俺が萌え声の女の子の財布になった話 PART2

話が尽きてくると、ミクちゃんが 衝撃の一言を繰り出してきた。

「明日遊ぼうよ!!!!」


は? は!? はっ!? はぁっ!??って感じだった。 知り合って1日でそんなんあり得るかよ!?って思ったし、何で俺なんだよ!? と思って、疑問しかなかった。

彼女曰く、明日リア友にドタキャンされて暇で、見たい映画があるらしく一緒に見に言ってくれる人を探してて、イケボじゃなくて俺を選んだのは話しやすかったかららしい。


都合良いやつ探してるだけやんけ! 僕の存在意義ってなんだよ...... とか思って、恥ずかしさもありつつ 「知り合って1日で会うのは......」 と言って断った。

「えっ......なら仕方ないね......(´・ ・`)」 とミクちゃんは悲しそうに俯いた。 そいつを聴いた僕は罪悪感が心ん中で渦巻いた。


だが...... 「でも、あそぼっ!?」 と意味不明なことをミクちゃんは言ってきた。

ーーその言葉に、誘いに......僕は堕ちた。


今思えばここも計算だったのかもしれない。そんなこと考えても無駄なんだが。 僕と彼女は遊ぶことになった。

見る映画の席を2人で通話しながらとったり、待ち時間の間どこ回るか決めたりした。


一度、通話を切ってまた夜に話そうってことになった。

僕は通話を切ってすぐにイケボに個通をかけた。 内容は「どうぢよううぅぅ 二人っきりで遊ぶことになっちゃったよぉおお」 と泣きついた。

「良かったじゃんw(適当)」とか「パコれんじゃん?やったね!」とかふざけた返事しか返ってこなかったんだが、次第にマジメに答えてくれるようになった。


僕はイケボに問われた 「お前はどうしたいんだ?」


んなのとっくに決まってた。

「ミクちゃんと付き合いたい!!」 それが僕の答えだった。


「デート行くんなら容姿は整えた方が良いかもな、お前ラブライブ!のTシャツしか持ってねぇじゃん?」

「いや、そうだけど何か問題あるか? アニメ超好きなんだなって好感度アップ狙えんじゃん!」

「バッカ、おまっ!」

僕らは服を買いに出かけることになった。デートする街と同じ場所へ。

僕はイケボに服を選んでもらい、生まれて初めてオシャレをした。

「あとは髪型だな......」とイケボが言うので、 「髪型は任しとけ!」と僕は言い放って美容院へ向かった。

僕には策があった。ミクちゃんと話をした時に好きなイケメンモデルの写真を送ってもらっていたのだ。


美容師さんにこれと同じにしてください!! と言って僕はイケメンモデルと同じ髪型にしてもらった。

鏡を見た僕は......俺は、イケメンだった。

イケメンモデルなれんじゃね俺!? とすら当時は思った。

だが、気づかなかったのだこの時は。 髪をセットするのが簡単じゃないことに。


僕は帰宅して、萌え声の女の子、ミクちゃんと通話していた。 画面共有でSilent Sirenのライブを一緒に見ていた。

僕は数ある曲の中でも「八月の夜」が好きで、何これ!? 僕とミクちゃんの関係じゃん!? だなんて痛々しい妄想をしていた。


「明日、楽しみだねっ!」「おやすみ!」と言って通話を切る。 僕の心は高揚して紅葉していた。 明日が楽しみで仕方なかった。

僕はイヤホンを耳にあてて、サイサイを聞きながら眠りに落ちた。


(翌朝)

起床すると、僕はミクちゃんに送ってもらったイケメンモデル目指して髪をセットしていた。 セットし始めて、すぐ気付いた。 イケメンモデルの髪型にどうやってもならない。なんでだよ!?

※この時の僕は髪も濡らさず、ドライヤーやアイロン等の器具も使わず、ワックスを握り拳ぐらいの大玉で取ってセットしようとしていた。


困り果てた僕は朝からイケボに通話をかけた。

「バカじゃんwwんなの出来るわけないじゃんww」と笑われた。

「どうすりゃイケメンモデルに戻んだよ!?」と必死に問う僕。

「ワックス落として、◯◯◯駅(デートするとこ)集合な! オレがなんとかするから!」とイケボ。

僕はこの言葉に救われた。 イケボで対応もイケメンなのに、どうして彼女出来ないんだよ......!? とか思いながら、僕はデートするとこへ向かった。[以下K駅とする]


駅前で落ち合う僕とイケボ。 イケボがマック行こう!と言い出した。

お互いに朝ごはん食べてないし、付き合わせてるのは僕だから髪セットは後回しでいいかと思って僕らはマックへ向かった。


飯食い終わると 「イケボがセットすっか」と言った。

「かしこまっ!どこ行く?」

「こ こ で す る ん だ よ」 は?へ?はっ!? って感じだった。

「正気かよ!?」

「たりめーじゃん、腹括れよあの子と付き合いてぇんだろ」


覚悟はすぐ決まった。 ミクちゃんと付き合うためならこれくらい造作もないと思った。 僕はマックの洗面所で髪を濡らし、ゴミ箱のとこにあるティッシュみたいなやつで髪を拭いた。



席に戻ると、イケボがテーブルについてるコンセントにヘアアイロンを刺して待っていた。 僕らはマックのテーブルで髪セットを始めた。

周りに座るリーマンたちの「何やってんのこいつら......?」 みたいな白い目が痛々しかったが、当時の僕にはそれすら快感だった。

だって、ミクちゃんのために恥を忍んでここまで出来んのってヤバくね!?

俺めっちゃカッコいいじゃんww とか思ってた。 完全に自分に酔っていた。

やがてセットが終わり、洗面所で鏡を見ると、僕......いや、俺は昨日のイケメンに戻っていた。


俺は勝ちを確信した。だって俺イケメンだし!

イケボも「今日のみうく、むっちゃイケメンだよ。萌え声なんざイチコロだ! 頑張れよ!」 と言って笑顔で送り出してくれた。

イケボには感謝しかない。

待ち合わせの時間がやって来る。 チャットでミクちゃんとお互いの服を送りあった。 「◯◯◯くんですか?」


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