第10話
子供は小さな鎌を握っている左腕を振り上げた後、ゆっくりと振り下ろした。
「─さっさとッ!」
ブレイドが遠くからボヤいた途端、悪魔に張り浮いた手の数だけ、巨大な鎌が四方八方悪魔を囲むように現れ、高速で回転する。
無数の鎌が回転しながら斬撃を繰り返す。
盛大に肉片と血液を周囲に撒き散らす。
「...」
ブレイドがいくら攻撃しようとも瞬く間に再生した状況とは打って変わり、悪魔はあっという間にただの肉片の積み重なりとなった。
「...フッ、後はあのちいせぇのが大人しく帰ってくれッ...ッ再生しているだと!?あれで効いてないのか?」
肉片はぐちゅぐちゅと音を立てながら、元の形に戻ろうとしていた。
肉片が
「─ッいや待て帰るな!!よく見ろ!!仕留めてねぇ!!!」
「ッお、おい!後ろッ─!」
「...」
「...」
ブレイドが叫び終えるまでに、すっかり元通りとなった悪魔が子供の腹に前足を付き刺し、雑に振り回す。
「ッチ...振り出しに戻った」
ブレイドの戦意は急速に低下していく。
子供を助けようともせず、傍観していた。
黒い霧は散開し、子供はなすがままに悪魔に振り回され、遊ばれていた。
「...ヘッ、あれでも少しは時間稼ぎになッ─「ちょっとッ!兵隊さん!?あなたなにやってるのかしらッ?!子供を見殺しにしてそれでも兵隊さんなの!?助けるわよ!」─ッ!?なんでガキがッ!!待て!止まれクソガキ!」
残りの魔力も少なく、戦意が低下して迫りくる死を漠然と待っていたブレイドは背後から少女の接近に気が付かなかった。
「...あっ、ごめんなさい。そこで休んでて!」
少女は、串刺しにされている子供を救おうとブレイドを通り過ぎ、悪魔へ向かった。
「そいつ助けても無駄なんだよ!...ックッソがァアア"ア"!!」
少女を見殺しにすることは彼の矜持が許さない。
「『爆破障壁』!!」
残り少ない魔力を振り絞り、自身の強化と少女へ保護魔法をかけながら、少女を追いかけた。
「ぅえ??あ、ありが「うるせぇ止まれえ!!」でもッ!子供ッ「!ッあれは子供じゃねぇ!いいからこっちに来い!」兵隊さん目が「黙れッ─クソッ─!!」!!」
少女に後少しまで迫ったところで、悪魔は少女に気が付き、ブレイドを上回る速度で前足に子供を刺したまま少女へ向かった。
「...えッ」「がぁあ゛あ゛あ゛─!!」
少女は急停止し、立ち
ブレイドは間に合わないことを悟りながらも疲労困憊の身体にムチを打って叫びながら少女に手を伸ばす。
だが、悪魔は既に少女の前で腹の裂け目を前足を使って大きく広げていた。
悪魔の腹から大量の臓物と共に血液が勢いよく噴出し、それが少女を覆った。
「!!「─あ゛あ゛あ゛!!...クソ...がぁぁ...」」
少女は反応することもできず、ブレイドは連戦続きのうえ、残り僅かだった魔力を想定外の用途で使い果たし、遂に意識を失った。
魔物のうめき声で騒がしかった平原が一瞬静まりかえる程の大きな破裂音が響き渡った。
遅れて衝撃波の様な突風が平原を駆け抜ける。
「──きゃああぁぁ!!...あ...れれ?...」
少女を覆っていた臓物は水風船を割ったかのように溶け落ちた。
「へ?」
少女の目の前に居た悪魔と入れ代わったかのように全身に血肉がこびり付いた大男が中腰の姿勢で胸の前に両腕を伸ばし、手を合わせていた。
「びー..ちゃん?」
「あれれ〜?!びーちゃんだよね!?追いかけてきてくれたの!?化け物は!?あ、そんな事より子どもは!兵隊さんも倒れてしまったの!今なんか変なのに覆われてほんとに危なかったんだからね!それで子供が怪我をしているの!急いで街まで運ばないと!!びーちゃん手伝って!!」
「...」
悪魔に串刺しされていた全身黒尽くめの子供は大量の血肉を被りうつ伏せで倒れたまま動かなかった。
「...」
「ッ...び、びーちゃん?...お〜い?もしも〜し」ツンツン
「普通に立てる?」
「...」
「こう、気を付けピッ!できる?」
─時を遡ること数分前─
「...」
...
...この間の嬢ちゃんが指さしてた方向とりあえず真っ直ぐ進んでみたが。
同じ方向に進んでる魔物が多いが。こういうもんなのか?進む方向一緒みたいだからいいか。
...
......
魔物の集団からそれたところに人が居るが、ん?この間の嬢ちゃんか?
追ってるのは嬢ちゃんの敵か?
まぁいい。
少し驚かしてやろう。...悪戯するこの気持ちは久しいな。
ここまで一緒に来てくれた魔物共、すまないが、邪魔だ。
爆発するように急加速した巨体は進行方向の魔物を全て圧殺し、辺りに血肉を撒き散らす。
あんまりびっくりさせてしまうと気絶してしまうかも知れん。笑顔も忘れずに...ねこだまし。フッ パチン
「...」
魔物のうめき声で騒がしかった平原が一瞬静まりかえる程の、何かが弾けるような大きな破裂音が響き渡った。
両手に挟まれ、豚の悪魔は良く熟れた果実を二枚の板で勢いよく挟み込んだように爆ぜた。
遅れて衝撃波の様な突風が平原を駆け抜ける。
そういえば、この間の嬢ちゃん顔も覚えてないけど、人違いだったら......まぁどうでもいいか。
「...」
「──!!...あ...れれ?...」
「へ?」
お〜びっくりしてる...フッフ、一人気絶してしまったか。
─そして現在に戻る─
「─しも〜し」ツンツン
......ん?なんだ?
「普通に立てる?」
「...」
......もう立ってるが。あれ?なんだったっけ?
「こう、気を付けピッ!できる?」
少女が背筋を伸ばし、両手両足を正して直立する。
「...」
...ふむ。驚かせたことに満足して、手を叩いたまま思考が停止してしまったようだ。
「早く子供と兵隊さん運ぶよ!」
「...」
ブレイドは意識を失っている。
「っもう!びーちゃん、急いでいくわよ!」
「...」
...あぁ...そう。
「ほら!早く動いて!足元の子供とそこの兵隊さん担いで!私が先導するから!」
「...」
子供?...どこに?それより、ねこだましで気絶するやつが兵隊さんやってていいのか?
兵隊の頭を片手で掴み、持ち上げ、肩に担ぐ。
「...」
くせーなこいつ。
「っちょと!ざつー!...あと足元の子供!」
...ん?
「...っもう!ほら行くよこっち!」
床に倒れて一切動かない子供を少女が背負って街方面を目指す。
「...」
...なんだ?まぁいいや。嬢ちゃんに付いけばいいんだろう。
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ここまで読んでくださり、誠にありがとうございます。
フォロー、応援してくださった方々、並びに★を頂き誠に感謝申し上げます。
引き続き、投稿頻度は遅いですが、何卒よろしくお願い申し上げます。
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