30日目_続

 ……日が沈んでも、俺の身体に異変はなかった。

 

「え?」


 俺も、そして魔王も動揺する。

 その瞬間、ルナの氷撃が魔王の足元を凍結させた。

 

「撃てヒナタ!」


 ルナの声に応え、俺は魔剣を振るう。

 最大火力の爆炎が、魔王を塵と化した。

 

 俺達は勝ったのだ。

 歓喜の瞬間――だが、俺はそれ以上に困惑していた。

 

「ルナ……なんで俺はまだ生きてるんだ?」

「時差よ」

「えっ?」

「この魔王城は、私がヒナタを召喚した女神の神殿よりずっと東にあるでしょ。そのぶん、日が沈むのが数分早いのよ」

「……変なところで細かいんだな、異世界ってのは。ま、そのおかげで助かったけどさ」


 魔王を倒した勇者よ、そなたの願いを叶えよう、と天から声がした。


「元の世界で死にかけてる俺の身体を治してくれ」


 いいだろう、と天の声は言った。


 そして俺の身体が光に包まれる。今度こそタイムリミットだ。


「じゃあな、ルナ」

「ばいばい、ヒナタ」


 別れの言葉は、それだけだった。

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