第1話 昇らぬ日の出

ジジジジジジーー!!!!!!!!!!!いつもの通り目覚まし時計が鳴っている。


 「ふあぁ〜〜〜っ 眠っ」


 まだ日の出も出てなく外は暗い。今は夜の3時半、いつもこの時間に起きるのは普通だ。漁師だからな。って…まぁ……今日は休日の日なんだけどね…。


 「たまには一人で海へ釣りに行くのも悪くねぇよな… よし!! 準備しよっと」


 朝飯は作るのがめんどいので食パン、飲み物は野菜ジュースを用意してさっさと済ませた。


「歯磨いて、顔洗って、よし、じゃあ行ってくるか」


 家族はまだ皆んな寝ている。起こさないように慎重に行かねばならない。


「あら、釣りに行ってくるの? 気をつけてね」


「って……おい! 母さん起きてたのか!!」


 玄関で靴を履いてたら後ろから母さんが見送りに来てくれた。いつもは寝ているが…今日は起きているらしい。


「じゃあ。母さん行ってくる。でっけぇ魚釣ってくるで、楽しみにしててな」


「剛行ってらっしゃい」


 俺は秋本剛、23歳、どこにでもいるごく普通の青年だ。毎日漁師の仕事で忙しいが…人生は楽しめている。まぁ……唯一のコンプレックスがまだ彼女が一度もできていないことだ。俺は車で運転中にそんなことを考えているうちに漁港に着いたようだ。


「うしっと。準備オッケー。じゃあ出港しまーす!!」


 え?なんで?漁船を持っているかって?祖父が昔使っていた船をそのまま俺が引き継いで持っている。年季が入っていて少し錆びているが、こう見えてもしっかりと活躍してくれる漁船なんだぜ。


 しばらくして……俺はだいぶ海の外まで進んだ。そして釣りをしていたんだが……


 「なんか……風強いな。大丈夫か?」


 昨日の天気予報では明日晴れると聞いていたが…全然違うじゃねぇかよ。それになんか台風みたいな感じになってきたし……


「ちょっとこれは…やべぇ…引き返すか」


ごぉぉぉぉゔ ゔゔゔ〜〜〜〜〜。


 あたりは黒く不安にさせる黒い雲が見える。どんどん風が強くなっていき、海にぽつうんと浮く漁船を囲むかのように大型台風が出来上がる。


「うわぁぁっ!!強すぎるって!!やべぇぞ。このままじゃ漁船が沈むどころか…俺まで死ぬじゃねぇか。なんてついていない日なんだ!!!!」


 完全に台風に飲み込まれたようだ。このままでは死ぬことは間違い無い。ああ……このまま俺は死ぬのだろうか。それもと生きて帰ってこられるのだろうか……。23年間彼女いない生活。うっ!ありがとう!!


ーーーー醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜いーーーー


 ん?なんだ?今女性の声がしなかったか?今この船に乗っているのは俺だけだぞ。もしかして…誰か他にいるのか!!


「だ、誰かいるのかっ!! 助けてくれぇぇーーーー!!!!」


 俺は周囲を見渡して大声を出したが…誰もいない。あぁ…あれか死ぬ前に声を聞くってやつか。それとも俺が幻聴を起こしているだけかもしれない。


「ああ…お迎えが来たんだな……」


 激しく暴風を起こしている大型台風は俺の漁船を飲み込んでいった。俺もそのまま気を失い。深い眠りについた…………………。


ーーーー醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜いーーーー


ーーーー醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜いーーーー


ーーーー醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜いーーーー


ーーーー醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜いーーーー


 まだその声がする。もうやめてくれ。俺は死んだんだよ。お迎えが来てるはずなんだ……。俺は……ただの漁師で……。


「剛!!起きなさい!!起きなさい!!」


 ああ…母さんの声がする……母さん俺は死んだんだよ。姉と弟をよろしく頼んだぞ。親父とは喧嘩して3年ぐらいずっと口を聞いていないが……親父と仲良く過ごしてくれよな。


ーーーー醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜いーーーー


ーーーー醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜いーーーー


ーーーー醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜いーーーー


ーーーー醜い醜い醜い醜い醜い醜い醜いーーーー


「うるさい!!うるさい!!うるせぇって言ってんだろうがああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」


「兄ちゃんうるせぇぞ!!何一人で大声で喋ってんだよ。幻聴でも聞いたんか!!」


ハッーーーー!!


 俺は目覚めた。すると目の前に通りすがりのおじさんがいた。外国の方かな? 観光客だろうか? ああ…あの台風は夢だったのか…そうだよな…普通に考えて…俺は今日本の商店街で立ってるんだよな。はぁ………。


「す、すみません。ちょっと夢でも見てたようなんで…」


「おう!しっかりしろよな。じゃあまたな」


 あれ?なんだここ?見たことがない街並み。西洋風の建物がずらりと立っている。見たことがない文字、どういうことだ?


「あははは!! このビールうめぇよな!!」


 横を見てみると楽しそうに昼からビールを飲んでいる人たちがいた。ん?よく見てみると、動物が服を着ているぞ?人間と普通に話してるし…


「ど、動物が喋っているーーー!!!!!!」


「なんだおめぇは!!急に大声で喋って!!俺は亜人だ!!亜人!!見たらわかるだろ普通。何処の田舎の引きこもりだよてめぇは。」


「あ…すみません」


 ゲームやアニメで亜人は見たことがある。ん?待てよ?一旦整理しよう……俺は普通に朝3時半に起きて4時半に漁船を出発して……台風に飲み込まれて……あれ? 台風に飲み込まれて… もう一度言うぞ。台風に飲み込まれて。


「…………」


 俺は今やっと気が付いた。ここは日本じゃないこと。そして見たことがない文字があること。この文字はおそらくアラビア語でもなく、英語でもねぇ。そして亜人がいること。つまりここは…


「い、異世界召喚されたぁぁーーー⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎」


「おめぇ!!うっせぇぞ!!」


「あ…すみません」


 また亜人のおっちゃんに怒られた。


「さてと……気付いたのはいいんだが……ここからどうしようか」


…………………うん。どうしよう。今俺が手持ちなのはポケットに小さな懐中電灯。スマートフォン。ブドウ味のグミだ。そして財布だ。とまぁ…いってもここの世界で日本のお金は使えない……困ったもんだ。


「おいおい。なんか特典って奴ないのか?こんな初期装備で何しろって言うんだよ」


 落ち着け。考えるんだ。何か答えが見つかるはず…ここは異世界。俺は理由があって…召喚されたわけだ…。


「まぁ…とりあえず。街を歩いてみるか。何か答えは見つかるだろ」


 俺はしばらく街を歩いた。だか結局答えは見つからなかった。


「はぁ…ここまで何もないと……流石にな…」


 気付いたら人が全然いない道を歩いてたな。さっきのところまで戻ろっと。


「よぉ。兄ちゃん。こんなところでなにしてんだぁ〜。」


「あははは。今ちょうど困ってい……」


 俺の目の前には明らかにヤバそうな感じの男四人組がいた。おいおい…いきなりハードなイベント発生してんじゃねぇかよ!!どうする俺!!


「命が欲しけりゃオメェの持ってる物置いてけ。」


 そうだ。俺は理由が合って異世界に召喚されたんだ。何か特典はついてるはず!!ここはあれだ!!魔法だ!! 


「ふん!!俺がお前らに負けるか!!ファイヤーブレード!!!!」


「………………」


「ぷっ」


「あはははははは!!」


 えーーーーー⁉︎ 俺なにもできないじゃん!!嘘だろーーー!! 特典ないのかよっ!!


「びっくりさせやがって。おめぇが魔法使えたらめんどいことになっていたからな。ほらオメェの手持ちの物全部置いてけ」


 くっ…こうなったら拳でやるしかない!!俺はこうみえても高校時代野球部だったんだよ!! 腕の筋肉には自信がある!!こんな奴ら大したことないだろ。


「おらぁぁぁぁ!!」


 俺は男四人組に殴りかかった。だが、あっさり避けられた。これはまずい……さっそくやらかしてしまった…


「へっ。俺たちに喧嘩売るなんてバカな奴だ。おらよぉぉぉお!! お返しだ!!」


 男一人が俺の腹に思いっきり当てた。


「ぐはっ!!」


 痛え……やばい!! まずいぞ…まずいぞこれは…


「俺もいっちょ当ててやる!!」


「おらぁっ!」


「ぐあっ!!」


 俺はボコボコに殴られた。ああ…ここで人生終了かよ…なんだよ…台風に飲み込まれて異世界に召喚されたって言うのに…特典もなし。何もなし。こんな理不尽ことあるかあぁぁぁーーー!!!!


「そこまでだ。貴様ら‼︎ 」


「なんだてめぇは‼︎ 」


 男四人組の後ろには赤い服を着た男がいた。髪は茶色。身長は185センチぐらいといったところか……


「そこの男を離してやってくれないか⁇ 」


「ふん。離すわけないだろうが!!おい!オメェら!!あいつをズキズタンに殴ってやろうぜ!!」


「はい!!兄貴!!」


「うぉらぁぁぉ!!」


「大地より秘めらし力よ。今ここに風の力を解放し我が命じる。我が足のスピードを加速せよ!!」


 赤い服を着た男は一瞬にして足の速さが上がった。


「こ…こいっ!!速い!!」


 な…なんだ⁉︎ 見えなかったぞ⁉︎魔法詠唱か?まさか本当に魔法が…


「私は喧嘩をすることがあまり好きじゃない。だが…弱いものをいじめるのは見過ごすわけにはいかない‼︎ 」


 赤い服を着た男は男四人組の殴りかかりをあっさりと避け一人一人思いっきり腹に腕を当てた。


「ぐあぁぁっ!!」


 男四人組は倒れた。つまり…俺は…助かったのだ。


「大丈夫か⁇ 立てるか⁉︎」


 目の前には赤い服を着た男が手を差し伸べた。


「あ、助けて…くれて…ありがとうよ。 おかげで助かったぁ…… 」


「君の名前はなんて言うんだい?」


「俺の名前はツヨシだ。あなたの名前は?」


「私の名前はエーゲルト•シュタイナーだ。この国の騎士団に所属する者だ」


「お、おれ行く当てがないんです…その…エーゲルトさん。助けてください」


「はぁ……たしかに君はこの王国では見ない服装をしているね。どこからか来たのかは知らないが、行く当てがないのなら仕方がない。今日は我が家に来るといい。1日だけなら泊まらせてやろう」


「あ、ありがとうございます‼︎ 」


 普段漁師を仕事している俺は休日の日ふと釣りに行こうと漁港を出たら訳の分からない台風に巻き込まれ突然異世界人召喚された。やばそうな男四人組に絡まれて殺されそうになりすぐにゲームオーバーかと思いきや、イケメン救世主が現れ助けてもらった。ひとまずイケメン救世主の家で一晩過ごすことが決定した。こうして俺の異世界での生活が始まるのだった。

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