サマワ王国上陸作戦 上

サマワ王国より北20km


「全ミサイルの命中を確認。全ての脅威、消失しました。」


「ふぅ。当たると分かっていても、緊張するものだな。」司令が疲れ混じりで言う。


「間もなく、潜水艦より報告にあった島が見えてくるはずです。」


「しかし、ドローンの画像を見てみてもやはり敵は帆船に見える。竜といい帆船といいどうなっているんだ?」司令の問に答えられる者は、この場にはいなかった。




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サマワ王国 駐留軍 司令部


「艦隊が連絡を絶っただと!ありえん。40隻だぞ。40隻も差し向けたのだぞ!」司令は吠える。


「いえ、それが本当に連絡を絶っていまして…。魔導探知機からの反応も、竜母から発艦したと思われる白竜も含めて消失しました。」司令は顔面蒼白になっている。


「これから、艦隊がここに集結するというのに、私の顔が立たないではないか!大陸軍高官に返り咲く夢が…」


「司令、軍港の見張りより連絡です。灰色の巨船10隻を確認したとのことです。」追い討ちをかけるように報告が舞い込む。


「残存艦も白竜も全て出せ!なんとしてでも、あいつらを沈めろ。」鬼のような形相で、自らの出世の道を閉ざした敵に攻撃命令を出すのだった。




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「何だあれは!」


「キャー」


「逃げろ!海から離れるんだ。」


サマワ王国、王都は大混乱に陥っていた。馬は暴れ、人は川へ落ち、子供の泣き叫ぶ声がこだまする。そんな街を見下ろすところに、単調なデザインながらも荘厳な白い城が建っている。その城の一室にて


「駐留軍から返答は来ないのか?」サマワ王国の王である、サマワ・ラ・マタワは問いかける。


「はい。あの巨船に関して未だに情報はありません。ただ、今朝40隻の帝国軍船が港を出航しました。関連があるかもしれません。」外務相が答える。


「引き続き、情報収集にあたってくれ。これは国の運命を左右する大事件になるやもしれん。」サマワ・ラ・マタワは、国の将来を憂うのだった。


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サマワ王国 トランスト軍港


それは、塊だった。島のように巨大で、ゴーレムより重厚な鋼鉄の塊。アンゴラス帝国が何年かかろうと作り出せないような巨船。


「ファイヤーボール撃て」船長が号令をかけ赤い球が4つ羽の小さな竜へ向かう。そのうち幾つかが当たり竜は海へと沈む。


「速くロープを切れ!出航させるんだ。」副船長が怒鳴る。


「まだ風魔法の充填率は20%です。不可能です。」操舵長が答える。


「敵艦より、煙があがりました!」8隻の巨船から白い煙が立ち昇る。


「魔導砲か?いや、そんなはずない。魔法も使えぬ野蛮人どもが魔導砲を持っているはずが…。」船長が言い終わるより前に衝撃が来た。すぐ隣の戦列艦が爆沈したのだ。


「そんな馬鹿な!何だあの命中率と威力は。」船長は恐怖する。上を向けば白竜が光の矢に撃ち落とされている。私は悪夢でも見ているのだろうか。


「敵の砲身と思われるものが、こちらに向きます!」


「こんなことがあってたまるかー!」敵弾が着弾し、船は真っ二つに折れた。こうして、サマワ王国駐留軍はすべての船と竜を失ったのだった。

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