⒊告白

林間学校。小学生で初めての合宿行事。とても楽しいものになると思った。そうであって欲しかった。しかしこの後、この林間学校は人生に爪痕を残すような思い出になる。

2月の中旬、まだ肌寒さが残る頃、学校のバスは京都の宿舎へ向かう。バスの中は普段とは違う雰囲気であり、テンションが上がる生徒。悪いことをして怒られる生徒と怒る先生。恋バナに花を咲かす男子と女子。よくある学校行事で大樹もとても楽しく友達と喋っていた。一方流華は前の方の席で女子二三人と男子四五人で恋バナをしていた。そして1人の男子が

「そーいや流華ちゃん、四年生の頃羽田 大樹って子と遊んでたよな」

「おーっとこれは?もしや二人いい感じじゃね?」

ほかのひとりの男子がヤジを飛ばす。そう。大樹が流華と仲良かったことは他のクラスの人にも知られるほど有名であった。お互いの家に行ったり。昼休みに絵しりとりをしたり。関わりが深いのでいつしか両思いじゃないのかとほかのクラスでも噂されていた。

「ちょっとやめてよー、そんなんじゃないからー」

ヤジを飛ばした子に笑いながら流華は否定した。そしてるかの隣に座る流華の親友である聖奈が

「そういえば大樹もこのバスに乗ってたわよね。」

バスは3号車まであり、たまたま大樹と流華は一緒のバスだった。

「まじ!?どこだどこだ?」

1人の男子が大樹を探す。そして大樹を見つけてこう言い放った。

「大樹!お前、流華ちゃんのこと好きなのかよー!どーなんだー!」

大樹は突然のこと過ぎて心臓が飛び出そうになった。その後に大声で自分の恋のことについて言われ、少し恥ずかしくなった。

「なんだよいきなり!」

大樹は適当に叫んだ。そして

「好きって言えよ!」

また1人の男子がそう言い放った。バス内は大樹が注目の的になった。大樹は顔を赤らめて

「言うわけないだろ!黙れよ!」

バス内は笑いに包まれた。そしていつしかバス内に言ーえ、言ーえという声が舞い上がっていた。

大樹はその時、何を考えていたか分からない。ただ、最近の彼は友達とも上手く行き調子に乗っていた。流華のことを好きな気持ちは強かったし、告白するにも勇気がいったが今なら言えそうと思ったのかも分からない。何が理由か分からない。ただ大樹の心は流華にだけ向けられていた。だから彼の口から大きく出た


流華、好き


女子はきゃーという声を上げ、男子は賞賛してくれる声や、ケタケタと笑う奴もいた。一部の人には引かれたりも批判の声もあった。

それからの林間学校はもうその事にしか頭が回らなかった。楽しさが半減したように感じた。流華は絶対嫌な思いをしただろうな。最低なことをしたな。こんな告白許されるわけがない。もう流華が俺に好意をよせることなんて絶対ない。仮に好きだったとしても、もうその気持ちはなくなっただろうな、この出来事のせいで。と大樹は考えていた。

やっと林間学校が終わり、家に着くと大樹は寝込んでしまった。一生このことは後悔する。気持ちが先走ってしまった。なんて最悪で意気地無しな男なんだ。大樹は落胆した。

林間学校明けの学校。大樹はすっごく足取り重く学校に向かった。正直休みたかったが、親が休ましてくれなかった。登校中、流華の親友である聖奈が話しかけてきた。

「流華が昼休みコンピュータ室に来て欲しいって。いってあげて」

そう告げられた。


そして昼休み、緊張で手が震えながらコンピュータ室に向かった。そこは人通りの少ない所だった。大樹は流華がいると装い、バスで告白をする最低な行為に批判する人達が自分になにかしてくると予想した。階段を上がってコンピュータ室の前に行くと


そこには流華一人が瞳を閉じて待っていた。


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