第10話 お互いの想い ― 別々の道の運命 ―
「友羽、聞いたよ。本当に良いの?敏樹と付き合う事にしたんだって?」と、十夜。
「えっ?あー…うん。ていうか、十夜には関係ないじゃん!十夜は由都羽さんと付き合っているんだし私に構わないで!」
「それは、そうだけど…でも、俺も友羽と同じだから」
「えっ?」
「もしかすると好きになるかもしれない。好きになってくれるかもしれない…。お互いの想いがあるから付き合う。そうでしょう?」
「…そうだけど…」
「付き合ってみなきゃ分からない事も山程あるからね」
「…そうだね」
別々の道
本当にこれで良いのだろうか?
でもこれが運命なら
このまま進むしかないんだよね
それから一ヶ月過ぎ、私達、お互いの関係は相変わらずだった。
同じ学校に通い
同じ家で
同じ時間(とき)を過ごしたり
別々に過ごしたり
休日は自分の好き勝手して
お互いの異性と出掛ける
当たり前の生活 LIFE
―――― だけど ――――
恋の炎は変わらなかった
ある日の事。
敏樹先輩とデートをする日。
待ち合わせの時間になっても先輩は一時間を過ぎても現れず、私は連絡を入れてみた。
「只今、電話に出ることが…」
定番のアナウンスが流れた。
携帯が繋がらない為、すぐには返信ないと分かっていながらも取り合えずメールを入れてみた。
♪~
『先輩、待ち合わせ時間過ぎてますよ』
『メールでも電話でも良いので連絡下さい』
再び一時間を過ぎ、私は帰る事にした。
「何かあったのかな?だとしたら、十夜からでも連絡あるはずだし…だけど、十夜もデートなら連絡する時間ないか…な…?」
ゴロゴロ…
雷鳴が響き、雨が降りだす。
「傘、買った方が良いかな?でも、すぐやむかもしれないし良いか。面倒だし」
と、その時。
「…先…輩…?」
先輩と、そう変わらないような女の子と一緒にいる所を目撃してしまった。
「…どういう事…?私…待ってたのに…」
私はその場から足早に走り去り、トボトボと歩いて帰る。
空から降る雨が
氷のように冷たくて
胸や肌を突き刺す
痛くて仕方がなくて
そして
涙がこぼれ落ちた……
一方、十夜は、屋内デート。
菊間家に、由都羽さんがお邪魔していた。
そんな事など知るよしもなく私は家に帰って行く。
「凄い雨だね」
「そうね。…ねえ…十夜」
「何?」
「私の事…抱いてくれる?」
「うわぁ、大胆発言だね~」
「だって、私は十夜が好きなのよ」
「でも、俺はまだ特別な想いないから」
「だけど…男の人は好きじゃなくても抱けるでしょう?」
「…例え出来ても俺には無理だよ。成り行きとか、その場の雰囲気とか…俺そういうの嫌いだから」
「…十夜…」
「由都羽、もし、そういう気持ちなら帰ってくれないかな?」
「…えっ…?…ごめん…なさい…そんなつもりは…」
「分かったなら、そういう事は二度と言わないでね。今度言ったら本当に帰って貰うよ。由都羽」
「…うん…分かった…本当にごめん…」
―――――×―――――×―――――×
「ねえ彼女、そんなに濡れちゃって、どうしたの?よかったら車に乗ってかない?」
「結構です…」
「そう言わないでさ」
「………………」
「風邪ひいちゃうよ~」
「………………」
「ねえねえ、何か言いなよ」
「…だったら…構わないで!帰れ!失せろっ!イライラするっ!ムカつくっ!ただでさえブルーなんだから余りしつこいと大声出すよ!警察(さつ)呼ぶからねっ!」
「おいおい…そりゃねーだろ?」
「ただ声掛けただけで犯罪者扱いかよ。ふざけんなし!」
彼等は去った。
その直後だ。
♪~
『ごめん、今日は急用で行けなくなって』
『連絡したくても出来なくて本当にごめん』
『今日はもう帰って良いよ』
敏樹からだった。
『急用?女の人と出掛ける事が?』
そう文字を打つも消す。
『急用?だったら連絡…』
そう打つも再び消す。
♪~
『そうか…分かった』
♪~
『まだ待ち合わせ場所にいるの?』
♪~
『大丈夫。平気。それじゃ』
私は携帯の電源を切った。
少しして電源を入れる。
本当は、腹立だしくて電源を入れたくなかったけど、電源を入れる事にした。
♪~
『怒ってる?本当ごめん』
「………………」
♪~
『良いよ。気にしないで』
♪~
『そう?それじゃ気を付けて』
「………………」
私は携帯を投げ付けようとした。
でも、電源を切ると携帯を川に投げ入れたというより…投げ捨てた。
「携帯なんて…メールなんて…顔が見えない分、本心なのか分かんないよっ!敏樹の嘘つきっ!敏樹の馬鹿っ!」
携帯は便利かもしれないけど
でも
本心なんて分からない
隣に自分以外の異性がいても
メールで誤魔化される
真実なのか
嘘なのか
相手には分からない
自分しか分からない
連絡の術なのだから………
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