に 「ベッドの上」

朝が来てしまった。

こんなに来て欲しくない朝は初めてだ。

そのうえ尿意までもよおしてきた。

どうしよう、と思うが、ベッドから降りようとは到底思えない。

だってあいつが、ベッドの下にいるのだ。


昨日の夜、見てしまった。

寝る前に外したベレッタが床に落ちてしまい、それを拾おうとした瞬間、ベッドの下からすごい速さで伸びて来た腕がそれを拾ってまたすごい速さで引っ込んでいくのを。

一瞬頭が混乱した。

変質者、警察、と思ったが、あり得るはずがない。

だってこのベッドの下に隙間はない。下は収納スペースの引き出しがついているのだから。

それを理解した瞬間、一目散に逃げだしたかった。

でもそれは出来なかった。

何故かって?

だって床に足を付いた瞬間、あの腕が、今度は私の足を掴んで引きずり込むかもしれないじゃないか。


だから私はこうやって、恐怖のあまり一睡もできないしベッドから降りられないでいる。

床に降りたら、私はどうなってしまうんだろう。

ここだけが安全地帯なのだ。


ああ、どうしよう。

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