第2話 非科学+光

「え、今の……人!? 人だよね!?」


 二人が駆け寄ればそれは、容姿は人間だった。しかし、衣服は白い布を縫い合わせただけの簡単な服。背中には天使を連想させるような白く大きな翼が生えていた。


「大丈夫ですか!? 血、血とか出ていますか!?」


 慌てる優美に可憐はその翼の生えた人物を冷静にじっと見ていた。そのまま可憐はその人物に近づきゆっくり翼をどかして顔を確認した。茶髪で大きな瞳。ついさっき自分たちのクラスに転校してきた光明光だった。


「こ、光明君?!」


 目を見開く可憐に気付いた優美も人物の顔を覗いた。


「本当だ! 光明君だよね? あたしたち、光明君と同じクラスになった沖田優美と磯崎可憐だよ? 分かる? どうしてそんな格好しているの!? その羽は!? なんで落ちてきたの!?」


 質問攻めの優美を慌てて落ち着かせる可憐。光の息は荒かった。


「落ち着いて優美。まずは彼の健康状態の確認が先だよ。痛い所とかある?」


 可憐の言葉に光はゆっくり首を横に振った。しかし、可憐の視界には先程触れた翼から赤い血が流れているのを見逃さなかった。


「光明君! 羽から血が出ているよ! 手当てするから、歩ける? 無理なら私の家が近いからそこまで優美と——」


「逃げて。二人とも」


 可憐の言葉を遮り、光は初めて口を開いた。初対面の時のようなハキハキとさた声ではなく、今にも消えそうな声だった。


「でも光明君怪我しているわ。それに何から逃げるの!? 説明して!」


 鞄から簡単な消毒薬などを探す可憐の腕を優美が握った。そして立ち上がらせた。


「行こう、可憐。光明君がここまで言うんだから。事情は後で聞こう」


 急に態度を変えた優美に戸惑いながらも可憐は立ち上がり立ち去ろうとした。


 その時光が急に立ち上がり二人の背後に回った。そしたらどこから強い風が吹き出した。次の瞬間、光の翼から鮮血が流れた。


「光明君!」


「ぼくが時間を稼ぐから。二人は早くここから離れて。事情は後で説明するから。お願い」


 光はそこまで言うと翼を羽ばたかせて宙を舞った。抜け落ちた羽が道を汚していた光の血の上に落ち、羽ごと消えた。


「何、今の」


 唖然となる可憐の手を優美は引っ張り走った。可憐はただ優美について行くように走った。


 この時可憐の視界に不信な人物が映った。何事にも興味がなさそうな顔をした少年。それは暫く見なかったクラスメートの南風みなみかぜ吹雪ふぶきだった。


「え、嘘……」


 確かに顔は吹雪だった。しかし格好が変わっていた。光と同じ格好をしていたが色が黒だった。もちろん翼も生えていた。漆黒の翼が。


 見間違いかもしれないと思い、もう一度彼の姿を見たかったが、優美に腕を引っ張られ確認出来なかった。


 それから数分間、二人は必死で走った。優美がどこへ向かっているのかは分からなかったが、道を見る限り自分たちの家だろうと可憐は推測した。彼女の推測通り優美が止まった場所は、可憐の家である公共住宅の前だった。


「ここなら大丈夫かな?」


 息切れする二人。既に優美の手は離れていたが、可憐の手には未だに優美に握られているような感覚だった。


「家だよ。大丈夫じゃない?」


 会話をするのも困難なほど可憐は息切れをしていた。こんなに走ったのは久しぶりだった。


「上がって行って優美。優美も疲れているでしょ?

お茶出すから」


 ある程度落ち着いた二人は住宅ビルの自動ドアをくぐった。部屋番号と指紋、暗証番号を入力しビルの中に入りエレベーターに乗った。可憐は七階、優美は十階に住んでいた。エレベーターは七階で止まり、数件の家の前を通り過ぎたら可憐は鞄から鍵を取り出しドアを開け入った。それに続く優美。


「優美は紅茶だったよね」


 キッチンに入りティーカップを取り出す可憐に優美は首を振った。


「ごめん可憐。お水ないかな?今は水が飲みたいんだ。走ったし」


 優美の言葉に可憐もそうねと返しガラスのコップを取り出し氷水を注いだ。一つ優美に渡す可憐。二人は氷水を一気に飲み干した。身体中に水分が行き渡る感じがした。しかし、その後寒気が走った。


「やっぱり真冬に氷水は失敗だったかな」


「でも寒くなるまではすごく美味しかった」


 視線が合った二人は笑い合った。そしてリビングにあるソファーに座り本題に入った。


「ねぇ、さっきの優美は何だと思う? 光明君の格好といい背中の羽といい」


 テーブルにあるお菓子をつまみながら優美は考えていた。可憐もお菓子を食べる。これはAランクに上がってきて初めて架空の食べ物ではないと知ったお菓子だった。


「あれって俗に言う天使だよね。どうして光明君があんな格好していたんだろう。何かの撮影?」


「でも、あの血は本物そっくりだった。優美も見たでしょ? 光明君の羽から血が流れていたのを。しかも光明君が飛び立った後、彼の血と羽は消えた」


 真面目に考え始めた時には二人の手にはお菓子は無かった。


「信じにくい話だけど、光明君は天使で、何者かに襲われた。その時、偶然あたしたちが通りかかった。という事だよね、可憐」


「私は信じられないな。天使なんてこの世にいるわけない。私たちが初めて光明君に会った時は、普通の人間だった。でもその数十分後、光明君の背中には翼が生え、神話に出てきそうな格好だった。血も確かに本物だった。でも私たちが見た天使そっくりな人は光明君だって証拠は無い。血だって本物と私が思い込んでいるだけで、映画とかで使う偽物かもしれないし、彼の血とは限らない」


 自分でも冷静になって考えたら分からない事だらけだと可憐は実感した。普段なら一つでも情報を得ようとするのにあの時は、光と優美の言葉に素直に従い逃げた。振り返ると自分らしくない行動をとったと、ふと可憐は思った。


「可憐らしいね、信じない理由が。でも可憐はあたしの言葉を聞いて一緒に逃げたじゃない。その時点で薄々感じていたんじゃないの? あの場にいたら間違いなくあたしたちは死んでいたってね」


 図星だった。優美は可憐とは対照的に勘と感情で行動する時が多かった。それが間違っていたら理由を述べ優美を説得するのが可憐だった。だが今は立場が逆だ。


「確かにあの時は優美の意見に従った。私だってあの時あの場所から逃げなかったら死ぬかもしれないっていう事くらい分かっていたわよ。人間にも本能的に生死の危機を感じる第六感が存在するのだから」


「全く。人間には感情という素晴らしい心的過程があるんだから閉じ込めないで使えばいいのに」


 ため息をつく優美に可憐も別の意味でため息をついた。


「その素晴らしい心的過程のせいで人間は殺戮を繰り返した時代があったのよ。ほら、本題がずれている。私たちが知りたいのがあの少年が光明君かどうか。仮に光明君だった場合それ以上の話を彼に聞いていいのかどうか」


 手を顎にあて考える可憐。そのときふとリビングにあるベランダから人の気配を感じた。


 視線をベランダに移すとそこには先程よりも傷ついた天使が羽をばたつかせていた。


「あなたはさっきの!」


 可憐は慌ててベランダの窓を開け、天使を家にあげる。


 可憐の上に天使は気絶しながら倒れた。その時天使の身体が光り、見覚えのある少年が姿を現した。


「やっぱり光明君じゃない。可憐、光明君を手当てしよう」


 優美も立ち上がり可憐から救急箱の場所を尋ね、それから必要な医療道具を取り出し可憐に渡した。渡された医療道具を使い可憐は、光の腕や脚の傷の手当てをした。


 数分後、手当てを終えた可憐は再び額に汗をかいていた。


「これはあくまでも応急手当。かなり深い傷が数カ所あるから病院に連れて行った方がいいかも」


 消毒液の香りが部屋中に溢れていた。この匂いにより可憐は自分が謎の転校生の傷を手当てしたと実感した。余った医療道具を救急箱に戻している時、光は目を覚ました。


「ん」


「大丈夫? 光明君、だよね?」


 優美が光のそばにそっと近寄った。可憐も救急箱をあるべき場所に置いたら光のもとへ向かった。


「えっと、ここは?」


「ここは私の家。知らなくて来たの?」


 一度沈黙をする光。自分の外傷を確認すれば何かを思い出したように目を見開いた。


「という事は、ぼくは、やっぱりあの時君に会えたんだね」


 ゆっくり身体を光は起こした。


「まだ動いちゃ傷が!」


 可憐の言葉を無視し光は上半身だけ起こして何かを呟いた。光の発した言葉は可憐の知らない国の言語なのか、それすら分からなかった。その次には光に巻かれた包帯が急激に劣化し始めたのだ。


「何……これ」


 光が口を閉じた時には包帯は何十年も前の包帯のようにぼろ切れ以下になっていた。包帯が床に落ちた。可憐が先程手当てした場所に傷は無かった。


「手当てしてくれたんだ。ありがとう。お陰でぼくの魔力を使うのが大幅にカットされたよ」


 あの時のような眩しい笑顔を光は可憐に見せた。可憐は無表情のままだった。


「あなたに聞きたい事が沢山あるの。あなたは誰?何故そのような格好をしていたの? 背中の翼は本物? どうして私の家が分かったの?」


 先程とは逆に可憐が光を質問責めにしていた。それを今度は優美が落ち着かせた。


 光は床に落ちた包帯だったものを拾い上げそれを綺麗な光りに変えた。それが蛍の光りを真似た事は二人には蛍が既に絶滅したので分からなかった。


「自己紹介したよね。ぼくは光明光。君たちのクラスメートだよ。でも、ぼくは人間じゃない。君たちの言葉を借りるならぼくは天使だ」


 光の言葉を聞いて可憐は立ち上がった。そして大きく右手を振り上げ光の頬を叩いた。乾いた音が可憐の部屋を支配した。


「いくらSランクから来たって言ったって馬鹿にしすぎ。こんな時代に天使なんて、人間の空虚な妄想に過ぎないの。ここまで凝った芝居をして私たちを馬鹿にしたいの? 私たちの言葉を借りる? じゃあ、あなたの言葉では何と言うの?」


 そこまで言うと可憐は光の頬を見た。自分が叩いた左頬が微かに赤くなっていた。


「叩いた事は謝罪するわ。ごめんなさい」


 叩いた事だけに謝罪するような声色で可憐は再び無表情に戻った。優美は可憐の行動に唖然としていた。


「契約者」


 光が呟いた。二人の視線が光に集中した。


「契約者?」


「うん。ぼくたちの言葉だとぼくたちの事を契約者と呼んでいる。他に不満があればぼくが全て受け止める。質問も答える。信じてくれなくてもいい。でも、君にはこの事実を知る義務があるんだ」


 光の瞳には可憐が映っていた。彼は今日出会った転校生。それなのに光は自分の事を知っている。そのような眼を光はしていた。


「私には分からないわ。私は元々Cランクの人間だもの。私が知っているのはCランクの世界とAランクの世界。Cランクにいた時、私はここにあるクッキーやチョコレートは架空の物だと思っていた。でも今はこうやって気軽に食べる事が出来る。それならSランクには天使がいるの? でもSランクの技術をSランク以下の人に見せるのは犯罪よ。それがSランクの科学だと分かった時、私はあなたを警察に突き出す」


 可憐の言うとおり自分のランクの技術を他のランクに見せる事は法律で縛られていた。これは重罪になり特に医療に関する技術を公開したら極刑となるのだ。もちろん、技術を見た方も国に監禁される。二度と同じ生活は送れないのだ。


「確かにぼくはSランクにいた。でもぼくの目的はぼくと契約出来る人間を探すためなんだ。これは、どんなに賢い人間でも扱えない力、魔力さ。よって、ぼくは不起訴だね」


 光の頬は元の色に戻っていた。可憐も冷静になり光をソファーに座らせた。


「光明君と契約出来る人間?」


 優美が光の言葉を繰り返した。優美の視線はさっきから光を捉えていた。


「うん。ぼくと契約するって事は物理的に不可能な事以外の願いを一度だけぼくは叶える変わりに、契約した人間は死後契約者となりまた人間と契約する事なんだ。例えば、ぼくが沖田さんと契約する。契約内容は身内の不治の病を治す。すると沖田さんの願いは叶う。でも沖田さんは死後契約者……天使となる。天使になった沖田さんはまたこの世界に戻ってきて生きている人間の願いを叶える。ここまでは大丈夫?」


 光の問いに優美も可憐も頷いた。


「でも天使になるって事は人間と契約するのと同時に契約した人間が無事に死を迎えれるように守る義務もあるんだ。だからさっきの例えを延長するなら沖田さんがぼくと契約した瞬間、ぼくは沖田さんから離れる事を許されない。沖田さんが死を迎えるまではね」


「人間としての死を安心して迎えられる。これだと契約後に肉体的都合で天使になれないという不祥事が起きる事はない」


 可憐の言葉に光は頷いた。


「次に、ぼくたちと契約出来る条件。さっきも言った通り契約した人間は死後天使になる。天使になるということは、人間離れしたことを簡単に成し遂げることが出来ることなんだ。そのためには契約指数と言われる力が必要。ぼくたちはこの力を魔力と呼んでいる。こっちの方が人間にも親しみがあるしね。その魔力は、とても膨大で普通の人間がコントロールなんて到底できない。だけど、契約者となる運命を持つ人間はそれが契約すれば出来るんだ」


 可憐は口を開かず、ただ光を見ていた。出来事を振り返れば辻褄が合っている話だ。これをそんな短時間で作るなんて可憐には不可能だ。それなら目の前の少年が言っている事は事実なのかもしれないという心の変化が生まれた。


「じゃあ、光明君も前は人間だったの? ねぇ、どんな人間だったの?」


 優美が瞳をキラキラさせて光に近寄った。光は苦笑していた。


「それがね、記憶に無いんだ。ぼくが誰だったのか。どこの国、時代の人なのか。何一つ覚えていないよ」


 光の言葉に可憐は少し目を見開き、優美はつまらなそうにため息をついた。


「じゃあ死んでから家族を見たり好きな人に思いを伝えたり出来ないじゃないの。光明君勿体無いなっ」


 優美の言葉に光は首を横に振った。


「これはどの天使も共通する事だよ。死に別れた恋人や家族に天使となった別人が会ったりすれば人間はパニックになるだろ? それに契約出来る人間がその中にいなければ別の所へ行かないといけない。再び失う悲しさを味わうんだ。記憶が無い方が天使としての仕事に専念出来る」


 ため息をつく優美と光。可憐は未だに光の話を信じるか信じないか考えていた。


「仮に光明君が言った事が全て本当の事だと仮定する。そうしたらさっきの傷が無くなるのは、魔法って事になるのかしら?」


 光の腕を指差す可憐。光の腕はつい先ほど大怪我を負っていたと思えないほど傷一つ無かった。


「そうなるかな。でも、ぼくたち天使も魂はあるけどこの肉体は神からの借り物。復活した偽りの純粋な人間の肉体。そして、あとから記憶を失った魂を入れている。だから勿論今拳銃を向けられたらぼくは死ぬよ? 光明光という存在は死んだ事になる。でも、それは人間の話。魔力を使えば少なくても人間の武器で死ぬことはない。でも、そうしたら化け物扱いされるだろ? だから、光明光はこの時間枠では死ぬことになるけど、時間と名前を変えてぼくは生き続け、また契約者の運命を背負う人間を探す」


「矛盾しているわ。魔法は使えるのに身体は人間でしょ。人間がそんな短期間に怪我を治す事は不可能よ」


 疑心暗鬼。まさに今の可憐にぴったりの言葉だった。やはり作り話なのではとまた心が揺らいだ。


「確かに、純粋な人間には不可能だ。でも、ぼくは天使。そこで傷ついた場所だけ時間を早めた。手のひらは今の身体だけど腕は二週間後の腕。勿論早めた分そこの部分の寿命は短くなるよ。歩いている途中で腕が朽ちたり、腐敗したりとかとかしょっちゅうさ。まあ、でも、魔力でカバーしているけどね」


 またもや信じがたいが辻褄の合う話だ。可憐はつまらなさそうに視線を一度優美に向けた。優美は可憐の視線に気付かずただ光を見ていた。


「もう質問は無い? 無いならぼくから一言言いたいことがあるんだ」


 光は優美と可憐に視線を交互に向けた。可憐はまだ聞きたい事が沢山あった。吹雪の事も気になる。優美は首を横に振っていたので質問は無いのだろう。


「じゃあ私から一つ。あなたたち契約者は何故人間と契約するの?」


 可憐の質問に優美が数回まばたきした。


「可憐、光明君の、話し聞いていたの? 天使になってもらうからって言っていたわよね」


 優美に向かって首を横に振る可憐。


「違う。そんな事じゃなくて何故人間が天使になるのか。人間の願いを叶える代わりに死後天使になる。そうやってただ、天使の数を増やすなんて無駄よ。それなら魔法なんてもたいしたこと無いと思う。他に、何か本当の目的があるのかしら? 天使さん」


 ここで光が、目的が無いと答えたら家から追い出すつもりだった。しかし、光は追い詰められた表情はせず、逆に口角を上げていた。


「流石だよ。やっぱり君には特別な力を感じる。この内容は基本、はしょっているけどね。特別に答えるよ。ぼくたち天使は魔王サタンに対抗する為に、より強力な魔力を持った人間を沢山天使にする必要があるんだ」


 首を傾げる優美とため息をつく可憐。また疑問が増えてしまったとでも言いたいように光を見る。


「魔王サタン? 天使がいるなら悪魔でもいるかなぁ。可憐はどう思う?」


「正解だよ。沖田さん」


 可憐の代わりに光が答えた。可憐は無表情で光を見る。


「同じ契約者だけど彼らはどんな人間とでも契約できる。しかもぼくたち天使が不可能な願いも別の形で叶える。でも、人間の契約の代償が自分の魂を悪魔の餌にする事なんだ。悪魔により魂を失った人間の肉体は滅びを望み、自殺などを行う。ケースによったら他人を殺してから自分も自殺するケースもある。魂を失った肉体に殺された人間の魂は悪魔に吸収されるんだ。吸収された人間の魂は一カ所に集められてサタン復活の為に使われる。ぼくたちはその悪魔を一体でも減らせるように魔力を高め、契約の邪魔をする。悪魔の最大の弱点はぼくたち天使の魔力なんだ」


 光は口を閉じた。二人に状況を整理する時間を与える。


「つまり、悪魔を沢山倒して人間が悪魔と契約出来ないようにするんだね。そうしたらその魔王が復活する事も無い」


 一番に口を開いたのは優美だった。可憐は未だに口を開かなかった。


「うん。そうなんだ。悪魔も強い魔力の持ち主を欲している。だから先に契約したら天使が常に傍にいるから悪魔は契約出来ない」


 光が微笑む。優美はそれが自分に向けられたと思い俯いた。


「じゃあ南風君も天使なの?」


 ふと可憐が口を開いた。南風という単語を聞いて光は目を見開いた。

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