第2話 とある記事より

短めだし正直読む必要もないですがVRゲームができるようにるとしたらこんなシステムなのかなぁって感じのお話。



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―――昨年、世界有数の大手ゲーム会社であるUTOPIA株式会社より驚くべき発表がなされた。

同社の発表によると、『完全にゲームの中に入り込むことができるVRゲームのハードを開発した』とのこと。この発表に、世界中が沸き立った。


元来、仮想現実VR空間に人間の意識を完全に移転してまるで自分がそこにいるかのように錯覚させるような技術は存在していた。しかし、それはプロスポーツ選手の練習や最先端医療等に利用されていたのだ。

なにせ選手の動きなどを細部まで録画、再生できればフォームの改善や体調の管理などをいとも簡単にできるし、手術を受ける患者の意識が拡張現実空間内にあれば麻酔など必要ない。また、無意識レベルでの反応や拒絶反応なども抑制できる。


だが、それをゲーム機として運用し、日常に同化させるというのはどうなのだろうか。


ユーザーの意識を拡張現実空間に移すというのは、いわば意識の牢獄に閉じ込めるのと同じことだ。ユーザーが自らの意思で現実世界の身体を動かせない以上、内部からログアウトする手段を奪われてしまったらどうなるか。

もちろん、こういった事案を題材にしたフィクション作品はいくつもある。


こういった指摘に対して同社は改めて次のように発表した。


『当ゲーム機には、現実世界の時間にしてログインから24時間経過時点で強制的に一度ログアウトさせる機能が搭載されております。もちろん、その30分前に警告が一度入りますが。また、ログアウトしてから5分間ユーザーの意識が戻らなかった場合に自動的に体調のスキャンを行い、病院に連絡する機能もあります。これにより、プレイ時間の過多による体調不良が原因で命を落とす等のトラブルを防止します。まあ、我々の言葉を信じずに『ユーザーを閉じ込めるんじゃないか』なんて言う人はいるでしょう。そう思うなら結構です。プレイするなとしか言いません』


この発言にはもちろん批判が集まったが、結果的に社長自らが利用して公開実験を行い、それをテレビで生放送する等の安全性の保障に関する宣伝を行った効果もあり、発売日には一週間以上前から店頭に並ぶゲーマーの長蛇の列が日本中で確認された。


そもそもどういったシステムで動いているのか。この質問に対してUTOPIAの社長はこう答えた。


『ユーザーの脳をトレースして拡張現実空間内に再現するだけのことですよ。そこから神経、組織なんかもある程度は形作り、あとはゲーム内容に即した機能を付け加えるのみです。

その、脳の解析技術の開発にかなりの時間を要しましたがね。

もちろん、これだけじゃプレイ内容を覚えていられない。実際に考えているのは自分の脳じゃなくてトレースされて仮想空間内の脳ですからね。

そこで、24時間の制限時間なのです。現在の我々の技術では、24時間以内のプレイデータであればログアウト時にコピーして現実世界の脳に焼き付けることができます。

もちろん、脳細胞の劣化だとか若いうちに認知症を発症するリスクなんかもありました。そこで、我々はPCのファイルのように記憶を圧縮して焼き付ける技術を開発して搭載したのです。一気に情報を詰め込めば脳細胞が焼けてしまう。しかし、圧縮した小さなデータファイルとしてインプットすればそれを最小限に抑えることができる。

もちろん動物実験から人間での実験まで実行済みです。ボケるのが早くなったり寿命が縮まるなんてことは絶対に有り得ませんので安心していただきたい。

そうですね、ユーザーの感覚としてはプレイ内容を少しずつ解凍して思い出していく感じですかね。まあ、結構面白い感覚なので実際にプレイして体感していただきたいですが』


要するに、ダイブ機能を利用してプレイしても脳や肉体への影響はないということらしい。


このインタビューの日を境にUTOPIA VRの売上は一気に伸びた。

また、UTOPIA VR株式会社の株価も大幅に上昇し、一躍世界随一のトップ企業に。

今後のUTOPIA株式会社の動向に注目が集まっている。

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