第11話 元カレ、あなたの優しさは辛いだけ・・・

カチャ

家に帰り玄関に入る。



「…由都羽さん……いるんだ……」



私は再び出て行く事にした。


しばらく歩いていると。



「…行く宛…何処にもないよ…」



パサッ

誰かが洋服を羽織らせる。




「俺ん家で良ければ来る?」

「えっ?」



顔をあげると、そこには勇園君の姿。



「そんなに濡れているんじゃ風邪引くよ」



私は下にうつ向く。




「友羽ちゃん?」



勇園君は優しく抱き寄せる。



「何があったかは知らないけど、取り合えず家に来なよ」


「でも…彼女…」

「えっ?」

「彼女はいないの?」

「最近、別れたばかりなんだよね。彼女の浮気で」


「えっ!?」


「俺、女運ねーのかも。取り合えず移動しようか?」

「…うん…」


「最近、好きな人出来たとか言って別れを、一方的に言われて。向こうから俺に告白しといて振った挙げ句、わざわざ今日も好きな人と出掛けるとか報告されて」


「……ねえ……その彼女って、どんな子?雰囲気とか」


「あー、友羽ちゃんみたいな感じ?」

「えっ!?」

「髪の毛は、元彼女の方が短い感じかな?背は小柄で…」




《先輩の隣にいた女の子に似てる》




「もしかしてその子…年上の人と付き合ってる?」

「あー、敏樹とか言ってたっけ?」

「そうか…」

「友羽ちゃん?どうかした?」

「…ううん…大丈夫」



私は雨が止み次第勇園君の家を後に帰るのだった。




「あれ?おかえり。突然の雨で敏樹の家で着替えた?」


「元カレの家」


「えっ?元カレ?って……どうして?だって今日は敏樹と……」


「ドタキャンだよっ!」



十夜の言葉を遮る。



「えっ!?」


「敏樹、私の事は放って他の女の子とデートしてたよっ!」


「何かの間違い……」


「間違いなんかじゃないよっ!勇園君からの情報だしっ!先輩と一緒にいた女の子、勇園君の元彼女っぽいしっ!」



「………………」



「友羽……敏樹は、そういう奴じゃないよ。アイツを信じて」


「あんな二人の姿見て信じろって?」

「連絡してみなよ」

「出来ないよっ!」


「えっ?」


「余りにムカついたから携帯、川に投げ捨てたから」


「友羽。だったら俺の携帯から」

「良いしっ!もう放っておいてっ!」



「…………」


「……十夜……優しくしないでよ…。優しくされると辛いじゃん…!どうして優しくするの!?私の気持ち知ってるから?」


「…友羽…」


「…中途半端な優しさなんて良いよ……思わせ振りな態度なんて辞めてよ……」



私は部屋に向かって一気に駆け上がった。



























  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る