4.初々しい恋人

大樹は驚いた。ほんとにいた。え?あの時の返事?もうわかってるようなことなのに言いに来たの?聞きたくないよ。そう思いながら流華に近づく。

「この前のことだけどさ」

目を少し開けた流華は言った。大樹は咎めるように

「あぁ、わかってるわかってる。俺、最低なことしたよな。ごめん。返事はいいよ。だいたいわかるから」

「そうじゃない」

流華は若干強くそう言った。

「るかはね、本当は嬉しかった。初めて会った時あんな弱そうで誰かの助けなしじゃ何も出来ないような子が今となっては、みんなの前で堂々と声を張れる。それだけでも嬉しかった。そして、あの言葉。その場では恥ずかしくて何も言えなかったけど、るかは嬉しかったよ。ありがとう。」

大樹の胸は熱くなった。そうか流華は…流華はずっと見ててくれたんだ。四年生の初めのあの時から。そう思った大樹は肩の力が抜けた。すると流華は

「るかも好きだから」

大樹の目を見つめながらそう言った。大樹は驚きを隠せず後ずさりをした。彼にとってこれが初恋で初の両思いになる。流華は恥ずかしいのか、じゃあねーと言いながら階段を駆け下りた。大樹は棒立ちしている。驚きの後に今まで感じたことのない嬉しさが込み上げた。


彼らの本当の物語はこれから始まる。


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