第2話 超能力者部隊、カナリヤ歌劇団

 それから数日後。再びライアンはルドガーとセシルを今度はマルチホバーと呼ばれる小型偵察機に乗せて、開拓の中心地であるクリスタルウォールへと飛んでいた。ここ多島海には大河モナスが注ぎ込んでいるが、基地のすぐわきのこの川をさかのぼり、さらに支流伝いに行くと、上流の落ち着いた森林地帯にクリスタルウォールの街がある。ルドガーが珍しそうにあちこちを窺っていた。

「ライアン、この機体、マルチホバーとか言ってたけど、いろいろ変わってるなあ。特殊なヘリコプターってかんじかなあ? スピードも結構出るのかなあ。コクピットもまるで自動車と飛行機のあいのこみたいだし…」

「俺も下っ端の便利屋だけど、この機体も便利屋だよ。スピードはそこそこかな、でも空中に静止したり、物を運ぶ能力も高い。ズームカメラや集音マイク、センサーさらに救助用具やいろいろな分析機器を積み込んでいて、なんか困ったことがあると呼びだされるって機体なのさ」

「分析機器? …なるほどね」

 ルドガーはすでに新しく支給された連邦の戦闘スーツを身に着けていた。これからクリスタルウォールの基地に着いたら、実践テストもあるのだと言う。だが一方のセシルはまだスーツの支給もなく何か納得できないような不安げな様子であった。ここを出る時、基地のレイモンド長官からこんなことを言われたのだ。

「帝国の超能力部隊の訓練生だった君はトレドでもこちらの超能力者部隊を希望して、いろいろ書類も書いてもらった」

「はい、すんなりこちらの部隊に配属されるとは思ってはいないですが、できましたら…」

 すると長官は数枚の書類を出しながらこう続けた。

「おめでとう。こちらでもなかなか通ることの難しい書類審査だが、君はこちらの超能力者部隊の一次審査を突破した。合格だ。さっそくクリスタルウォールへ行ってくれ、健闘を祈る」

「はい、ありがとうございました。え? …え? 長官、これはいったいどういうことなのですか?」

 長官は何も答えず、意味ありげに笑うと去って行った。セシルはその書類を何度も読み返した…。自分はトレドの警備隊や超能力者部隊に入るつもりでいたのだが…書類にはこうあった。クリスタルウォールの森の劇場で最終オーディション、2年ぶりの実施、カナリヤ歌劇団の実技・面接の最終選考実施…。

 セシルはコクピットに座ったライアンの背中に話しかけた。

「歌劇団のオーディションってどういうことなのですか? 私にミュージカルでもやれって言うのですか?」

 思いがけないセシルの怒りにライアンはたじたじになりながらも答えた。

「そりゃあ、歌劇団だから…ミュージカルは毎年やってるよ。なかなかチケットもとれない、大人気の公演で…」

「エー? どういうことなんですか? この間の大きな芋虫のこともわからないけれど、この星の超能力部隊っていったいどうなっているんですか」

 セシルの気持ちもわからないではない。ライアンは自分のわかる範囲で説明を始めた。

「…セシルも超能力を持っているよね」

「はい、それを実戦に生かすための激しい特訓を帝国で受けてきました」

「では、君はなぜその能力を持つことができたのだろう。なぜこの星で生まれ、しかも若い女性に超能力者が多くいるのかを知っているかい?」

「いいえ…それは…」

「…この惑星トレドは、本格的に開拓が始まってからまだ約40年ほどしか経っていない。その40年近く前、開拓が始まったばかりのころ、緊張状態が続いていた帝国と連邦の間に事件が起こった。いわゆるドロイド暴走事件だ。細かいことは分からないが、帝国の歩兵ドロイドが、協定を破って連邦側の開拓地に侵攻した。その時、クリスタルウォールが破られて、この惑星トレドの未知のウイルスの感染事件が起きた。たくさんの連邦の市民が高熱を出し、たくさんの子どもが病院に運び込まれた」

「…そんなことがあったんですか…。私はなにも聞いていなかった…」

「そのうちウイルスやワクチンも研究されて、伝染病はついに克服された。でもその過程で感染した人間が、この星の生物の遺伝子を体に取り入れて、新しい力を得たことが分かってきた…。超能力遺伝子が発見されたんです」

「超能力遺伝子?」

「この惑星トレドが持つ遺伝子共有システムにより、生存に有益だった遺伝子は、ウイルスによって近縁種にどんどん拡散していたらしい。そしてウィルスの感染者の中から、超能力者が生まれた。そしてこの遺伝子は、男性や成人では発現しにくいものだった…。君もこの星に生まれて、たぶん子どもの頃に超能力遺伝子の洗礼を受けたのさ」

「…」

「ところが、テレパスや念動力等の力を持った少女たちは、周囲から気味悪がられたり、差別されるなどのいじめを受けることが多く、それも問題になっていた。そこで患者を多数抱える病院や修道院の院長でもあったテレサ先生が、悩める少女たちを集めて彼女たちに歌を通しての芸術活動や同時に超能力を使っての社会貢献を始めた。その中で彼女たちは悩みを打ち明け合い、励まし合いながら自分たちの能力をだんだん誇りに思えるようになった。いじめに遭っても、気持ち悪がられてもみんなで心をひとつにして歌を歌いあげることにより、明るい心を保ち、同時に戦争で荒廃しそうな人々の心を癒していった。開拓民戦争の時は逃亡者たちを千里眼や透視などさまざまな超能力で追い詰め、騎士団戦争の時は帝国の超能力軍団を退け、クリスタルウォールの街を守り抜いた。歌の力によって人々を癒し、自らの心をひとつにし、超能力で平和を守り抜いたのだ」

 ウィルスの集団感染によって偶然生まれた超能力少女たちを第一世代とすると、ワクチンが発明されてその過程で超能力を持つようになったのが、77年の騎士団戦争で活躍した第二世代の戦士たちだった。

 そしてセシルたち第三世代は、最初から超能力者として育成プログラムによって育てられた者から、遺伝子を受けながらもまったく普通に育てられた者までさまざまであった。ただ、この開拓惑星トレドの平和を守るという一点において集結したのが、歌劇団のメンバーなのであった。

 セシルはあまりの帝国との違いにとまどっているようだった。

「…私も自分の能力のことで悩んだことはけっこうあったわ…分かったわ、歌劇団のオーディション、まだぜんぜん納得はできないけれど…受けてみる…」

 ライアンはほっと息をつき、クリスタルウォールへとマルチホバーを向けたのだった。


 長い長い大河ウォナスを遡り、さらに支流に入ってしばらく行くと、美しい森林地帯に入る。どこまでも続く深い森や谷を越えると、やがて大きな空港が見えてくる

 いよいよ到着だ。マルチホバーは軍専用のヘリポートに静かに降り立った。

「よし、地上走行モードに切り替えだ」

 この機体は高速モードで長距離航行が可能なほか、ホバーモードでヘリコプターのように離着陸ができるほか、着陸すればコクピット部分が切り離され、そのまま地上を走る4人乗りの重力ホバーカーになるのだ。

 今度は一般の道路を重力ホバーカーで走り出す。重力ホバーカーは整備されていない開拓地の悪路でもほとんど揺れない、極めて静かな乗り物だ。

 空港ビルを横に走り出せば、フリーウェイへのジャンクション、政府公共施設が入った国会議事堂のわざと古風に建てた建築物がそびえ、その周りには市民の憩いの場所、せせらぎ公演が広がっている。深い森と川から引き込んだせせらぎの庭園がある美しい場所である。さらに進むといよいよ開拓地の入り口だ。

 クリスタルウォール…それはこの惑星トレドの連邦の歴史の始まりの場所にして、心のふるさと、そんな場所であった。未知の伝染病と戦っていた開拓の初期において、開拓民たちを守るために作られた、数え切れない大きな透明の壁だった。初期の開拓民は伝染病におびえながら、この巨大な温室のようなウォールの内側で暮らしていたのだ。伝染病を克服した現在ではもう必要はなかったが、まるで開拓のモニュメントのように、今もピカピカに磨き上げられた壁の一部が、街の入り口にいくつもそびえたっている。

 そのすぐ横にはイベント広場とイベントホール、広いスポーツ広場がある。すべて現地の木材で仕上げられた自然と調和した建築物で、コンサートやさまざまなイベント、特に夏祭りでもあるトレドフェスティバルの会場としても有名だ。

 そしてイベント広場からわざと古風な石造り風に造ったすべて一階建てのショッピング街、中央市場と続き、開拓民の居住区や農地へとつながって行く。

 このあたりは惑星トレドの中でも温帯に属する森林地帯で、もともと照葉林や落葉林が静かなたたずまいを見せている。クリスタルウォールを越えて、イベントホールを横に見ながら町の奥に進めば、緑と調和した開拓民の街が目の前に広がる。自然とうまく調和しながら建てられた観光客用のオートコテージ、きれいに区分けされた、農地や果樹園、初期の開拓民のオートハウスや、その後建てられた二階建ての集合住宅などに交じって、病院や大学、博物館などの大きな建物が見えてくる。でも建物の種類は多いが、どれも落ち着いた色調の二階建築物できちんと統一されている。ヨーロッパの古い街並みをイメージして計画され、建設されたのだそうだ。高層ビルは一つもない。また、街は、最新の科学を使って、上下水道から自然エネルギーの発電所、ごみのリサイクル施設まですべて完備しているのだが、そういった施設はすべて地下に隠され、まったく存在を感じさせない。緑に囲まれ落ち着いた田園風景は、まるで宇宙のかなただということを、遠い惑星にいることを忘れさせてくれる。

 重力ホバーカーが、ライアンたちを乗せて、さらに奥へと静かに進んで行く。

「ほう、赤レンガ造りの壁がある…開拓地には、珍しいね」

「…あれが修道院、奥の平屋の大きな建物が伝染病の流行の時に大活躍した付属の病院。あの当時は押し寄せる患者に対応しきれなくて、開拓民用のオートハウスをドンドンつなげてその周りを壁で囲い、廊下や屋根を後で造って今のような大きな平屋になったんだ。…今は別に大きな病院もできて、ここは歌劇団の団員の寮として使われている」

 修道院や病院の壁にある赤レンガは、修道女が殺風景なカプセルハウスを隠そうと、一つ一つつみあげたものだそうだ。

「あれ? あの建物は?」

 右側に大きな森があるのだが、その入り口近くに、全く開拓地だとも思えない、おしゃれな別荘のような二階建ての木造建築がぽつんと立っているのだ。つたのからまる壁、かわいい窓と、煙突が付いている。いったいなんだろう?

「ああ、あれがここのしゃべる動物たちとの交流のための建物、異星人館だよ」

「え…偉人館?」

「いや、異星人館さ。この惑星のしゃべる動物は、高い知能も持っているため、異星人類と呼ばれて厳重に保護されている。異星人類たちは貴重な野生動物でもあるので、自然の素材を使った、木製の特別な工法で交流の場も建てられたんだ」

 惑星のあちこちから異星人を運ぶために、専用の飛行艇の発着場まで完備している。

「異星人館? 宇宙人がたくさん住んでいるってこと?」

「ああ、いろんな種類がいるぞ。一度行ってみるといい、驚くぞ!」

 セシルは目をまん丸くして、その木造の建物をじっと見ていた。今日は、人影はないようだった。

「さあ、そろそろ到着だ」

 修道院や異星人館の隣には豊かな葡萄園とワインの醸造所があり、その奥にはこれも森と一体化したような大きな木造建築の劇場が姿を現す。オーディション会場の森の劇場だ。ライアンはここでセシルを降ろすと、健闘を祈り、ルドガーと軍の基地へと向かって行った。


「012番のセシルさんですね、こちらへどうぞ。」

 たくさんの人々の帰国に合わせてオーディションは華やかに開催されたようだった。会場には、16から20才くらいまでの若い女性がすでに何人も集まってきていた。踊りの稽古場などに使われる広いアリーナがオーディション会場だった。まずは面接だった。一人ずつ歌劇団の指導者、警備隊関係者などの面接官と話し、それから自分の得意な能力の実技試験の希望を告げる。セシルは言葉少なに面接を終えた。おもに自分の超能力が、格闘や銃撃戦で役立つこと、そのために帝国でトレーニングを積んできたことなどを話した。心の中では私はミュージカルなどはとてもできないと思っていたが、黙っていた。実技ではバーチャルゴーグルを使った銃撃戦の実践の測定を希望した。

「…いきなり実践テストか? 自信があるんだね。同時にセンサーで君の超能力の測定もします。いいね。ではスタート!」

 スタートの声がかかった瞬間、セシルの周りにオーラのような輝きが揺らめいた。これが超能力遺伝子の基本的な能力、生体バリアだ。これはこの惑星の進化した動物が持つ超能力で、危険時に発現し、体を怪我から守ってくれるのだ。セシルは訓練のたまもので、いつでもバリアを使うことができる…。またこのバリアを一点に集中して飛ばすことにより、特殊な弾丸、念動弾も打てるのだ。

 セシルのバーチャルゴーグルの視界には、だれもいない宇宙基地の映像が広がっていた。遠くから近付く足音。金属系の音だ、戦闘アンドロイドか? セシルはさっと物陰に身を隠し、相手を見極め、すかさず銃を撃つ。不気味なバイオロイドが吹っ飛ぶ。次に突然前方にある大きな金属のゲートが開く、中から戦闘アンドロイドが何人も飛び出してくる。一斉にこちらを狙って銃弾をぶっ放すが、セシルの生体バリアが弾をはじき返す。体を伏せて、一人、また一人と倒していく。

 審査員たちはモニターに映るバーチャル画面と、セシルの反応速度や的中率などのデータを凝視していた。軍の警備隊から来た面接官が思わずつぶやいた。

「ほう、スピード、反射速度、正確さ、どれをとってもA級だ。すぐに実戦に使えそうだ」

「生体バリアの強度、念動弾の威力も申し分ない」

 面接官の声が聞こえてくる…。そして終了、あとはほかの受験生が終わるまでの間静かに待機して、結果の発表を待つばかりだ。なんとこちらから何も言わなかったら、歌や演技のテストはなかった。良かった…。

 それにしてもいろいろな少女がいる。一体ここはどうなっているのだろう。本当に超能力者部隊なのだろうか? アデル・ロンドと呼ばれたおしとやかな少女は、歌を歌い出すと突然体はオーラに包まれ、5オクターブの透き通った声で、ミュージカルの一場面を再現して見せた。魂をゆさぶられるようなその声に、会場に居合わせた誰もが一瞬聞き惚れていた。超能力の測定器で見ると、歌うことによって生体バリアが強化される上に、テレパシーのレベルも上がると言うのだ。

「…ええ? テレパシー能力なんて私にはないですよ…」

 アデルの言葉に審査員は優しくこう言った。

「いくつかの超能力を併せ持っている人の方がどうやら多いみたいなんだ。ただ訓練しないと開花しない。君も歌劇団で頑張ればテレパシー能力もきっと使えるようになる。そういうことなんだ」

 遺跡の発掘物の進んだ科学から生まれた精神エネルギー測定器はある意味、本人より正確だ。どちらも合唱が得意だと言うアイリーンとメリルは、瓜二つの双子の姉妹であった。突然見たことのない楽譜を歌うように言われて、なんとぶっつけで見事な合唱をやってのけた。彼女たちは2人で歌いながら、強力な生体バリアを作り出すことができる。ほかにも治癒能力を持つゾフィーや、ダンスが得意な少女たちもいた。ジェニー・マクファーレンという少女の実技には、セシルも驚きを隠せなかった。ボールを使った新体操だったが、生体バリアを揺らめかせながら見事に演技をやり遂げた。しかも、空中に投げ上げたボールの軌道が変化し、ブーメランのように手元に戻ってきたり、静止させたり、高速回転したり、自由自在だった。セシルの目が光った。

「ジェニー、あの子かなりやるわ。演技している間も生体バリアが切れることがない。しかもそれと同時に、念動力で物体を自由に操る。あのボールが、ソードやボムだったとしたら…」

 するとジェニーは最後に手と手を合わせて集中した。するとその間に光の球が出現した。それは大きな念動弾、いや大きいから念動球と呼ぶべきか。そしてそれを空中に自在に飛ばして見せたのだった。

 …一人、不思議な子がいた。サチホという聞き慣れない名前だった。その子は面接で女性の審査員と深刻に話し合っていた。

「…じゃあ、あなたはこの星にいた時の記憶がまったくないの?」

「はい、なぜだか何も覚えていないんです…」

 彼女はまったく覚えていない自分のルーツを探して、たった一人で惑星に帰って来たというのだ。そして自分の母親が、昔歌劇団にいたという話を祖母から聞き、さっそく応募したというのだ。

「あなたはどんな超能力が得意なのかしら」

「植物や動物と話ができる…ですかねえ」

「困ったわねえ、どうやって調べればいいのかしら…」

 仕方なく、精神エネルギー測定器にかけてみる。するといくつものところで標準を上回っている。この子の潜在的なパワーは侮れないものがある。

しかたなく一人の面接官と建物の外に出て行った。しばらくして帰ってきた面接官は、他の面接官に興奮して喋っていた。

「院長先生の植物園に言ったんだけど…おどろいたわ…十一年間もこの星にいなかったっていうのに、独学で勉強していてこの星の植物や生物のことにすごく詳しいのよ…専門家はだしだわ。植物の心が読めるっていうのもまんざらうそではないみたいだしね。なんでもこの星を出るときに唯一持っていったのが、生物図鑑だったようよ…」

 また、リディア・グレースという高貴な感じの立ち居振る舞いをする落ち着いた少女は長い面接だけで、実技らしい実技はやっていないようであった。あとでわかったことだが、リディアは強力な通し能力やテレパシーを持っていて、面接官のポケットの中の持ちモノや考えていることなどをずばずば言い当てていたのだと言う。


 すべての実技が終わり、1時間ほどしてみんなは再び集められた。結果が出たのだ。

 するとテレサ院長先生が進み出て発表を始めた。

「このトレドのカナリヤ歌劇団には3つの組があります。1つ目は、超能力を使っての遺跡の調査や警備を中心に行うトパーズ組、2つ目は研究・実験を行うエメラルド組、そして3つ目は歌劇などの芸術活動を中心で行うルビー組です」

 それを聞いてセシルは少し安心した。ルビー組にならなければなんとかなりそうだった。

「では調査・警備を行うトパーズ組の合格者です。1人目セシル・ミルドレッド、2人目リディア・グレース、そしてジェニー・マクファーレン…以上、合格です。おめでとう」

 よかった…セシルは希望する組に合格だ。とりあえずこれでミュージカルはしなくていいと安心した。

 面接官の持ちモノや心の中を透視した高貴なるリディアも、トパーズ組に合格し、あの植物の心がわかるという不思議な少女、サチホもエメラルド組にゾフィーと一緒に合格していた…。

 ルビー組には、あの5オクターブの美声のアデル、ほかに、アイリーンとメリルの双子コンビも合格していた。

「…そういうわけで今年の最終合格者は32人中8人、レベルの高い年でした。合格者には帰りにこれからの暮らしについての連絡があります…。それから、本年度も年に一回の本公演を予定しています。すべての組は公演を目指し、それぞれに舞台の練習があります」

 え、やっぱり公演はあるんだ…セシルの表情が少しこわばった…。謎の超能力少女の歌劇団の今年度のオーディションは幕を閉じ、少女たちの新しい暮らしが始まろうとしていたのだった。

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