第6話 似た者同士
「エリーナ先生!!エリーナ先生!!」
「ちょっと!!もういいって!!エリーナでいいわ!!普通にエリーナって呼んで!!」
エリーナは顔を赤らめながらそう呼ぶのはやめてほしいと言う感じたった。だったら…エリーナ先生と呼んでって言うなよ…
まぁ…さっきは少し生意気だったのでエリーナ先生と何度も呼んでからかってやった。
「お!! ツヨシ!! おはよう!!」
ゲルクが腕を振りながら校門の前で立っていた。ゲルクの制服も青色になっていた。
「ああ…あんたのお友達も一緒に上がってきたのね」
「そうそう。あいつと協力して合格したんだ」
「お前青い制服似合ってるじゃねぇか。かっこいいぜ」
ゲルクが笑いながらツヨシの肩を優しく叩く。
「あんた?確か名前はゲルクだっけ?」
「おっ!!ツヨシと仲のいい女か!!エリーナって言うんだろ? ツヨシから聞いているぜ!!今日から一緒だな!!よろしくな!!」
「ちょっ!! 別に仲がいいわけじゃ!!ただ一緒の屋敷に住んでるだけよ!!」
エリーナがムッとした顔でゲルクに向かって話した。横でツヨシはうあっ⁉︎という感じの顔をしていた。
「ってかよー。お前あれじゃねぇ………うおっ!!」
学校に向かって歩いている途中、ゲルクの肩が誰かにぶつかりバランスを崩し転ける。
「すまない。すまない。ぶつかってしまったね。怪我はないかい?」
倒れたゲルクの目の前に白い制服を着た男性が腕を差し伸ばしてゲルクを引っ張り立ち上がらせた。男性を第一印象で見てみるとかなり高身長のようだ。
「あっ…君の魔法書汚れてしまったね」
白い制服の男性はポケットからハンカチを取り出し、ゲルクの魔法書を軽く拭いてゲルクにそっと渡した。
「ああ…俺もちゃんと前を向いていなかった。すまねぇ」
ゲルクは魔法書を受け取ろうとした。すると男性は離さない。ゲルクの腕にはめているブレスレットを見て何かを感じているようだった。
「ふっ…なるほど」
男は静かに笑い…手を離して…そのまま向こうへ歩いて行った。
「な…なんだあいつ」
「あの白い制服は上級のフォルギネアね。なんか嫌な雰囲気だったわ…」
「あいつ…なんか冷たい目をしていたな。嫌な奴だ」
奴はゲルクの腕にはめてあるブレスレットをじっと見ていたな……何か意味あったのかな…よく分からない。
俺たちはぶつぶつ言いつつ…一限の授業がある教室へと入って行った。
中級ブローガイスに上がると少人数授業はなくなり、大講義授業のみになるそうだ。すでに教室には多くの生徒が席に座っていた。また、席は指定席ではなく空いてる席であれば、自由に座ることができる。
「左後ろの席空いてるからそこにしよう」
ツヨシ達は席に座り授業の準備をする。一番上の席は黒板が見やすいのが特徴である。しかし一番当てられやすいせいなのか…人気がない。
「ああ〜君たちも上がってきたんだね〜。もしかして今日が初めてかい?」
ツヨシ達の一つ前の席の男性が話しかけてきた。
「ああ…そうだ。昨日試験に合格したんだ」
「へ〜。僕も1週間前にここに来たばっかりなんだよ」
こいつ確か…一ヶ月前どこかで見たことがある…そうだ!!そうだった!!クラスは違ったがこいつも初期のカルベルにいた。
「仲良くしようぜ!!お前の名前はなんで言うんだ⁇」
ゲルクがよろしくと握手をしようとした。
「触ろうとするな!!貴様!!」
男は嫌な顔をしてゲルクの手を払った。
「なっ!!オメェから話してきたんじゃねぇかよ!!」
「悪りぃ悪りぃ。にしても…僕以外に上がってこられる奴がいたなんてねぇ〜。正直驚いたよ。みんな魔法を使うのが下手くそだからね〜。君たちも大したことない。たまたま上がってこられただけ」
なんだよこいつ…初対面から嫌な感じで接してきやがって!!思い出したぞ!!こいつは初級カルベルの間で…天才と噂が広がっていたな。
「あんた自分が魔法を他の人より使えるからってあまり調子に乗らない方が良いわよ。」
エリーナが男を冷たい目で男に睨めつけながら話す。
「へへっ。お前も大したことないくせにずいぶんと生意気なこと言うじゃねぇかよ。ババァ」
「な、なんですって!? バ…ババァ?」
「もうそこまでにしろよお前。周りを見てみろよ。お前の発言が他の人の怒りを買っていることを分かれよ」
男は周りから冷たい視線で見られていた。
「はっはっは!!分かったよ。分かったよ。今は静かにしてやるよ。お前達とは仲良くやっていけそうだな」
男はやれやれと言う顔をして笑いながら前を向いた。
そして一限は終わり…二限は空きコマだったので俺たちは学校の庭で休憩していた。
「なんなんだよあいつ。上から目線で話してきやがって!!」
ゲルクがイライラしながら小石を投げていた。
「まぁ…まぁ…そういう奴もいるんだ。無視するのが一番」
まぁ…ああいう奴はどこにでもいる。正直言って相手にしないのが一番だ。相手にするだけ疲れるしイライラする。
「そういえば…ゲルクってどこから来たの?まだあなたのことよく知らないから…知りたくて」
「あ…あぁ…」
ゲルクは言いづらそうな表情をした。言いたくないことなのだろうか?そういえば俺もゲルクがどこから来たのか知らなかったな。ここ出身だと思ってた。
「どうしたの?言いづらい?」
ゲルクは拳をぎゅっと握りしめて…黙り込んでいた。しばらく黙っていたが…話し始めた。
「俺はユグラシア帝国のミルタ地方ってとこから来たんだ…あんまり言いたくなかったが…ツヨシとお前なら言ってもいい」
そうなのか…ユグラシア帝国から来たのか…でもエーゲルトさんから聞いたが…ユグラシア帝国とベルグラルド王国はあまり良い関係じゃないみたいだ。
「俺がユグラシア帝国から来たってことは誰にも言うなよ。ユグラシアの人間はこの国ではいい目で見らねぇんだよ」
「ああ…絶対に言わないから大丈夫だ」
「言わないよ。安心して」
「ああ…ならいい。あと忠告しておくが…俺は理由があってこの国に来たんだ」
理由?まぁそりゃそうだよな。普通わざわざユグラシア帝国から理由もなくベルグラルド王国まで来ないもんな。
「簡単に説明すると…俺は村のみんなを取り戻すためにここに来た。上級魔法を使えるようになって…村の皆を連れ去った奴を倒して!!」
「そいつは誰か分かるのか?」
「いや…それが…分からねぇ…一年前…俺が隣町まで食材を買い行ってて……夕方村にかえって来ると…みんな消えていたんだ。俺は何が起きたのか分からなかった。とりあえず家に帰ると弟も兄もみんな…消えて…誰も…いなかった。村を襲った奴はどんな奴か分からない…ただ…襲った奴は只者じゃないと感じた。一気にみんな消えるのは不自然すぎる。死んだかもしれないと思うが…俺には分かる。皆んなは死んでない。何処かにいるはずだ。俺はみんなを救うために強くなって…家に隠してあった金貨を全部持ち…その連れ去った奴を倒す実力をつけるためにアルミネラ魔法学校に来たんだ…」
「そうだったのか…だから強くなるために…わざわざここまで…でも問題は犯人がわからないことだよな。困ったな」
ゲルクにそんな辛い過去があったなんて想像もできなかった…でも…ゲルクは俺がこの世界に来て初めて初めて友達になった奴だ。初対面の時からずっと明るく振る舞ってくれていた。今ゲルクの顔は泣いてないが…きっと心の中では凄く泣きたいのだろう。俺はゲルクに何か出来ることをしてあげたい。
「ゲルク…お前の友達なのに悩みに気づいてやれなくて済まなかった」
「ははははははっ。別にそんなの気にしてねぇよ。俺が一人で解決するから大丈夫だ」
「いや…一緒に解決しよう。俺もお前の大切な仲間を連れ去った奴を一緒に探す!!」
「そうか…気にしてくれて…ありがとよ。だが…今すぐは無理だ。もっと強くなって実力を付けてから犯人を探す」
「ツヨシ!!ゲルクの村の皆んなを救うために!!私も協力するわ!!」
「お前も協力してくれるのか⁉︎」
「私も目標があるの…自分が何処で生まれたのか知りたくて…ここの魔法学校を卒業したら世界を周ることにしてたの。だからその時はあなた達と一緒に同行するわ」
そうだったな…エリーナもエーゲルトさんに養子として拾われたんだったんだよな。エーゲルトさんも彼女が何処で生まれたのかは知らないと言ってたし…
「お前ら…色々とありがとな。おかげで気持ちが和らいだぜ。早くフォルギネアに上がって実力をつけて一緒に卒業しよう!!」
「そうだな!!よぉーし!! 今から気合入れて頑張るぞ!!」
俺もなんで自分がこの世界に召喚されたか理由を探すために世界を周ろうと思っていたところだ。俺たちはそれぞれ目標があり、よく似ていた。
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