればそれも変わってくることでしょう。」
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サンドール王国
「…よって我が国は、日本国へ使節団の派遣を決定する。」玉座に腰を掛けこの国の王、サンドールⅨ世は言う。
「お待ちください。アンゴラス帝国がどのような手段に出るか…」
「黙れ!女が政治に口出しするでない。」サンドールは娘、つまりこの国の姫であるローザを怒鳴りつける。
「何度言わせれば分かるのだ。この無能が!」
「お父様の判断は間違っております。」
「黙れと言っておるのだ!今すぐ黙らんと牢にぶちこむぞ。」再び怒号が響く。家臣達はまたこれかとうんざりした表情を浮かべている
「申し訳ありません。」ローザは謝罪をするが、握った拳は怒りで震えていた。
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