楽しい日々
コンピューター室のことがあってから2日ほどたった。流華と大樹は地元の公園で会うことになった。
2人はベンチに座り、話をした。
「両思いだから付き合いたいけどまだ早いから中学校にあがってからね」
流華はそう言った。大樹は嬉しそうに
「うん!」
と言った。思い返せば流華はまだ小学生なのにちゃんと現実を見据えて大樹と上手に付き合えるにはどうすればいいかと考えているようだった。大樹は当然恋愛経験もなく、流華の言うことに従うのみ。よっぽど流華が大人であることが分かる。普通、男子が率先して遊びに誘ったり、2人の決め事をしたりするはずだが大樹はそんなことはわかっていなかった。
「それからクラスも違うし、私たち好き同士だからさ、手紙交換しよ」
流華は次にこう提案した。また大樹は
「うん!」
と言った。大樹は嬉しかった。好きな人と手紙交換ができることは大樹にとって夢のようだった。クラスも離れていて、一日に会える時間はほとんどない。当時携帯もまだ小学生だから買ってもらうことが出来ず、二人のコミュニケーションは取りづらい状況だった。流華はそれを把握し、コミュニケーションが取れる方法として手紙交換をすることに決めた。流華は大樹との恋愛に全力で向き合っていた。
「それからこの手紙のことは誰にも内緒ね?あとバレないように交換していこうね」
「うん!わかった!」
流華はポケットから紙を取り出して
「これが記念すべき1枚目ね、どうぞ」
「まじ?!ありがとう!やった!手紙だ!」
大樹は手紙を開けようとした。
「まだ開けないで!」
「え?なんで?」
「恥ずかしいからでしょ」
流華は顔を赤らめた。手紙貰った瞬間に嬉しそうに、紙切れ一枚を両手で持って本気で喜んでくれた。そして今すぐそれを開けようとしたとこも本当は嬉しい。わたしは大樹のそういうとこが好きなんだよね、と流華は感じた。大樹はごめんごめんと少し笑みを浮かべなら手紙をポケットになおした。
それからというものの、二人の学校生活は楽しいものとなった。いつのタイミングで手紙を渡せばいいのか、でもその時は人に見られたくないなと二人は思っていた。大樹はなかなか渡せなくて、おそい!と流華に怒られたこともしばしばあった。放課後になれば一週間に一回は近くの公園や、流華の家で遊んだ。最高の状態で最高学年の6年生へと進級したが同じクラスにはなれなかった。
それでも二人は仲良くできた。流華の家で遊んだ時は流華が自分の幼稚園の頃の写真を大樹に見せていた。
「わたしはどーこだっ」
「簡単じゃん。ここでしょ?」
「正解ー。
…ねえあのさ」
大樹は流華を見た。
「私のどこが好きなの?」
大樹はドキっとした。
「恥ずかしいから言えないよぉ」
「えーなんで、ゆってよー」
大樹が何度も断っても流華はしつこく聞いてきた。
「一生のお願い!ゆって!」
大輝も懲りて、恥ずかしながら小声で言った。
「俺にいっぱい笑顔見せてくれるところ、、」
流華は顔を赤らめて、
「そっ、そっか、ありがとっ」
嬉しさが隠せてないようだった。流華は微かに唇が震えていて、大樹から目を逸らす。大輝もその時そんな大人のようなセリフが口に出てなんだか恥ずかしくなった。その気を紛らわすために
「どーしたのー?どこか痛くなったの?」
と大樹は聞いた。流華は
「うるさい..」
と言いながら少し笑っていた。新しい春。二人の間を通るそよ風。写真を2人で握る手。スっと触れ合う肩と足。大輝も流華も今まで味わったことの無いことだった。今、思い返せば小学生の頃にか味わえない青春の楽しさが絶頂に達していてとても楽しい事だった。
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