第4話 中級ブローガイスへの道

 あれから二ヶ月が経ち、俺とゲルクは必要単位を満たしたため、進級テストを受けることになった。二ヶ月で進級テストを受ける人はなかなかいないらしい。初級のカルベルで学んだ魔法は初級の下と中だ。これらの技を駆使してある相手と戦うことになった。そのため、俺たちはアルミネラ魔法学校の都市ガレスアから少し離れた森に来ていた。


「さぁ!皆さん!!あなたたちは大変優秀な生徒だから二ヶ月で試験が受けられるのよ!!」


 周りを見るとおよそ…20人ぐらいいる。彼らも優秀だったからここにいるのだろう。


「ツヨシ。一緒に進級するぞ!! 絶対にな!!」


「ああ…そうだな!!」


 あいつとも約束した。エリーナ待ってろ!!




昨夜…………………エーゲルト屋敷の食堂にて……


「食事中になんだけど……俺さ。明日中級のブローガイスの進級テストをやるんだ」


「え?」


「……」


 皆んなが一気に食べるのを止め、静まりかえった。


「え?嘘でしょ⁉︎ もう⁉︎ 私でも一年かかったのよ⁉︎」


「ツヨシくん。どうやら君には上級魔道士の素質があるかもしれないね。君が初日に習った魔法をあっさり出来るようになった時から俺はそう思っていた」


 上級魔道士……それはこの世界でもごく限られた人しかいないらしい。アルミネラ魔法学校卒業生でも上級魔道士になれたのはごく僅かだそうだ。


「まぁツヨシ。明日は頑張りたまえ。進級できることを祈るよ」


「あははは……ありがとうございます」


「ふん!! 私は上がろうが上がらないがどっちでもいいわ」


「ふーん。本当は来て欲しいんでしょ?」


「な、なによ!! 別に……」


 分かりやすい奴だ。上がってきて同じ同級生になって欲しいのだろう。すごく期待してる雰囲気が見えてくる。


「まぁ…頑張りなさい!! ただ注意することがあるの試験の内容は………〜〜」


 エリーナが説明してくれた。ふーん……なるほど。分かった。了解。


「ああ…絶対に進級するからな」



……………とまぁ…こんな感じだ。今日の試験に合格すれば明日からエリーナとは同級生だ。


「では説明します。この森では魔物がたくさん出てきます。現在の時刻は9時、夕方の5時までの最後までなるべく多くの魔物を倒してください。魔物はスライムやロニモンヨウヘビなどですが、一匹強い魔物がいます。強いので注意してくださいね。ただ、倒せれば評価が爆上がりしますよ」


 うん。昨日大体エリーナからは聞いている。準備オッケーだ。


「ツヨシ。沢山倒せよ。お前の健闘を祈るぜ!!」


「ああ…お前もな!!」


「では…3、2、1、スタート!!」


 ついに始まった。一斉に生徒たちがこの大きな森で魔物を探すためにそれぞれ散らばっていった。


「とにかくまずはザコの魔物を倒せばいいんだ。スライムはどこだ!!」


「スラー!!」


 よし!出てきた!!マナはなるべく温存しないとな!!下級魔法の下を使おう!!


「大地より秘めらし力よ。今ここに炎の力を解放し我が命じる。あの者を凍える氷で打ち抜け!!アイスクリスタル!!」


「ズラーーーー!!」


 ツヨシが放った氷はスライムを凍らして倒した。


「よし!まずは一匹目だ。どんどん狩るぞ!!」


 俺はその後……マナを温存するために下級魔法の下を使い多くのスライム、ロニモンヨウヘビを倒していった。


「はぁ…はぁ…いくらザコとはいえ…こんだけ倒してたら体力も減っていくな」


 試験開始時より俺の体力は半分まで減っていた。そろそろうまく魔法を使っていかなければ体力がやばい。


「ん?そういえばそうだったな。あいつを倒せれば評価が上がるって言ってたな」


 昨日エリーナから聞いた話なんだが…その強い魔物はトロールらしい。あいつを倒せればほぼ進級が認められるのは間違いなしだ。実際にエリーナは進級テストの時にトロールを倒して一位になり、進級が認められたそうだ。まぁ…たまたま倒せたらしい。実際に下級魔法をほとんど覚えられてなかったそうな……1年間やってそれって……まぁ…よく合格したものだ…


「奴はどこにいるんだろう?」


 この広い森の中で制限時間に見つけるのは難しい。だったら諦めてザコキャラを倒しまくって保険をつけておくべきか……いや!!俺はトロールを見つけて倒す!!


 ぐおおおおおおおおおお!!!!


 「間違いない!!トロールだ!!でもどこにいるんだ?確かにここから場所は近いはずだ!!クソっ!!見つからない!!」


 俺は辺りを探し回ったが…見つからなかった。一旦…落ち着こう。どこにいるのかを予想しよう。ここは広大な森…だが…川があるはずだ。川の流れを聞こう。奴は水を飲みにきているはずだ。


「よし!! 分かったぞ!!」


 ツヨシは現在位置から西に体を向けて走った。


「川が見えてきたぞ!!」


「しゃー!! 川を見つけたぜ!!」


 ん?この声は?どこかで聞いたことがあるような⁇


「あ」


「あ」


 剛とゲルクは真顔で顔を合わせる。感動の再会だ……


「って!!ちがーーーう!!」


「ああ⁉︎ おめぇか!!」


「ぐおおおおおおおおおお!!!!」


「なっ!!」


「くっ!!」


 俺たちの目の前にはトロールがいた。6メートルぐらいででかい。こいつの持っている棍棒でも当たれば即死だろう。


「キヨシ!! こいつは俺が見つけたんだ。だからこいつは俺の獲物だ!!」


「いいや、間違いなく俺が先だ」


「フンガーーーー!!!!」


「うおっ!! あぶねっ!!」


 トロールは殺す気満々で棍棒を俺たちに向けて叩きつけてこようとしたのでとっさに避けた。 


「今は喧嘩してる場合じゃねぇ!!もういい!!!二人でこいつを倒せばお互い半分ずつ評価がつくだろ!!」


「ああ…確かにその手もあるな。半分はお互い進級出来るかもしれないし、いい作戦だ!!」


「よし!! やるぞ!!」


 二人はとっさに構えた。トロールはこちらを睨みつけている。


「ゲルク!!俺がこいつを引きつける!!その間にお前は火属性魔法を頼む!!」


「了解!!頼むぞ!!」


 今の俺は魔法しか使えない。だからこいつを引きつけるといってもうまく逃げ回って交わすしかない。


「フンガーーーー!!」


「うおっ!!」


 って!!これやべぇって!!ゲルク早くやってくれー!!


「大地より秘めらし力よ。今ここに炎の力を解放し我が命じる。あの者を熱き炎で焼き払え!! エルグランド•ファイヤー!!!!!」


「よし!!」


 しかし…ゲルクの放った火ダルマは目的のトロールを外してしまった。トロールの動きが思ってたより早かった。


「クソっ!! 外したつ!!」


「フンガーーーー!!」


「うわぁー!!」


 俺はトロールが横に振った棍棒が腹に当たり吹っ飛ばされた。


「うぐっ……痛ってえ…」


「ツヨシ!!大丈夫か!!」


 やばい!!やばい!!どうする俺!!考えろ!!こういう時に使う魔法!!


ーーーーー3週間前のとある日ーーーーーーー


「ツヨシくん。もし君が危ない目にあった時使う魔法を教えよう」


「エーゲルトさん!!是非お願いします!!」


「忍ぶる力よ。我が命じる。あの者の足をロープで縛り付けよ!!バインドロープ!!」


「うわぁぁっ!!」


 エーゲルトの魔法による放たれたロープはツヨシの足を縛り付け転ばせた。


「い、いきなりなにするんですか!! 痛かったじゃないですか!!」


「はははははっ!! 気づかなかっただろ?」


「そこ笑うところじゃないですって……」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 そうだ!!あの時、エーゲルトさんがやっていた魔法を使ってみるか!!そうすれば奴の動きを止めれる。その間にゲルクが魔法を放てば!!


「ゲルク次はしっかり頼むぞ!!」


「おう!!次は外さねぇ!!」


「ぐおおおおおおおおおお!!!!」


 トロールがツヨシを棍棒で叩き潰す勢いで上から降ってきた。


「今だ!! 忍ぶる力よ。我が命じる。あの者の足をロープで縛り付けよ!!バインドロープ!!」


 ツヨシの放ったロープがトロールの足を縛り付けた。


「よし!!出来た!!おらあああぁぁぁつ!!」


「ぐおおおおおおおおおおっ!!」


 ツヨシがロープを引っ張りトロールがバランスを崩し倒れる。


「流石だツヨシ!! いくぜーーーー!! 大地より秘めらし力よ。今ここに炎の力を解放し我が命じる。あの者を熱き炎で焼き払え!! エルグランド•ファイヤー!!!!!」


「ぐおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」


 トロールはゲルクの放った火ダルマに当たりもがいて苦しんでいた。


「とどめの一撃だーー!! 大地より秘めらし力よ。今ここに炎の力を解放し我が命じる。あの者を熱き炎で焼き払え!! エルグランド•ファイヤー!!!!! 」


「ぐおおおおおおおおおお!!!!」


 俺はとどめの一撃でトロールに攻撃した。そしてついに倒すことができた。


「はぁ…はぁ…はぁ…やっと倒せた…」


「ツヨシ。やったな」


 ゲルクが倒れ込んでいる俺に腕を差し伸ばしてくれた。


「ああ…お前がいなかったら倒せてなかった」


「俺もお前がいなかったら無理だったよ」


 こうして俺たちは無事に進級テストを終わらせることが出来た。


「それでは合格者を発表します」


 ごくり……


 周囲は一気に緊張感に包まれる……


「合格者は……








        ツヨシさん、ゲルクさんです」


「ゲルク!!やったーーー!!!!」


「ああ!!明日からは中級、ブローガイスだ!!」



 どうやら合格者は俺たちだけだったらしい。やはりトロールを倒せたことが大きかった。俺だけがトロールを倒してたらゲルクは合格できなかったかもしれないし、ゲルクだけがトロールを倒してたら俺は合格出来なかったかもしれない。二人で共同で倒して一緒に上がれたのだから結果オーライだ。


「ではお二人には新しい制服を与えます。どうぞ受け取ってください」


 俺たちに渡されたのはブローガイスの制服だった。これを着て明日からまた通うのか。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ただいまー!!」


「おお!!ツヨシどうだったんだ⁇」


「合格したよ!!明日からブローガイスだ!!」


「おお!!おめでとう!!」


「エーゲルトさんのバインドロープの魔法が役に立ったんですよ!!」


「なにっ!!バインドロープは中級の下だぞ⁉︎ 下級のお前がよく使えたな!! 驚いたよ!!」


 え?あれ…中級魔法だったんだ…なんかマナがめちゃくちゃ減ってんなと思っていたがそういうことか……


「ただいま〜」


 ちょうどエリーナが帰ってきた。


「エリーナ!!俺…俺明日からお前と同じ…同級生だ!!」


「えっ⁉︎」


 エリーナが驚いたような顔をして俺を見ていた。


「わ…わたしは別にどっちでも良かったわ!!」


 エリーナは顔を横にプイっと向けた。本当は嬉しいんだろ?エリーナよ?相変わらず分かりやすい奴だ。


「まぁ…二人とも良かったじゃないか!!明日からお前ら同級生だぞ〜」


「うあっ!!」


 エーゲルトが二人の頭をポンポンと軽く叩いた。


 こうして俺は無事に初期のカルベルから中級のブローガイスに進級することが出来た。試験は正直楽勝と思っていたが…結構危なかった。ゲルクとは一緒に進級できたし、エリーナとも同級生になることが出来た。

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