09話.[あともうひとつ]
「今日は逃しませんからねっ」
「あはは、捕まっちゃったー」
呼び出された場所に行ったら腕を掴まれてしまった。
私と関わってくれる人はこうするのが好きならしい。
「なに空気を読めてる私偉いみたいな雰囲気を出しながら帰っているんですか!」
「いやあ、だってあそこに残るのは空気を読めていない証でしょ?」
「いいんですよ、僕はあなたにお礼がしたかったというのにっ」
今日はやけにハイテンションだった。
春海と関係を戻せたことが影響しているのだろうか。
「まあまあ落ち着いて」
「あなたのせいですよっ」
「ほらほら、春海も連れてきたから」
「うっ、す、すみませんでした」
む、春海が来たからってすぐに落ち着くのはどうかと思うけど。
「春海、これからはちゃんと自分からも行かないとだめだよ?」
「うん、部活が終わるまで毎日校門のところで待ってる」
「「それはちょっと……」」
「そうしないと瑛くんが疲れちゃうから……」
「「いや、それでもちょっと……」」
これからどんどんと暗くなるまでの時間が早くなっていくわけだし、そうなると当然のように寒くなるわけで、彼女の彼氏である新妻くん的には嬉しいけど微妙な件だろう。
「というか、優が誘ってくれなかったらふたりきりで会っていたということだよね? 確かに最近のことで私のことは微妙に感じているのかもしれないけど、……こそこそと会ってほしくないなって」
「はぁ、自分から手放しておきながら今度はそんなことを言うんだね」
「優だって一輝が他の女の子と裏で会っていたら嫌でしょ?」
「まあ、そうかもね」
「でしょ?」
それでもやっぱり縛るつもりはないからなあ。
でも、実際にそういうことをしているってわかったら不安をぶつけてしまうかも。
「とりあえず行きましょう、このままではいつまで経ってもお礼ができませんっ」
「わかったわかった、春海、行こっ?」
「うんっ」
これでひとつの目的は達成。
あともうひとつ頑張らなければ。
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