第24話 六月一週(①)
南と一緒に勉強をする約束をした日の夜、何もしないと落ち着かない気分だったので、明日の予習――範囲的には復習だが、初めて目にする内容が多かった――を行った。
ついでに日置と住田に『明日から追試に向けて勉強するから、よろしく』と連絡しておいた。
住田からは『まぁ頑張れよ』と、日置からは『焼け石に水』と返信がきた。
――
翌日の放課後、隣にいる日置に「今日は先に帰るわ」とだけ伝え、教室を後にする。
ここでは南と一緒に行動せず、一人で自習室に向かう。
初めて自習室に来たが、確かに人は誰もおらず、俺は適当な席に着いて準備を始めた。
それから十分経つか経たないかくらいのタイミングで、南がやってきて、俺の隣に座った。
いつも一緒に帰っているが、こんなに近い距離にいることは中々ない。
「えっと、じゃあ、よろしくね」
「こちらこそお願いします」
「まずは、数学からかな」
「ハイ」
「解らないとこある?」
「ほぼすべてです……」
「……うん、そしたら、今回の試験結果ある?」
「ハイ」
「出してもらっていい?」
「ふ、照れるぜ……」
俺はペケ印の比率が高い、数学の試験結果を南の前に晒す。
女子の前でこんな恥ずかしいものを見せてしまうなんて……。
くっ、殺せ。
南は試験結果をしばらく眺めると、俺に言った。
「そしたら、四つに分けて考えてみようか」
「四つ?」
「うん。理解できて正解、理解できてないけど正解、理解できてるのに不正解、理解できてなくて不正解」
「ははぁ……」
「点数は勿論、問題を正解するのが大事だけど、解き方が解らないままだと意味ないからね。理解できて正解している問題以外の状況見て、解からないところ潰していこうか」
「確かにな」
「試験の答えは覚えてる?」
「いや、さっぱり」
「そしたら、もう一回同じ問題解いてみようか。それで今回も解けたら理解できてるし、解けなかったら理解できてないってことだから。解けない問題の基本からやってけば大丈夫だよ」
俺は感心しながら話を聞いて、「そんなこと考えて勉強してるなんて、南は凄いな」と言うと、「中学までは遼太郎の方が成績良かったでしょ」と言われた。
「早速やってみようか」
「了解」
――
「今日はこの辺りにしておく?」
「あ、結構やってたな。集中してたみたいだ」
気付けば自習室に来てから二時間以上経過していた。
解からない部分を炙り出し、南に解き方を教えてもらい、完全に理解できるまで問題を解く、というサイクルを繰り返した。
俺が問題を解いている間は、南は次教えるべき部分を確認してくれていたようだ。
「復習になるからちょうどいい」と言っていたが、本当に頭が上がらない。
「そうだね、ずっと遼太郎の顔見てたけど、全然気付かないんだもん」
「え?」
「う、ううん……。やっぱり遼太郎は凄いよ。今回の範囲だったら、もう半分くらいできるようになったんじゃない?」
「そうか? 教え方が上手かったんだろ」
「私、できるようになるまでもっと時間かかったよ」
「う~ん……。やはり天才か」
「やればできるんなら、次からはちゃんとやる!」
「は、ハイ」
こんなに捗るとは思わなかった。
もしかしたら、南は人に教えるのが上手いのだろうか。
高校に入ってから遊ぶことに集中していたが、理解できると勉強も悪くないな、と思った。
その後、俺は南に褒められたことで浮かれ、帰宅後も夜中まで勉強したのだった。
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