第15話 ナンバーズ
昼食を食べ終えた俺は自室に戻ると、スマホをエンドテーブルへと置いて充電し、ランクを上げるためベッドに寝転がってバウゼルで色々と調べ物をしていた。
今流行っているプレイスタイルや、ひいては今後対峙することになる
ゲームで勝ちをもぎ取るには情報収集は基本である。
自分の取れる択を増やすにしろ、それをもし相手が使ってきたらの対処法を学ぶにしろ、相手の得意不得意を知りどう戦うかを模索する……
ゲーマーだからといってコマンド入力の練習だけしていればいいというわけではない。
敵を知り、己を知れば百戦なんとやら、って奴だ。
というわけで、俺は今ナンバーズたちについて調べ物をしていた。
昨日バウゼルはサーバーの上位12人をそう呼ぶと言っていたが、俺が知っているのはそれくらいで彼らの得意戦法は愚か、名前すらも知らない有様。
そのため検索結果の一番上に表示された、『【最新版】ナンバーズについて徹底解説!』とサイトにたった今アクセスしたところなのだ。つらつらと目を通し、目当ての情報が無いか探すとしよう……。
『最近良く目にするようになった、「ナンバーズ」という言葉。意味や元ネタを知らずに使っている人も多いのでは?
せっかくなので調べてみました!』
……これ、アレだ。2020年代に急増したキュレーションサイトだわ。
一応知らない人向けに説明すると、アクセス数稼ぎを目的にネットで調べたようなうっすい情報を長々と語るだけのクソみてぇなサイト群のことだ。
最後らへんに「いかがでしたか?」と締めくくるはずなのでそれを期待して読み進めていこう。
【そもそもナンバーズって何?】
『ナンバーズといえばマークシートを黒く塗りつぶして当たるかどうか賭けるあれですね!今回紹介するのはそれとは違うものですがそちらに関することも紹介していきます。まず使いやすい鉛筆ですが――』
ハイ関係ない。こういう関連した話題を出して水増しをするのもキュレーションサイトの特徴だ。ココは飛ばして主題に行こう。
【現在のナンバーズについて】
『12人居るナンバーズの方々ですが、当サイトで独自に調べてみた結果を以下にまとめました!12位から順に書いていきます!』
お?これは中々期待できそうな言い様だな。まぁあまり期待しすぎない程度に読み進めていこう。
『12位は
『11位 リチェルカ・クロースさんです。二つ名は「
ハイきた。伝家の宝刀『調べてみましたが分かりませんでした』普通そんな情報乗せないか分かるまで調べるってのが筋だろうが。
『10位
画像は無いが、バニー服ってことは結構露出度が高い衣装だろう。そんなモノ着て大勢の前に立てるっていうメンタルがスゲーな。俺には絶対無理だ。というか死んでも着ないが。
『9位
漫画やアニメじゃ爺さんは強キャラ、執事も強キャラ。掛け合わせたコイツは手強そうな匂いがプンプンするぜ。
『8位
お嬢様……ねぇ。hikariも確かどっかいいところの家柄だってポロッとこぼしてたが……。
アイツ、俺が居なくなってからどうしてたのだろうか。
感情に浸るのもこれまでにして、次に行こう。
『7位はエミリア・フォルトゥーナさん!二つ名は「luck☆E」と書いてラッキーと読むようです!調べてみたのですが女性のアバターを使っているのと運が良いということしか分かりませんでした!』
パークの中には確率で発動する運要素の高いものもあったはず。確率でリロード時間0とかクリティカルヒットが発生するとか。それらを使うようなプレイスタイルだろう。
『6位はルーデシア・S・アッテルベリさんです。二つ名は「
「かくえき」なんて夏目漱石が書いた小説、
『5位 †
俺自身の経験則から導き出した法則、ネトゲで関わっちゃいけない名前の一例を紹介しよう。
1.「癒」とかの漢字が入った名前。これには「猫」とか「姫」とか「天使」も入る。
2. †とかxで囲ってる名前。†〇〇†みたいな。
3.食べ物の名前
4.〇〇ママ、〇〇パパといった親であることをアピールする名前
つまりどういうことか?コイツは地雷ネームでも2/4を満たした奴ってこった。あまり深くは関わりたくない。絶対厄介なことになる。
……ただ、この名前どっかで見たような気がするが……気のせいだろう。次に行こう。
『4位は白縫衣フチカさん!二つ名は「
活動し始めの頃はどこにも所属してなかったのですがとある切っ掛けで現在所属している「セラフ」というゲーマー育成所に入ったとか。
プレイスタイルは多数展開する誘導弾で追い詰めることを得意としており、一体多も難なくこなす実力も持っているそうです』
何でフチカのことだけこんな詳しく書かれてんだ?……もしや葵が喋ったのか。アイツおだてられると弱そうだし。
『3位 「
剣聖というからには俺と同じく接近戦を得意としているとだろう。そしてフチカよりも上位ということは、彼が俺の上位互換であると言われているようで無性に腹が立つ。
コイツだけには絶対負けたくない。そう思い俺はまだ顔すらあわせたことのない相手に闘志を燃やす。
『2位 芹沢葵さんです。「七色のミサイリウム」という二つ名に恥じず、ミサイルのように飛ぶサイリウムを操って戦うプレイスタイルだそうです。ちなみに4位の白縫衣さんをスカウトした「セラフ」の所長さんだそうです。情報提供ありがとうごさいました!』
やっぱりじゃねぇか!なにやってんだアイツ!?くそ……したり顔で語る葵の姿が思い浮かぶ。
『1位
何でも出来るってことはコイツ専用に
【結論】
『12人をそれぞれ調べてみましたが名前以外ほとんど分かりませんでした!今後の活躍に期待ですね!
この記事はいかがでしたか?
良ければこちらもチェック!』
「イカがもタコがもねーんだよこのタコ!」
予想通り殆ど無い内容を薄めに薄めた記事に腹が立ち、上半身を勢いよく起こす。
結局分かったのは各々の名前と葵がおだてられてフチカの情報くっちゃべった事くらいじゃねーか。
「はぁ……気晴らしにランクマにでも潜るか……」
そう呟いて机の上に置いてあったスマホの充電がどれ位まで進んだのかを確認するため充電ケーブルを引っこ抜くと、同時に通知が飛び込んできた。
「我が名は『
第6位からの
来た。俺はこの瞬間を待ってたんだ。かと言って『待ってたぜェ!!この
ランクの変動がないプライベートマッチでの闘い。それは相手の戦法を見る最高のチャンス。格上の闘い方を体感できるこの招待、逃すわけにはいかない。
そうして、俺はその招待を快諾するのだった。
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