第2話 新たな人生の始まり

「ここが私の屋敷だ」


「うおおおおーーっ!! でっけぇー!!」


 俺の目は初めてすごいものを見るような目だった。エーゲルトさんの屋敷はまさに貴族の住むような建物っていう感じだ。まずこんなでかい屋敷自体日本にはないだろう。海外だったらあるかもしれないが……


「これが異世界!! まさにそうだよなぁーっ!!」


「喜んでもらえて嬉しいです。さぁ中に入りましょうか。」


 エーゲルトはめちゃくちゃ喜ぶツヨシを見ながら……ツヨシがどんな所から来たのかすごく疑問に思いながら笑顔で屋敷に入れた。


「ご主人様お借りなさいませ!!」


「うおおおっ!! ってかメイド多っ!!」


 一人、二人、三人、四人、五人、六人……ざっと八人ぐらいといった所か……ってか全員美少女じゃねぇか!! これが俺の特典だったのかも!!やった!!彼女いないイコール年齢からついに脱出の時が!!これが俺の青春だ!!


「ご主人様、ご飯何時ぐらいに食べますでしょうか? 」


「今は……5時ぐらいか…うーん。7時ぐらいに済ませるとしよう」


 あーもうこんな時間なのか……あの訳のわからない台風に巻き込まれた時は6時前だったな……冬だったから日の出が出るのが遅かったし…ん?待てよ?冬に台風っておかしくないか⁇ あーやっぱり絶対誰か俺召喚したよこれ!!


「ツヨシはいいかな?7時ぐらいに食事でも…」


「あー大丈夫です!!食べさせてもらうだけありがたいです!!」


「そうか…じゃあ時間まで少しお話ししようか。私も君のことが気になっていてね……」


 そりゃあそうだよな。今日一日街を歩いていて気付いたがこんな服装してるの俺ぐらいだしな。まさに釣りをする人の服装だしな。


「単刀直入に言うが…君はどこから来たんだ⁇ 」


「俺は……東の国って所から来ました」


「東の国⁇ ユグラシア帝国か?」


「ユグラシア帝国⁇ なんだそれ⁇聞いたことないな」


 適当に東の国って言ったらユグラシア帝国って返された。そうだそうだここは異世界そんなこと通用しない。ちゃんとここ以外にも国はある。なんで例えばよいか。


「あー分かりやすく言うと黄金の国ジパングって所から来たっすよ。」


「うーん。そんな国聞いたことがないな………まぁ……いいや。ツヨシがユグラシア帝国のどこかから来たってことにしよう。どうせ明日も行く場所ないだろ⁇ 」


 うん。ありません。ありません!!まず誰に召喚されたかもさっぱりわからないし、そもそもこの世界自体知らないのでっ!!!!


「ははははははないです。明日にはすぐに出て行きますから大丈夫です」


 ここでずっと泊まれたらな…と考えつつ…苦笑いで答えた。


「いや……ずっと泊まってもらうことにするよ。どうせ行く当てもないならここに無制限で泊まることを許可するよ」


「いいんですか⁇ そんな簡単に言ってもらって!! 俺がいるだけでも邪魔でしょう? 」


「いや……部屋いくつか空いてるから一人ぐらい構わん。」


 あ、ありがたーいっ!!エーゲルトさんありがとうございます!!ありがとうございます!!さらに嬉しいのは可愛いメイドが沢山いることだっ!!


「ど…どうした?そんな顔をして?」


「あ、いえ!!ありがたくて!!嬉しいんです!!」


 あ、あぶねぇーっ!! 可愛い女の子を想像して興奮してる顔になっていたぞ。


「ははははははっ!!ははははははっ!!ツヨシは面白い奴だ!!気に入ったぞ!!」


「あ…ああ」


 エーゲルトはツヨシの背中を強くぽんぽんと叩きながら笑顔で笑っていた。ツヨシは苦笑いでうなずいていた。


「食事まで部屋でゆっくりしていってくれ。うちの使用人が案内してくれる」


「おう。ありがとよ」


「そうだ。ツヨシ部屋に着いたらここで生活するための服を用意してあるからそれに着替えたまえ」


「ああ分かった。気遣ってくれてありがとよ」


「では…ツヨシ様。私が部屋まで案内します」


「おう」


 俺は食事が始まるまで部屋に向かった。今日色々あったから疲れた。少し…眠ろう。


7時前………。


「ツヨシ様 そもそもお食事です。案内しますのでついて来てください」


「ん?あ…ああ分かった。今行く」


メイドさんに呼ばれ、俺は目を覚ました。ん?さっきの案内してくれた子かな? ウヒィ〜やっぱり可愛いな〜。おっと!!ここは顔に出さないことだ!! 男は心の中にしまっておくのだ!!


「メイドさん。今更聞くのもなんだけど……ここってなんて名前の国なんだ?」


「えっ!! 知らないのっ⁉︎」


「え⁇ 」


 そーだよ。知らないんだよ!!そんな驚いた顔しないでくれ。俺は来たくてここの世界に来たわけじゃないんだ。


「大変失礼致しました。お客様にそのような言葉を言ってしまい申し訳ございません。」


「ははははははっ。いいよ。いいよ」


「ここはベルグラルド王国です。東にはユグラシア帝国があり、南にはスズミヤがあり、北にはベルグラ王国があります。」


「詳しく教えてくれてありがとうな。覚えとかないと…」


「お客様着きました。食堂です。」


 異世界に来て初めての食事だ!!どんなのがあるのか楽しみだっ!!


「うおおおおっ!!なんだこれ!!めちゃくちゃ豪華じゃねぇか!!」


 テーブルにはうまそうな肉料理や魚料理やスープやお菓子などがずらりと並んでいた。これだっ!!これだよ!!俺が望んでいたのはっ!!


「ふん!!あいつが今日からここに泊まるって奴か!!」


「誰だあいつ?」


 金髪の髪をした気の強そうな女性が俺を睨みつけてこっちを向いている。顔は美人だ。


「ああ…ツヨシ悪いね。彼女を紹介するよ。彼女は私の養子で、年齢は19歳だ。君とは隣の部屋になるよ。ほらエリーナ挨拶しなさい。」


「ふん!!誰か知らないけどよろしく」


「よ…よろしく」


「では、食事を始めるとするかな。いただきます!!」


「いただきます!!」


 俺はまず目の前にある鳥の手羽先みたいなものにおもいっきりかぶりついた。


「うんめぇー!!これうめぇな!!」


「うるさいわねー。あんたどんな所から来たのよ。」


 エリーナはツヨシという男があまりにも不思議なので目を細めながらじっと見てた。彼女自身年齢が近い男性と一緒にご飯を食べるのが初めてだったのだ。


「今日、エーゲルトさんが使った魔法すごかったです。俺にもその魔法教えてくれませんか?」


「ははははははっ。まだツヨシには使えない技さ。あれは中位魔法•下だよ。魔法書の中級を勉強しないと習得できないさ。」


「あんた馬鹿じゃないの?本当にどこから来たのか気になるわ。」


「彼は東にある黄金の国ジパングから来たそうだよ。東はユグラシア帝国しかないはずだからよくわからないが俺たちにも分からない場所があるのだろう」


「ふーん。まぁ相当世間知らずってことね」


「知らねぇもんは知らねぇの!!」


 まぁ…日本はこの世界に存在しないから信じてはもらえないか。そういえば俺がここに召喚されたってことは日本では俺が突然行方不明になったってことだよな。あー家族皆んな心配してねぇかな。まぁいいや。今はそんなことは考えない!!いつか帰れるだろ。


「そうだ!!ツヨシ。君が魔法を習得したいのならエリーナが通うアルミネラ魔法学校に通うのはどうだ⁇ この国ではかなりの名門校だぞ」


 この世界には魔法学校があるのか…でも名門って言ったよな?名門ってことは入学難しいんじゃねぇの?


「入学試験とかあるのか?」


「ないわよ。入学はお金さえあれば誰でも入学できて、初級のカルベル、中級のブローガイス、上級のフォルギネアとあって自分で好きな授業を取ってその必要な単位に満たしたら進級テストがあるの。それを合格していけば、ちゃんと卒業できるわ。ちなみに私は中級のブローガイスだけどね」


 エリーナが自慢げに俺の方をドヤ顔で見てきた。中級のクラスってすごいのか?まだ入学してないので、魔法学校の基準が分かりません。はい。


「ツヨシ安心したまえ。中級のブローガイスはしっかり勉強すれば誰でも進級できるから」


「ちょっ!!」


 エリーナがさっきまでのドヤ顔が消えそれ言わないでくださいよーと言わんばかりな雰囲気を出している。つまりあれだ……エリーナが自慢をわざわざするってことは多分…ギリギリ試験に合格したってことじゃないか⁇ 言い方が良くないがあまり勉強が得意じゃないのかな?


「んで入学はいつできるんだ?」


「明日でも出来るわよ。あー言っておくけど入学式はないわ。卒業式だけあるよ。まぁ卒業式のところまでたどり着く人なんて殆どいないけどね。」


「なるほど。分かった。俺、明日入学するわ。エーゲルトさん。エリーナさん。教えてくれてありがとうな。」


「わ、私はただ自分で勝手に説明しただけよ。お礼なんていらない」


「んじゃあ入学書用意するから先に部屋へ戻っててもいいよ。」


「おう。分かった。また後でな」


 とりあえず俺は一旦部屋に戻った。それにしても……魔法が使えるようになるなんて夢にも思わなかったしな。これでこそ異世界!!意外に楽しいかもな!!


トントンー。ガチャ。


「持って来たわよ、ここにあんたのサインをすれば終わりだから。さっさと済ませてちょうだい」


 一つ気づいたことがあった。この世界の文字は書けないが何故か読めることだ。こうやって異世界人と話せているしな。何故これが出来るかは…よく分からないが…まぁ良しとしよう。


「ほれ書いたぞ。これでいいか?」


秋本剛。


「見たことがない文字ね。なんて読むの?」


 エリーナは初めて見る文字に真剣に見ていた。漢字という文字はこの世界に本来ならば存在しないからだ。


「アキモトツヨシだ。それが俺の性と名だ」


「ふーん。そう読むんだ。あんたってやっぱり不思議ねー。本当にどこから来たのかしら。黄金の国ジパングなんて聞いたことがない国を言うし。まぁ…また明日ね。んじゃあお休みー!!」


バタァン!!


「!!」


 エリーナが思いっきりドアが壊れるぐらい閉めてった。乱暴な女だな。


「はぁ……疲れた。今日はゆっくり寝て、明日から新たな異世界での生活を始めるぞー」


 こうして俺はエーゲルトさんの屋敷で無制限で泊まれることになり、アルミネラ魔法学校に入学することが決まった。明日からは新たな生活が待っている。漁師だった俺が魔法使えるようになんてな。まったく…すごいものだ。

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