学校で投資の授業が始まった話

@taron_kouta

第1話

20XX年、学校で投資の授業が始まりました。

国の要請で投資について教えることになった4人の先生はそれぞれのやり方で子どもたちに教えることにしました。


1組の先生は教師歴30年の大ベテランで、地元の教育を支える公務員として堅実に生きてきました。先生は自分で投資の授業をすることにしました。

「いいかお前達、最近では株やFX、仮想通貨だの投資で一攫千金というような話があるがあんなものは全部ギャンブルだ。汗水垂らして働いて堅実に貯金をする。これこそが……」

20年後、1組の生徒達は未曾有のインフレに巻き込まれ少しだけ苦しい思いをしましたが、先生は年金で生活していたため無事でした。


2組の先生は教師歴20年の中堅でとても生徒思いの先生です。先生は投資を教えるならプロの人間が教えた方が良いと考え、証券会社に務める友人の野村君に講師を頼みました。野村君はタダで引き受けてくれる事になりました。

「みなさん、投資はプロに任せるのが一番です。そこで今日紹介するのは我社で人気の毎月分配型投資信託です。ぜひお父さんとお母さんに勧めてくださいね。なんとこれを買うと毎月購入金額の0.5%が配当として受け取れるんです。みなさん計算してみてください0.5%×12ヶ月×20年で120%。そう20年持てば必ず……」

20年後、2組の生徒達の両親の何人かは老後資金が足りず苦しい思いをしましたが、野村君は積立NISA採用のインデックス投資信託に投資していたため資産が倍になりました。


3組の先生は教師歴10年のまだまだ若手の先生です。先生は投資を教えるなら自分より詳しい人間が適任だと考え、投資について解説するYoutubeをやっている友人の中田君に講師を頼みました。中田君は大きな黒板が使えるならと快く引き受けてくれました。

「みなさん、投資なんてのは簡単です。上がる銘柄に投資すればいい。働くなんて馬鹿らしい。投資家こそが世の中を……」

20年後、3組の生徒達の同窓会は参加人数が少なかったようです。


4組の先生は教師歴1年のピチピチの新人の先生です。先生は資産の200%を株に突っ込むギャンブラーで、ペニー株こそが投資の醍醐味であると考える頭のネジが外れたやばいやつです。投資の素晴らしさを自分で教えることにしました。

「やあ、みんな今日は投資について教えるよ。これを見て。BNGOというティッカーの会社だ。先生も何をしている会社なのかは知らないけれどここ数ヶ月で株価が10倍になったんだ。こういうのを10バガーと……」

20年後、4組の先生は。先生だったものは深い海の底でドラム缶と一緒にコンクリートの布団で眠っています。

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