第18話 指揮棒の力
その日、惑星トレドの命運を左右するような重要な事態が起こっていた。
「…なんだ、緊急にして最高機密レベルの通信だと?!」
宇宙戦艦キルリアンに乗っていた第一騎士クロムハートは人払いをして、モニター画面の前に着いた。画面に現れたのは驚くべき人物であった。
「…久しぶりよのう。我が直属の第一騎士クロムハートよ」
それは誰あろうこの大宇宙に君臨する帝国の皇帝ヴォルテウス三世であった。長身にして鋼のようなその体、思慮深く物静かな中に王者の風格が漂う圧倒的な威圧感がある。
「皇帝直々にご連絡とは、いったいどのような…」
「実は我が命により、諜報局のクリムトがある重要なことを調べておった。そこでついに重要な秘密が明らかになった。十一年前、我々はやはり連邦にあざむかれていた。その後もずーっとだ。この怒りをどうしてくれようぞ。帝国は裏切られ、だまされ続けてきた。クロムハートよ、この屈辱を見事にはらしてみよ」
「…かしこまりました」
「ではクリムトに代わる。くわしいことを聞くがよい…」
皇帝の画面は消え、諜報部のあのプラチナブロンドのクリムトに変わった。
「クリムトよ、皇帝はお怒りの様子であった。一体何があったというのだ」
「ふむ。まずこれから報告することは、トレドの軍部はおろか、大統領さえも知らない機密事項だ。すべては十一年前に連邦の本部の上層部が画策したことでおそらくトレドの誰一人知らないことだ」
「ほう、連邦の元老院のやつらの差し金か? 十一年前のことと言うとまさか…」
「ふふ、たぶん御推察の通りだ。騎士団戦争の発端となった物、連邦がレッドドラゴン遺跡で掘り出したコアストーン変換マシーンだ。ダークスネーク遺跡から大量に掘り出されたコアストーンだがその九〇パーセント以上はわが帝国が握っている、その超能力に関する研究は極秘裏にわが帝国で実用化されてきた。あとはコアストーンから莫大なエネルギーを取り出す変換マシーンがあれば我々は完璧だ。コアストーンから取り出せるエネルギーは、放射能や危険物質も出ず、また小さな箱程度で巨大戦艦を何年も動かせるという優れたものだ。莫大な力を手に入れて、圧倒的に優位に立つことができる」
「だがコアストーン変換マシーンは宇宙コロニーに運ばれたところを我々の手によって帝国に運んだはずだったが…」
「だが、ご存知の通り、帝国の科学力ではコアストーンマシーンを動かすことはできず、そのまま十一年がすぎた。しかしここで平和条約が結ばれた時、皇帝は言ったのだ。平和条約の結ばれた今こそ、連邦は動き出すと。まさかと思ったが皇帝の命令の通りに極秘調査を進めた結果、連邦の上層部がトレドのどこかに隠したものをいよいよ惑星の外に持ち出そうとしていることが分かった」
「それはいったいなんだ?」
「コアストーン変換マシーンの心臓部でもある精神エネルギー端子だ。連邦の上層部はそれを抜き取って隠し、残りを帝国に渡したのだ。だからいくら頑張っても動くはずもない。そして動かなかったコアストーン変換マシーンが返却されてきた今、このトレドのどこかに隠してあった精神エネルギー端子を政府にも軍部にも気付かれずに運び出そうとしている。連邦の上層部はついにあのマシーンを動かすつもりだ。その前になんとか手に入れるのだ」
「な、なんと…それを皇帝は我々にお望みなのだな」
「そういうことだ。だが調べるように最初に命令を出されたのは皇帝だ。この事態を予見していたのか? つくづく恐ろしいお方だ」
「そして、それは今どこにあるのだ?」
「はっきりは分からない、だが、惑星トレドのクリスタルウォールの付近であることは間違いない、すぐに明らかになるだろう…」
「分かった…高速ステルス機を使って惑星への侵入の用意をすることにしよう…」
「それから連邦の上層部の妙な動きが別の方向から外部に漏れ、どうやら犯罪シンジケート『グリッド』も動き出したようだ。やつらは金になることなら何でもやる、やつらの動きにも注意してくれ」
「わかった、感謝する」
クロムハートはかすかにニヤリと笑うと、その場を離れて行った。別の思惑が彼の脳裏を横切ったようであった。
その日、トレドフェスティバルの会場にたくさんの搬入用のトラックが集まっていた。
この会場はクリスタルウォールの街の入り口近くにあるイベントホールと広場だ。総木材建築のイベントホールの中にはいろいろな機械や物資が運び込まれ夏祭りの用意が始められていた。トラックは積み荷を運ぶと次々に出て行き、また新しいトラックが急いで入ってくる。その中に、ちょっと疲れた小型のトレーラーが混ざっていた。冷凍食品などの保冷運搬車だ。だがその小型トレーラーは、実は未登録だったがの平気で真正面の検問からフェスティバル会場へと入って行ったのだ。駐車場に車を止めると、作業服の中年の男が近づいてきた。
「いやあ、無事に到着だ。御苦労さま」
「ああ、バックランドさんですね。それにしてもバックランドさんから頂いた連邦の本部の許可証は強力でしたね。急な搬入で事前登録もしてなかったし、ひやひやしていたんですが、あれを見せたら一発でスムーズに入れましたよ。ええっとじゃあ…」
するとバックランドと呼ばれた作業服の男は指示した。
「じゃあ運んできたイベント用の冷凍食品をホールの前に運んでくれ。そうしたらあとはおれが引き継ぐから」
2人の男たちは言われたとおり冷凍食品の箱をトレーラーから運び出した。すると作業服のバックランドは、冷凍用トレーラーの奥に一つのアタッシュケースがあることをしっかり確認し、外に出た。そして、トレーラーの超合金の扉を念入りに閉めた。
「…これでいい。少しでも隙間があるとセンサーに引っかかるからな」
そしてバックランドは近くに止めた自分の乗用車に乗り込むとシートを倒して横になり、眠っているふりをした。
その時2台の大型バスが入ってきて、イベントホールの裏口へとこっそりつけた。いったい誰が乗っているのか? 中を見ようにも隙間なくカーテンがかかっていて2台とも何も見えない。実はバスの1台目はイベントの目玉のひとつカナリヤ歌劇団の花形たちが、2台目には大人気のハンサム指揮者のチャールズ・デイビスをはじめとする楽団の演奏者が乗ってきたのだ。大騒ぎを避けて裏口に直接車ごと入ったのであるが、それが大きな誤解を生み、大変な騒動へと発展してしまうことになる。
2台のバスのおかしな様子を、裏口の物陰からこっそりうかがっている男がいた。サングラスをかけたやせ型の男でこっそり手の中に隠し持ったセンサーで裏口に入ってくる車を調べていた。
「今、バスのドアが開いて、人が降りたり、荷物を運んだりしていた時、確かにセンサーの反応があったのだが…。ここからは細かい部分が見えない…」
実は発掘物の石板などは二十万年以上保管ができるように特別の鉱石を含有した石を使っているのだが、それがセンサーに反応するのだ。男はついに反応が出たと仲間に伝え、動き出した。歌劇団員やオーケストラの人々は急いでイベントホールへと入って行った。
「はい、今裏口にこっそり入ったバスに石板反応がありました。石板はイベントホールに運ばれたようで…。え、帝国の高速ステルス機がトレド潜入に成功したらしいって。おお、くわばらくわばら、やつら容赦ないからな。まあ、この会場にその精神エネルギー端子とやらが来ているという情報は、うちの組織の極秘ネタだ。やつらはまだ知るわけがない。早く片付けておさらばだ」
しばらくして用意の整ったイベントホールでは、カナリヤ歌劇団の花形たちが夏祭り特別公演のリハーサルに臨んでいた。とにかく名場面集なので、場面転換をすばやく行わなくてはならない、繰り返し、綿密に打ち合わせていた。終了後イベントの進行係から話があった。
「…歌劇団のミュージカルコーナーは午前の部の一番最後になります。十一時十五分になったら、演奏者、指揮者とともにスタンバイを行います。十一時二十分ちょうどに共演予定の異星人館のみなさんがコーディネーターとともに直接舞台にやってきます。異星人の方たちは簡単な紹介と演奏が終わったら。すぐに引き上げ、それから後に、ミュージカル公演を約二十分ほど行います…」
今日はイベントを盛り上げるためが第一目的だが、その次に、次回公演の宣伝も行わなければならない。それで異星人たちにも短時間だが出演してもらうのだ。
歌劇団員たちは、リハーサルを終えると一度楽屋に戻り短い休憩に入った。イベントホールは開場時間となり、屋台やゲームコーナーのある隣の広場からたくさんの人々がイベントホールに詰め掛けた。サングラスの男はあらかじめ用意していた今日のイベントのチケットを取り出すと、つめかけた観客をざっと見まわした。手はず通り彼の仲間が何人か紛れ込んでいる。
やがて潜入した部下から連絡が入る。
「控室や楽屋には石板反応はまったくありませんでした」
「そうか…やはり舞台に持ち込んだか? では強行手段もやむを得まい。グリッドの潜入部隊の力を見せてやろう」
そしてサングラスの男は、他の観客にまぎれ、イベントホールの中へと歩いて行ったのだった。
いよいよイベントホールでの歌劇団の順番がきた。舞台のすぐ下にオーケストラの演奏者の仮説舞台が用意され、一斉に華やかなファンファーレが響き渡る。最初は、あの陽気なおじさん、パエゾ・パバロッティが出てきてお祝いの言葉を短く述べた。そして、オーケストラの生演奏が響き渡る中、舞台の大型スクリーンにレッドドラゴン遺跡とダークスネーク遺跡が映り、カナリヤ歌劇団の次回公演のテロップが流れる。
古代の石板や古代の戦士たちが使っていた反重力翼や雷の剣、炎の弓矢などのイメージ映像、さらに戦士たちが空を飛び超能力で戦うイメージ映像などが流れた。その本物さながらのリアルな映像に、度肝を抜かれる観衆、さらにイメージ映像そっくりの歌劇団の女優たちが戦士役も女官や姫たちも舞台に登場。セリフの掛け合いや簡単なアクションまでやってイベントホールを盛り上げる。そこでまさかの本物の異星人たちがコーディネーターのサチホに連れられて入場、不思議な楽器演奏を始めた。
すると精霊魔法師の紛争をしたサチホが楽しそうにしゃべりだす。
「こちらのウッドノーズ人のクラリネアさんは人間をはるかにしのぐ絶対音感を…」
普段とはまるで別人の流暢な解説が、止まらない、止まらない。
「なるほど、素敵な音色だ。おや、モーツァルトじゃないか!」
演奏の間にだれもが知っている有名な旋律を入れてくるクラリネアの粋なサービスであった。さらにジャズやポップスの演奏もつけたし、センスの良いところを見せてくれた。
「ダチョウ恐竜から進化したパットビューンさんはなんと時速七十キロで…」
「へぇー、道理ですらっとした長い脚だ」
嬉しくて調子に乗ったパットビューンは2、3歩助走をつけて舞台でジャンプした、するとざっと十メートル近く跳んだではないか、客席からは大拍手だ。
「ペンゴン人のウミタマ君は、たまごそっくりに変身…」
するとよちよち歩くウミタマ君がサチホのところまで来て、パッと飛び跳ねると、空中で卵に変身、それを優しくサチホが受け止めた。そしてまりを突くようなタマゴつきのパフォーマンス。ぴょこぴょこ飛び跳ねるウミタマを、掌で、あるいは指一本で、右に左にまりつき状態だ、2人の息の合った演技に会場はまた大拍手だ。終わった時の2人で見つめあってにこっと笑う光景も、なんとも微笑ましい。
異星人など、博物館でロボットを見るだけで、本物はめったにお目にかかれない、それが舞台にでてきてパフォーマンスを見せてくれるのだからみんな度肝を抜かれた。
するとパバロッティが、
「私たちは次回公演の詳細を異星人館で説明し、出演依頼をしたのです。運よく異星人たちととても親しい人がいてコーディネーターを引き受けてくださり、本番の講演ではさらにたくさんの異星人が希望して舞台に上がり、いろいろな役を演じます。お楽しみに!」
実は出演に一番乗り気だったガッツゴーンが、出発の時に体が大きすぎて観光用バスに乗れないことが判明、大騒ぎになったのだが、サチホがうまくとりなし、急きょ簡単なパフォーマンスを考案、見事に成功したのであった。
最後に、精霊魔法師の衣装をつけたサチホに導かれ、鼻が伸び縮みするムーバピアンカ、アルパカ竜人のパットビューン、そしてペンゴン人のウミタマの三人の異星人たちはきちんと整列してまたお辞儀だ。大きな拍手の中、異星人たちはサチホ、パエゾ・パバロッティとともに退場していき、一足先に異星人館の方にお帰りだ。一時幕が下りる。
それから本日の目玉プログラム、カナリヤ歌劇団の歌劇名場面集だ。全部で八つの名場面を、小気味のいいテンポで観客に見せて行くお楽しみ企画だ。今日は、その他大勢の合唱団の役になったセシルは、暗くなった舞台に入り、幕の内側で段に整列する。初めての満員の観客の前で歌うのでひどく緊張していた。
「ルビー組の子たちなんか初舞台なのに、楽しそうに生き生きしている。どうしよう…うまく歌えるかしら…?」
やがてブザーが鳴り、開演の場内アナウンスが流れた。いよいよ始まる。セシルは息をのんで幕の上がるのを待ったのである。
その頃ライアンとルドガーは、極秘で長官に呼び出されていた。でも今回いつもと何かが違う。基地の裏側からこっそり入るように指示されたのだ。やっと長官に会うと長官は厳しい表情でしゃべり始めた。
「今日これから話すことは君らと私だけの秘密だ。基地の職員の前でも何か知っているそぶりさえ見せてはならない。とにかく秘密厳守なのだよ」
「…我々のような下っ端にいったいどんな…」
すると長官はもう一度人払いをして、マルチモニター画面のスイッチを入れた。2人はすぐに何が起こったのか理解した。
この多島海の基地のすぐ脇、あのタイガウォナス河口のすぐそばに2つの反応が出ていた。ライアンはごくっと唾を飲んだ。
「ルドガー…この発信機のパターンは…あいつらだよな…」
するとルドガーもこわばった顔で答えた。
「あの巨大ガニじゃない…あのもっとずっとデカイ…巨大ワニだ」
さらに長官が続けた。
「だが、この基地のレーダー画像を見ると、ほらここ、さらにもうひとつの物体がこの2匹の巨大ワニの後ろに見える」
ライアンが食い入るように画面を見つめた。
「このレーダーの陰は同じ巨大ワニにまちがいない…しかもさらに大きい…」
長官が続けた。
「この3匹は、南の海から近付いてきて、この河口周辺で停止している…。このままではやつらが上陸するのも時間の問題だ。しかも、いまクリスタルウォールでは夏のお祭りフェスティバルだ。たくさんの市民がこの間の上陸地点のそばに大勢集結している、まだ距離はかなり遠い。このままやつらが引き返せば何でもないが、巨獣が来ているという情報が漏れただけでもパニックになるかもしれない」
「…今日はこれから曇りの予報だ…巨獣がフェスティバルの会場に出現する可能性も…?」
2人は顔を見合わせた。こんな時に、とんでもないことになってきた…。
やがて館内の照明が非常口を残してすべて消え、部隊も一瞬真っ暗になった。
ほんの短い間だったが、潜入部隊のメンバーが会場のあちらこちらで一斉に石板の反応を測定を行った。すぐにサングラスの男に潜入員の一人から連絡が入った。
「反応がありました…観客席の前方、舞台のすぐ下です…」
そして幕が徐々に上がる中、舞台は色とりどりの照明に照らされていく。もうセシルは緊張で息が止まりそうだった。でもいざ始まると、あのハンサムな芸術家、チャールズ・デイビスが指揮台に上がってきたではないか。そして情熱的なまなざしでみんなをぐるっと見回した。するとそれだけで心が熱くなってくるセシルであった。幼馴染で帝国で同じ苦労をして、こちらに来てからも阿吽の呼吸で、一体感や爽快感のあるルドガーのことも気になるけれど…この指揮者に会うとまた別の感情が湧きあがってくる。2人の間で心が揺れるセシルだった。
なんとか歌も歌い終わり、いよいよ女優たちが入場というタイミングでそれは起こった。
潜入した男たちは確かに発掘物の入っている箱を発見した。だがそれは歌劇団の「歌の心の箱」であった。今日は大事なイベントなので、舞台のすぐ下に運ばれていたのだ。中には確かにレッドドラゴン遺跡から発掘された石板が入っている。だがそれは先住民の歌詞や楽譜の記された石板で、精神エネルギー端子とはまったく違う。でもこれがその箱に違いないと踏んで、潜入部隊は、各出入り口や配電盤、監視カメラ、警備員のところへと司令通り動き始めた。サングラスの男は黒い携帯を取り出し、隠しボタンを押すと、カチャッカチャとあっという間に変形し重厚な銃へと姿を変えた。
「よし、行くぞ!」
サングラスの男はついに無線で決行の合図を出した。
「おれたちはプロの仕事屋だということをわからせてやる」
すべてはほぼ同時に起こった。警備員たちは強力な睡眠ガスで一瞬にして全員眠らされ、電源が切れて劇場は完全に真っ暗となり、監視カメラはもとから切断され、強力な妨害電波装置が持ち込まれ会場周辺はネットも電話もつながらなくなり、しかもタイミングが良かったので、観客は真っ暗になったのが何かの演出だと思い込み騒ぎ出さずにじっとしていた。その暗闇の中をサングラスの男が消音シューズで足音もなしに、サングラスの暗視ゴーグル機能を使って一直線に舞台の前に飛び出した。そして石板の入った木箱をさっとつかんで走り出そうとした。非常電源で照明の一部がともる十数秒の間に、すべては終わるはずだった。ところが突然合唱団の誰かが叫んだ。
「歌の心の箱を、あやしい男が持ち逃げしようとしてるわ!」
それは透視能力を持つ、エメラルド組リーダーのシャーロット・ミントンの声だった。サングラスの男は、この歌劇団が超能力者の集団だとは知っていたが、こんなすぐにばれるとは思っていなかった。
「ち、暗闇の中を透視できるやつがいるのか? だめだ、もう時間がない!」
サングラスの男は暗視ゴーグル機能を使い、出入り口のそばにいる仲間に合図を送ってさっと近づくと、ねらいを定めて木箱を投げたのだった。
「ば、ばかな!」
暗闇の中、なんと木箱は、空中で止まったまま動かなくなっていた。
「…わけがわからん。こうなったら仕方ない!」
男はそのまま身軽に舞台へと駆け上がった。
そして、非常電源が動き、会場が明るくなった。空中に浮いた箱はそのままゆっくり空中を滑るように動き、念動力を使っていたあのジェニーの元にとんで行った。
合唱団員たちはトパーズ組のテレパシーネットにより、速やかに舞台のそでに移動を始めていた。トパーズ組の上級生や新入生が生体バリアで武装し、ぱっとみんなを囲み、大きな混乱もなく、騒ぎは収まるかと思っていたが、その時悲鳴が聞こえ、観客がざわめきだした。少し明るくなった舞台に、2人の人影が転げるように躍り出た。
「おとなしく言うことを聞け、はむかうとこの女優さんの命はないぞ」
なんと花形女優、トパーズ組のリーダーのアンナ・フィッシャーに銃を突きつけながら、あのサングラスの男が出てきたのだ。
アンナは強力な生体バリアを持っているが、さすがに銃を突きつけられてはどうしようもない。高貴なるテレパスのリディアがつぶやいた。
「卑怯な人質作戦を取るところを見て確信したわ。あの男は、前にレッドドラゴン遺跡で研究員のリュックに怪物メカを仕込んだやつだわ」
トパーズのリーダー、あの電撃のテリー・クルーズがみんなに言った。
「仕方ないわ、みんなこの男の言うことを聞いて」
セシルやジェニー、トパーズ組の団員は仕方なく、武装を解いた。
「何も難しいことじゃない。あの木箱をそこにいるおれの仲間に渡してくれればいいだけさ。誰か一人でも喋ったり、妙な行動をしてみろ、こいつの命はない」
警備員は残らず眠らされ、電源は切れ、監視カメラも警報装置も動かず、外に出なければ携帯もつながらない。木箱はすぐに前に進み出た男の仲間に渡され、サングラスの男はアンナを連れて出口へとゆっくり歩き出したのだ。観客も一斉に出口へと押し寄せ、大パニック状態! 木箱はすぐにイベントホールの外へと運び出されていく。劇団員は、劇団の魂ともいえる歌の心の箱を持ち出され、全員が断腸の思いであった。だがその時アンナが引きずられながらも、「海風」という曲を歌いだしたのだ。
水平線の向こうを思い描き
船は真っ白な帆を上げる
海風を一杯に受けて
さあ、出航だ、仲間たちよ
すると、その声を聞いた合唱団の面々が、一緒に歌いだした。
大波が打ち寄せても
どくろの旗に襲われようと
嵐、怪物、幽霊船
われらはけっしてあきらめない
大海原を突き進む!
われらの旗とともに、仲間たちよ!
アンナの声に舞台の他の女優や合唱団の歌が加わり、さらにチャールズ・デイビスが指揮棒を手に立ち上がると、オーケストラが大海原を航海する雄大なパワーで加わったのだ。
サングラスの男は叫んだ。
「やめろ、その歌を。今すぐやめないと…うぐ!」
男が舞台に振り返ったその隙に、歌でパワーアップしたアンナの生体バリアが、そのままオーラの壁となって男に直撃した。男は吹っ飛び拳銃は転がった。さらに拳銃は念動力ですぐに部隊へと飛んで行った。
「くそ、もう一歩というところで…仕方ない…」
男が合図すると、あちこちに紛れ込んでいた仲間がたちあがり、野獣のような声をあげた。観客が悲鳴を上げて逃げ出した。こいつらは怪物に変身することのできるバイオロイドだったのだ。怪力で観客席を持ち上げて破壊するやつ、長い触角を鞭のように振り回すやつ、薄暗い劇場に戦慄が走った。
ライアンとルドガーはそんなこととも知らず、またマルチホバーで多島海の基地を飛び立っていた。今日はペンゴン人のウミタマはいない。基地からさほど遠くない海底に3匹の巨獣が潜んでいる。そのうち1匹は発信機がついていない大物だ。これからあちこち動き回るとレーダーによる捕捉が難しくなるので、新たに発信機を付けるために現場に向かうこととなったのだ。
崖や緑が混在する島があちらこちらに姿を現す、風光明美な多島海だが、今日は、巨獣が近づいたと警報が出されていた。観光船は急きょ運転を見合わせることとなり、漁船も強制的に港を出られなくなり、そのおかげで静まり返っていた。
「着いたぞ、あの二つの島の間の海底にやつらはいる」
巨獣がこれ以上街に近づけば、避難命令がでて、すべてのイベントも中止される。ライアンはマルチホバーを着水させ、海中用ドローンをすぐに発射した。
「意外と浅いところにいるみたいだぞ」
ルドガーが発信機の信号を追いかけ、巨獣へとドローンが迫って行く。ここ多島海は海中も起伏が激しくあちらこちらに大きな岩があり、その間を魚の群れが泳いでいく。
「おお!」
まず2人の目に飛び込んできたのは発信機を打ちこんだ、この間の巨大ワニ、ブラックソードとレッドソードであった。水中で獲物を待ちかまえるように2匹が並び、じっとしている。こいつらは喉元に餌袋のような海水袋があり、そこに吸い込んだ海水からも酸素を吸収できるらしく、何時間も潜ってられるという。
「…もう1匹はどこだ…またパクって噛み付かれるのはやだねえ」
ドローンをゆっくり回転させてじっくり探す。
「いたいた、こんな近くにいたのか…」
2匹の尾の先のの岩陰にその大物はいた。最初の2匹より警戒心が強いのか、うまく岩陰に隠れるように身を寄せている。ゆっくり近づく。ブラックソードとレッドソードの、その剣のような鋭い尻尾がゆらゆら揺れているそのすぐ上を進んでいく、これにやられたら真っ二つだ。ひやひやしながら2本の剣を通り過ぎ、大物に近づいて行く。どことなくごっつく、特に手足ががっしりしているように見える。トレドサンゴは頭や腕の方にも広がっている。とにかくでかい。ライアンが言った。
「パットビューンが言ってたけど、こいつらは死ぬまで少しずつ成長するらしい。あの最初の2匹もでかくて推定年齢が二百歳以上だろうって言っていたから、こいつはもっと長生きしているってことだよな」
ルドガーがさっそく発信機を打ちだす用意を始めた。
「じっとしている今のうちにとっとと発信機を付けちまおうか」
「そうだな」
2人は水上に着水しているマルチホバーの中で力を合わせ、狙いをつけた。
「3、2、1、ゴー!」
発信機の入ったジェル弾は見事に巨大ワニのわき腹のあたりにくっついた。だがそのあと、その大物が動き出した。
「な、なんだ、急に上昇しだしたぞ?」
「あわてるなルドガー、今度はどうもお食事の時間らしいぞ」
海面すれすれを巨大な黒いエイがゆっくりと泳いでいた。そのマンタのようなエイも3メートル以上はある大物だ。だが、巨大なワニはすうっと近づくと斜め下から、するどい牙が並ぶその口でバクっと噛み付いたのだった!
だが驚いたのはそのあとだった。巨大ワニはそのまま海上に首を出すと、その獲物を噛み砕き、飲み込んだのだが、斜め上に進んできたため、なんとマルチホバーのすぐ目と鼻の先に頭を突き出したのだ。その時の波でマルチホバーがゆらりと揺れた。その頭は4メートルいや5メートル近くあり、他の2匹と違って頭頂部までトレドサンゴがヘルメットのようにっびっしりついていたためまったくワニらしくなく、何か神話の怪物のようであった。口からはみ出した巨大エイはまだぴくぴく動いていた。この巨獣はサンゴのついた頭の形状からのちに「クラウンソード」と命名される。獲物を飲み込んだ後、その金色の巨大な瞳がこちらを瞬間見たような気がした。ライアンもルドガーも圧倒的な威圧感に動けなかった。巨獣は大きく息をすると、やがて元の岩陰へと戻り始めた。尾の先に伸びているあの長いひれが巨大な剣のように一瞬水上にそそり立ち、そしてゆっくり沈んで行った。3つの発信機はそのまま動かないようだった。
とりあえず発信機を漬け終わった2人は基地に戻った。長官室に戻って画面を再びチェックしたが、3匹はじっとしたままだった。このまま南の海に帰ってほしいが…いつ上陸してもおかしくない状態は続いていた。
劇場の騒ぎはどうにも決着が見えなかった。逃げる観客、怪物に変身したバイオロイドたちは舞台のすぐ下にと迫ってきていた。だが、ルビー組のリーダー、アンナは少しも動ぜず叫んだ。
「海の三部合唱よ!」
すると今の「海風」という歌に重ねてさらに「黄金の夕日」、「海の嵐」という歌が始まった。3つの歌はある時はフーガとなり、ある時は互いの伴奏となる。海風が湧きあがる力を与え、とろけるような黄金の夕日が輝くバリアとなり、嵐の大波が吹きわたる風が、ひらめく稲妻が、強い攻撃力を生み出していく。
歌の力によって防衛力だけでなく、攻撃力や集中力も上げていくすごい歌であった。
しかも舞台上には金色のオーラのバリアが出現し、バイオロイドの攻撃も受け付けない。そして、海の嵐の歌が合わさった瞬間に超能力も集中し、念動弾や念動力も一点に集中する。
「押し寄せる波、たたきつける雨、そしてとどろく稲妻!」
歌いながら進み出る男役のクラウディア・ロレンス。その力強い歌声とともに、その指先から強力な念動弾が、バイオロイドへと撃ち出される。セシルの貫くような念動弾が、テリーの電撃が、ジェニーの念動球が曲のうねりとともに会場に降り注ぐ!
「グォオオオ!」
1匹、また1匹、観客に襲いかかろうとするバイオロイドが1体ずつ倒れて行く。セシルはほかの少女たちと力を合わせて敵を打つ一体感をを感じ、興奮していた。
「くそ、これじゃあ逃げるどころか俺もやられちまう。そうだ、あの手だ」
サングラスの男は、最後の隠し武器、ナイフを取り出すと、まさかの場所に投げたのだった。
「う、ぐぐぐ?」
指揮棒が床に落ちた。オーケストラが途端にとまった。なんとサングラスの男は生体バリアのないチャールズ・デイビスの肩にナイフを投げて、指揮をできなくしてしまったのだ。血のにじむ指揮者の肩を見て、少女たちの悲鳴が起こる。
「ひ、卑怯な!」
少女たちの歌が、オーケストラが止まったその隙を逃さずにバイオロイドたちが、超能力のバリアを持たないオーケストラの演奏者たちに襲いかかってきたのだ。パニックになって、歌劇団も演奏者たちも総崩れになってしまうかと思われたその時、チャールズ・デイビスは治療も受けず、立ち上がった、そして、指揮棒を拾うと反対の手に持ち替えて叫んだ。
「おれはなんでもない、平気だ、曲を続けるのだ!」
立っているのもやっとの指揮者の気迫は、歌劇団とオーケストラを復活させた。アンナ・フィッシャーが叫んだ。
「オーケストラを守るのよ、みんな、お願い!」
合唱団は歌いながらオーケストラの人々のところへと降りて演奏者たちの間にたつと、すべてを生体バリアの内側に入れて怪物たちを跳ね返した。
「心を一つに、力を一つに!」
デイビスの言葉に、少女たちは立ち直り、透き通った声がさらに響き渡った。そして、「嵐」の三部合唱で、バイオロイドたちを次々に打倒して言った。
「すぐに引き上げろ、もう目的の者は手に入れた。さっさとおさらばだ」
指令の声に、バイオロイドたちは、変身を解きながら散り散りに逃げて行った。それを見届けると、指揮者のチャールズ・デイビスは達成感とともに倒れ込んだ、すぐにエメラルド組の癒しの超能力を持ったゾフィーたちが手当てに向かった。セシルはバイオロイドを力を合わせて倒し、ほっと一息ついた。みんながチャールズデイビスのおかげで逆転できたと彼を讃えていた。
「今、あの指揮でみんなの力が一つになって敵を倒した。今、確かに一体感があった。チャールズ・デイビスと一体感が…確かに…」
チャールズはそのあとすぐ病院に運ばれていったが、超能力の治療のおかげで、軽症で済んだ。
「…チャールズ・デイビス…」
セシルの心はまた大きく揺れたのだった…。
サングラスの男は騒ぎの間にまんまと抜けだし、外で仲間の自動車の迎えを待っていた。通りかかる人がほとんどいない倉庫の壁の内側に身を寄せて車を待っていた。するとすぐに足音が近づいてきた…
「おかしい、この場所に潜んだ時、周りに人の気配はなかったはずだが…。気付かれたか、まさか?」
するとその靴音は壁の向こう側で止まった。
「サングラスのお兄さん、私は歌劇団のシャーロット・ミントン、得意の千里眼や透視能力で、あなたがどこに隠れようとわかってしまうんです。ちなみに我が歌劇団は透視能力や千里眼能力の使えるメンバーだけで、十人以上いますよ。あなたたちの盗んだ石板は、私たち歌劇団の精神的な支柱となっているきわめて大事なものです。すぐに返しなさい。さもないと宇宙の果てまでもあなたたちを追い詰めるでしょう。では…」
靴音は遠ざかって行った。今まで素人に気配を気付かれることなどただの一度もなかった男は背筋がぞっとした。
「もうすぐ、サムの迎えが来る時間だ」
サムはグリッドの昔からの仲間で、抜け目のない小悪党だが、時間はいつもきっちり守る。サングラスの男は珍しくいやな予感を感じて、車を待っていた。そして12分の狂いもなく、迎えの車が倉庫の前に滑り込んできた。
「スコーピオンの兄貴、言いにくいんですがあの木箱に入っていたのは精神エネルギー端子とは別の石板でした。でも、調べたらあの石板もとんでもなく高く売れますがどうします?」
スコーピオンと呼ばれたサングラスの男はちょっと考えてサムに行った。
「まさか、あの木箱、歌劇団の石板はこの車にあるんじゃないだろうな」
「はは、まさか。打ち合わせ通りに隠してありますよ」
「あの石板は、すぐに歌劇団に帰せ。超能力の団体さんとこれ以上やり合うつもりはない…」
「そういうと思ってましたよ。兄貴はいつもおこぼれには決して手を出さない主義ですからね」
その時、空から何か大きな音が近づき、すぐ隣に在る今はまだ何も準備されていないスポーツ広場に大型のホバーが強制的に着陸してきた。
「な、なんだ? あれ、ありゃあ連邦本部の輸送機じゃねえか! しまった。なんでここを選んだのか謎だったんだ。ここなら広場がたくさんあるから…!」
さらにその時こっちの駐車場から突然無人のトレーラーが動きだしたではないか?
「くそ、まんまとやられた! やつらセンサー反応の出ない密閉された小型トレーラーを使い、見通しの悪いトラックの列に並べて、しかも警戒されないように無人で置いておいたのか? おい、サム、今から目的の物をちょっと取ってくる。あんまり遅かったらおれを置いてトンずらしろ」
「了解、兄貴!」
そうしているうちに、隣の広場に着陸した連邦の輸送機は、すぐに後ろのゲートを開いた。あの無人者を直接格納しようと言うのだ。スコーピオンは、駐車場のトラックの列に隠れる通路に差し掛かったあたりで、ささっと走ると忍者のようにトレーラーの後ろのステップに飛び乗り、何か道具をトレーラーの後ろの扉の鍵に押し当てた。トレーラーはだんだん速度を上げ、時々上下に揺れているが、男はまったく動じない。
すると鈍い爆発音がして、トレーラーの鍵が開いた。男は、トレーラーの後ろの扉を少しだけ開き、中に忍び込み、すぐにアタッシュケースを手に戻ってきた。そして出口のゲートバーの少し手前で減速したところで見計らって飛び降りた。そしてゲートバーに来ていたサムの車に飛び乗った。あっという間の出来事だった。
「このアタッシュケースに間違いない!」
発掘物のセンサーにも大きな反応があった。中を開けると一枚の石板とともに金属の輝きのある複雑なしかし美しいロッドのようなものがそこにあった。
「これほど美しいものだったのか。最高級の工芸品のようだ。これが精神エネルギー変換端子か…」
「いや、しかし早かったすね、兄貴」
「まあこの会場に運び込むならトラックとかトレーラーとか何かしらの車だと思って、いろいろなこじ開け道具を仕込んどいたのさ。役に立ってよかったよ」
ゲートバーが開き、道路に出たトレーラーは自動運転で隣の広場に直行、そのまま連邦本部の輸送機に入って行った。
連邦のホバー輸送機があっという間に飛び上がり、空のトレーラーを積んで高い空へと消えて行った。だが連邦の本部もこれで終わるはずもなかった。あのトレーラーが駐車場に着いた時出迎えた作業服の男、バックランドがちゃんと見張っていたのだ。
「犯罪シンジケートグリッドのメンバーか、やってくれるねえ。車を止めることなく空にして輸送機に運ばせるとはね。おれもトラックの陰で見落とすところだった。だがすぐに取り返す」
バックランドの車には追尾ミサイルランチャーから催眠ガス弾や自動車を瞬時にパンクさせるニードルガンまで装備してある。バックランドはしばらくスコーピオンの車を尾行し、監視カメラのないポイントまで追いかけて行った。
だがどうしたことだろう、サイレンの音が聞こえたかと思えば、いつの間にか警察の車が前方からやってきてスコーピオンの車はそのまま停車命令を出され、まさか降りてきた警察官につかまってしまったのだった。唖然とするスコーピオン。
警部らしき男が近づいてきて言った。
「シャーロット・ミントンという歌劇団の方から電話が入っていてね。さっきイベントホールで石板を奪おうと人質までとった犯人が車で逃亡していると。証拠はその石板のはいった木箱、君たちの車に石板の入った木箱が入っているとね」
心の中でスコーピオンはよかったと叫んだ。欲を出してこの車で運んでいたらアウトだった。
「警部、それはなにかの間違いです。どうぞお調べになってください。木箱などここにはありません」
「調べろ」
警部の声で部下の警官たちが一斉に動き出した。やれやれ、早くやり過ごしてトンずらだ…スコーピオンがそう思っていた時だった。
「警部、ありました。シャーロットさんの言っていた通りの木箱です」
「な、何だとう? そんなはずは…あれ、もしかしてサム、てめえ…」
するとサムが笑って頭を掻いた。
「…どうせ兄貴はいらないって言うと思って、つい自分の車に積み込んじまって…すみません」
「…!」
笑って済ます場面じゃないだろう…スコーピオンはかわいい手下の愚行にあきれはて、どなり散らす元気も消え果てていた。そして歌劇団関係には二度と関わらないと心に決めたのだった。
「警部、あやしいアタッシュケースもありますが?」
「警察署に持ち帰って徹底的に調査しろ!」
それを目撃して困り果てたのは、尾行していたバックランドだった。
「あのアタッシュケースに入った精神エネルギー端子が警察の手に渡るとは…軍にも政府にも秘密の物だ…なんでこんなことになったのか…」
事件は予期せぬ方向へと走り出したのだった。
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