第8話 想いをぶつけて。訪問者 ~ ライバル宣言 ~

ある日の事だった。



「十夜君、おかえり。ねえ、友羽と会わなかった?」


「えっ?友羽?友羽なら俺より先に学校出てたから、てっきり、もう帰りついてると思ったんですけど」


「そう…」


「連絡は?」


「今から帰るとは言っていたけど、一時間位前に連絡あったきりで」


「一時間位前?大丈夫だと思いますよ」

「そうよね?大丈夫よね?」




そんな中、私は足早に家に帰る。



「ヤッバー、早く帰らなきゃ、ママ心配…」




その途中 ――――




ドンッ


誰かとぶつかった。




「きゃあっ!す、すみませんっ!」

「こちらこそ……友羽ちゃん?」




そこには見覚えのある顔。




「…敏樹…さん?」

「友羽ちゃん…その敏樹さんって出来れば辞めて貰った方が…」

「えっ?あっ!すみません!先輩って呼び慣れてなくて…敏樹…先輩って言えるように努力しますね」



「ゆっくりで良いよ」



敏樹さん…いや…敏樹先輩はクスクス笑いながら言う。



「今、学校帰り?もう随分と辺りは暗くなりかけてるのに送ろうか?」


「いいえ。大丈夫ですよ」

「じゃあ、十夜、呼び出そうか?さっきまで一緒にいたんだけど」

「えっ!?そうなんですね」



そして私は敏樹先輩に送ってもらう事にした。




「どう?あれから何か進展あった?」


「えっ?」


「十夜に告白とか?」

「そんなの…無理だよ」


「そう?でも、気持ち薄々気付かれてるのなら思いっきり想いぶつけて楽になった方が良くない?」


「…うん…でも…私の想い気付いていたとしても結局返事は駄目だよ…」


「友羽ちゃん…」


「…私…正直自分の事になると奥手で勇気出ないし踏み込めなくて…」


「そうか…」



私達は色々と話をしつつ帰り送って貰った。





ある日の事。



ピンポーン。


カチャ



「はい」




インターホンが鳴り、玄関に出る私。




「あっ!こんにちは」


「…由都羽さん…。あの…十夜なら今…」

「知ってるわ。あなたに」


「えっ?」


「友羽ちゃんに用事あって」

「私…ですか?」

「そう。ちょっと外、出れる?」




私は由都羽さんに連れられ出掛けた。




「あの…由都羽さん…用事って…」

「十夜の事だけど…」




ドキッ


名前を聞き胸が大きく跳ねる。




「友羽ちゃんにとって、十夜の存在って大きいの?」



「…それは…」


「図星?」


「…い、いいえ!別に…大丈夫です」


「そう?それじゃ私、十夜の事、マジになっちゃおうかな?」


「実は私…十夜が向こうに行く前から好きで仕方がなかったの。だけど、十夜に想いを伝える事なく彼は私の前から去った」



「………………」



「でも…その頃、私、敏樹と付き合っていたから。敏樹、私の想いを気付いてる中、それでも良いって……」



≪嘘…敏樹先輩…そんな事あって…私に告白…≫




「…そう…なんですね…由都羽さんの想い知ってて…」


「ともかく、私、十夜への想いは本気だし、だから私に譲って」



≪譲ってって…≫



「十夜をモノみたいな扱いしないで下さい」

「友羽ちゃん…?」

「…すみません…分かりました…」



私達は別れた。


そして、私と由都羽さんが一緒にいる所を目撃している十夜の姿があった。


家に帰り玄関のドアノブに手をかける。



「………………」



「入んないの?」



ビクッ

振り返る私。



ドキン……



「…十…夜…」



十夜は横切り、ドアを開けると家の中に入って行き、私も後を追うように入る。




「さっき、偶々見掛けたけど、由都羽と何を話してたの?」


「えっ!?あっ…ううん別に…」


「そう?まあ、女の子同士だし、恋ばなでもしていたのかな?」




そして、十夜は二階へとあがっていく。



「十夜っ!」


「ん?何?」



足を止め振り返る。




「友羽?」


「…ううん…何でもない…ごめん…呼び止めて」


「そう?」




そして、十夜は二階にあがって行く。




「………………」



「……十夜…私…十夜が…好き…だよ……。…でも…」





――――×――――×――――×




「…運命のイタズラだよね~。人間って不思議……。恋愛の神様がイタズラ好きだから2人の妖精が喧嘩しちゃってるね~」





恋愛の神様


二人の妖精


恋のウ゛ィーナスは


どちらの味方?


そして


幸福を運んでくれるのは


誰ですか?









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