第5話 新たな目標

ーーーー醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜いーーーー


ーーーー醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜いーーーー


ーーーー醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜いーーーー


ーーーー醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜いーーーー


ーーーー醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜いーーーー


 あの時の声がまた聞こえてくる。お前は誰なんだ……


「私が……この世を…」


 白い服を着た少女が両手を上げ一人で笑って何かを言っている。

 何を言っているのかはっきりと分からない。あたりは暗闇。

 ツヨシはその時…台風の時の声の人物と同じだということが分かった。


「お前は何者なんだ」


 ツヨシは少女に対して問いをかける。だが、返事はない。

 彼女は一人で何かをぶつぶつ呟いている様子だった。


「なぁ……お前は何なんだ?時々お前の声が聞こえてくるんだよ。お前の目的はなんなんだ?」


 ツヨシがもう一度少女に問いをかける。すると少女はぴたりとぶつぶつ呟くのを辞めた。

 少女はツヨシの方を見てにこりと笑った。しかし…笑っていることは分かったが顔がはっきりと見えない。


「なぁ…いい加減にしろよ。お前は何度も夢で見る。毎回同じことを言って…醜いと。お前は何がしたいんだ」


「フフフッ」


 彼女はツヨシを見て笑う。するとツヨシはどんどんと意識が遠くなっていく…


「ま…待てってくれ…俺はまだ…お前を…」


 ツヨシは右手を伸ばしながらどんどん落ちていく…すると…フッと意識が切れた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「はっ!!」


 ツヨシは勢いよくベットから目覚める。あの少女はどこだと辺りを見回すがいなかった。また悪夢を見ていたようだ。


「クソっ!! あいつは何者なんだ? この世界に来てから夢でたまにあいつが出てくるんだよな」


 この世界に来る前はあの少女が夢に出てくることはなかったが…召喚されてから以来…たまに夢に現れるようになった。俺は手を胸に当てる。


「もういいや。考えたって無駄だ。悪夢を見るのが増えただけだろう。そういえば…今日からだよな。中級ブローガイスに進級は…」


 昨日はゲルクと協力しトロールを倒した。そのおかげで評価がグンと上がり、進級することが出来た。


「ああ…ツヨシくん。おはよう。疲れは取れたかい⁇」


「ま…まぁ…取れたかな」


 食堂に入るとエーゲルトがツヨシに話しかけてきた。

 悪夢を見ていたか…少し起きるのが遅れていたようだ。すでにエリーナとエーゲルトは食事を始めていた。


「あんたいつもは起きるの早いのに今日は遅かったわね。珍しいわね」


「ああ…ちょっと嫌な夢を見ててな」


 ツヨシは暗い顔をして言った。ツヨシはあの悪夢は何回も見ている。いい加減に見たくないという気持ちが強かった。


「エーゲルトさん。突然なんだが……この世界に悪魔っているのか?」


「ど…どうしたんだ…急に…」


「いや悪りぃ…悪りぃ…朝からこんな話をしたくないよな」


「悪魔ではないが…かつてこの世界を滅ぼそうとした神ならいたぞ」


「か、かみ?」


 神と言っても……色々いる。悪い神様、良い神様と…


「クーシ神だ。皮肉なことに奴が最初に魔法を作った神なんだ。もう1000年も昔のことだからあまり記録に残っていないがな……」


「なるほど」


 あの夢の少女はクーシ神だったのか?確かに不気味な雰囲気あったし…可能性は高い。


「その神は死んだのか?まだ生きているのか?」


「ああ…その昔に勇者に倒されて死んだとされているが…一説では封印されているとも聞いている。そしてそのクーシ神を復活させるための組織も存在する」


 ん?なんだ?なんの組織?この世界に来て初めて知った。宗教か?


「その組織とやらは…なんだ?危険なのか?」


 ツヨシがエーゲルトに質問をした途端…エーゲルトの顔つきが変わった。まるで何かを恨んでいるような…顔つきに…


「エ……エーゲルトさん?」


「エーゲルト!! ツヨシが質問してるじゃない!!」


「あ…ああ…すまない。少し…嫌な事を思い出しててね」


「す…すみません。嫌なことを聞いて…」


「あーいいよいいよ謝らなくて。じゃあ組織について説明しよう。その組織はクーシ神を復活されるために創立された。世間ではスカールド教と呼ばれている」


「クーシ神が復活したら…」


「ああ…その時こそ世界が終わる」


「な…そいつらは…どこにいるんだ?」


「奴らは世界中のどこにでも現れて悪事を働いている。ここの街はたまたま現れていない。あと…奴らの拠点地はどこかにあるはずだが…まだ見つかっていない」


 なるほど…これは厄介な組織だ。あれだ…関わってはいけない組織って分かる。


「もし俺がそいつらと戦うことになったら…どうするんですか?」


「お前が戦うことになったらか…まずお前は魔法が使えても剣は使えない。両方使えないと奴らには勝てない。まぁ上級魔法の上とか使える奴なら別の話だが……そんな上の魔法使える奴はごく一部だ…なんだ? スカールド教の奴らを倒したいのか?」


「いえ…でも…なんか嫌な予感がして…もしかしたらそいつらと戦う時が来るのかもしれません」


「奴らは危険だ。やめておけ。戦っても死ぬだけだ。この国でも奴らと戦って多くの人間が命を落としている。俺もそうだ…親友を失っているしな」



 もしかしたら俺はこの組織を倒すためにこの世界に召喚されたのかもしれない。だったら魔法だけじゃなく剣を使えるようにならないといけない!!奴らを倒す!!この魔法学校を卒業しておれが勇者になる!!

 と…まぁそれは…置いておいて…あれだ…誰に教えて貰えば良いのだろうか?確か…エーゲルトさんと初めて会った時この国の騎士とか言ってなかったか?よし!お願いしてみよう!!


「エーゲルトさん!!俺に剣術を教えてください!!」


 ツヨシはエーゲルトの前に立ち…深く頭を下げてお願いする。


「ま…まぁ…別にいいけど…お前学校通っているから夕方か夜しか時間ないぞ?」


「全然大丈夫です!!お願いします!!」


「おっと…俺が教えるのはやめよう」


「へ?」


 エーゲルトは何かをひらめいたようだった。そして立ち上がりある方向へと指を指した。


「彼女だ」


 ツヨシは指を指している方向を向いた。それは…


「わ、わたし⁉︎」


 エリーナだった。彼女は俺と同じ魔法学校に通っていて…色々助言もしてくれた。俺が中級ブローガイスに上がれたのも彼女のおかげだ。なんだが…エリーナは剣を扱えるのか⁇ 初耳だ。


「エ…エリーナにですか?」


「ああ…彼女はああ見えて剣を扱うのに才能があるからな。戦ってみな。強いぞ彼女は」


「いいわよ。今日夕方教えてあげる。わたしは魔法は得意じゃないけど、剣術なら得意よ!!」


「あ……」


 ツヨシは彼女が剣を振り回すようなイメージがなかったので思わず声が漏れてしまった。


「返事は‼︎ 」


「ああ…お…お願いします!!」


「ふん。じゃあ決まりね!!」


 エリーナはプイっと横を向いて部屋を出て行った。


「どうして?エリーナに教えさせようとしたのですか⁇」


「彼女は上級剣士になれる素質があるからだよ。俺が見極めたんだ。間違いなく彼女は俺より強くなる。だからツヨシもそんな彼女に教えてもらった方が良いと思ったからだ。俺なんかより彼女の方に教えてもらったほうが強くなると思ってね…」


「そうなんですか…彼女は誰に教えてもらって…」


「ああ…独学らしいね。俺も彼女を養子として迎え入れてからは一度も教えた記憶はないが…ある日俺に戦えとお願いしてきたんだよ。その日俺は彼女がどれだけ凄いのか実感したよ。まぁその時は俺が勝ったんだけどね」


 ああ…俺の知らないところで…努力していたんだな。あの時は頭が悪いんじゃないかと…馬鹿にしてた。すまない。


「それじゃ…着替えて学校に行ってきます!!」


「ああ…気をつけてな」


 ツヨシは食堂を出て部屋に一旦戻り。新しい青い制服を着た。


「うおー昨日まで赤だったからなんか…違和感あるな。これで準備オッケーと」


 ツヨシは学校へ向かうため、馬車に乗った。


「エ…エリーナ?」


「…………」


 エリーナがさっきからこちらをじっと見ているんだが…よく顔を見てみるとなんか…凄いニヤリと笑ってドヤ顔している。


「今日からわたしをエリーナ先生と呼びなさい!!」


「へ?」


 エリーナは腕と足を組んで、ニヤリと笑いながらツヨシに向けて話した。


「あ…あの…俺たち同級生なんだけど⁉︎」


「ふーん。先生と呼ばないなら教えない。さようなら」


 うおーい!!なんだこいつーー!!自分の特技が教えられるってことになるとすぐ調子に乗りやがるじゃねぇーかよ!!


「おいおい。ちょっと上から目線すぎんだろ」


「は?今なんか言った?もう教えないから」


 あちゃーミスった。言う言葉をミスった。彼女の機嫌が悪くなってしまった。生意気な態度が腹が立つが…仕方がない。ここは…


「お、お願いします!!エリーナ先生!!あなたしかいないんです!!」


「ちょ…ちょっと手を離しなさい!!教えるからって!!分かったから!!」


「エリーナ先生!!ありがとうございます!!うっうっううう…」


「ちょ!!あんた汚いってば!!ほらハンカチで拭きない!! ちょっ…ちょっと!!手を離しなさいってば!!」


 エリーナが顔を赤らめながら必死に引っ付いてくるツヨシを払っていたのだった……。

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