第4話









「これだけかい??あれほど騒いでいたからこぞって参加するものかと思っていたよ」

 第三王子は立候補者の少なさにあからさまに残念な表情しつつも観客を煽る。




「「「「「ッ......」」」」」

 観客の中には、苦虫を噛み潰したような表情で俯いている者もチラホラといる。



「ふっ、まぁいいかな。まずは舞台に上がった勇気ある若者5人に拍手と歓声を」



「「「「「「うぉおおおぉおおお!!!!」」」」」」



「さて、そこの君から手短に自己紹介してくれる?」




「はっ!遊撃隊バルカン第六階位シクス、スルでございます、サイ王子」

「右に同じく、ネゴです」


 遊撃隊バルカン。カボル王国では有事の際に標的に奇襲攻撃を仕掛けたり、奇襲攻撃等々に対し臨機応変に応戦、迎撃する戦闘能力高めの特殊部隊のことである。



「まじか!バルカン…」

「う〜ん誰に賭け…」

「バルカンねぇ〜…」

「魔法無しだからなぁ…」

「バルカンはバルカンでも下っ端かぁ…」

 観客は思い思いに出場者を評価しながら楽しんでいる。



「冒険者・第七階位セブン、サンザだ」

「冒険者・第七階位セブン、ロマンス」

 

 冒険者。街道に出没する魔物の間引き、各地に点在する迷宮で食料調達、魔獣狩り、秘宝探索、迷宮の果てを調査して生計を立てている者たちのことを言う。



「冒険者か…」

「魔物狩り専門だろ?対人戦やれんの…」

「アレももはや魔物みたいなもん…」




追跡隊ヘルハウンド第六階位シクス、ダガです、サイ王子」

 

 追跡隊ヘルハウンド。主に犯罪組織の追跡、調査、監視を専門とする特殊部隊であり、個性に富んだ魔術を扱える者が多い。

 また、小柄で俊敏、しなやかさ、柔軟性に富む女性が追跡隊ヘルハウンドに向いているとされており、女性率が高い部隊編成になっている事が多いが、活動内容等々公表されておらず、謎が多い部隊でもあり、一部の者しか面が割れていない。カボル王国の男性陣に絶大な人気を誇る特殊部隊の一つ。


「「「ヘルハウンドォォォォォォォォォォ!!!!」」」

「ヘルハウンドォォォ!!いいッ!!…」

「いいい!!!いいいぞぉぉおうう!!…」

「ダガちゃーん!!がんばってー!…」

「「「「「「ダァガッ!ダァガッ!ダァガッ!…」」」」」」

 此処一番に声を張り上げ、大盛上げる男性観客達。




「...さて、自己紹介も済んだし、ルールは簡単。一対一。殺害は禁止。魔法の使用禁止ならびに魔導衣テンペストを解除した状態で彼、"箱入王"を戦闘不能または降参させること。これは正式な試合では無い。命の危険を感じたら魔法使用していいけど、その時点で負けだよ」

 数十年前に闘技場に参戦した少年は、今や闘技場の中では敵無しの無敗の男だが、魔法が使えない闘技場の中だけの王者。

 故に箱入王と呼ばれ、馬鹿にする者が多い。




「───ま゛にあ゛っだァ!!ジャアアアマスルぜええいッ!!俺も混ぜてくれえィ!!戦争屋ウォーカー・ホリック第六階位シクスゾゴマだ。よろしくなぁ!箱入ィィ!!因みに俺が勝っても第3近衛隊トレスには入らんぞ」

 空から野太い叫び声が聞こえた途端、筋骨隆々の立派な体躯をした大男が闘技場の舞台に堕ちてきた。

 着地の衝撃で闘技場の石床が割れる。


 戦争屋ウォーカー・ホリック。魔族領への侵略及び防衛を生業とする戦闘狂集団。



「「「「「!!ウォオオォォォオ〜!!!」」」」」

 歓声に包まれる闘技場。



「やばっ!戦争屋ウォーカー・ホリックだ!!…」

「やべぇのきたああ!!…」

「ガタイはほぼ互角…」

「ゾゴマだ...と…」

「なるほど〜、魔法禁止ならいい勝負じ…」

「これは勝った!!…」

「ゾゴマやつを再起不能にしろぉぉ!!…」




「まぁいい。箱入王聞いてたよね?これから目の前の6人と戦闘をしてもらうよ」

 第三王子は箱入王に体を向き直し、語りかける。




「......」


......



「(やはり反応無しか)...はぁ...スゴクク・サイ・カルボ・オーの名において箱入王へ命令オーダー──」

 第三王子は右腕を前へ出し、足元と腕に蒼色の魔法陣が浮かび上がる。



「え゛ッ...命令オーダーかよ…」

「え!?箱入が拒否したってことよ…」

流石さすがに勝てる見込みが無かったか?戦争屋ウォーカー・ホリックいるし…」

「でもアイツしょっちゅう命令オーダーされてるか…」

「王族の指示を拒否するとかありえ…」




「──私を除いて舞台に立っている6名を無力化しろ。正し、一対一で尚かつ殺害は禁止とする」




............ぁ?

なんだこのいかにもボンボンなやつは。急に腕に触んな。今いい感じに意識を失っていたというのに。




...コイツらいつから居た?




「......」


舞台上に7人。




.........あぁ、バトルロイヤル。今日はハズレだな。




終わったものかと思ってぼーっとしてた。




「.........」


「(反応は無いけど命令オーダーは完璧。問題無い)...面倒だから、万が一、死亡しても責任取らないから。引き際よく考えてね。じゃあ、自己紹介順ではじめる。試合開始!」



......早く糞して寝たい。




「最初に当たるのが私からだなんて、君、運が悪いね。遊撃隊バルカン第六階位シクス、ス─」



揃いも揃って弱そうだな。









───────────────────


ここまでお読みいただきしていただき、ありがとうございます。


更新頻度も展開もゆっくりですが、

応援、コメントをいただけると幸いです。

よろしくお願い致します。

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