26日目

 クロノスの神殿には温泉があった。

 俺が朝風呂に浸かっていると、となりの女湯から声が聞こえてきた。緑女神と青女神だ。


「うわー青ちゃんって肌すっごい綺麗。スタイルいいし美人だし羨ましー」


 緑が青女神を褒めている。

 そんなことないわよ、私より緑ちゃんの方が綺麗よ、と青女神が言った。


「うそー。私なんか超ブスだしー。青ちゃんの方が絶対キレイだってー」


 俺は前々から、こういう会話をしている女達の本音に興味があったので、壁の隙間から迷宮の鏡で心を覗いてみた。

 青女神は、本心から緑女神のほうが美人だと思っていた。

 緑女神は、本心では自分のほうが美人だと思っていた。


「まあ予想どおりだな」


 納得していたら、俺の覗きはバレて緑女神にボコボコに殴られた。


 夜になって、神殿に警報が鳴り響いた。

 魔王が自ら軍を率いて、この神殿に侵攻してきている、と。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る