第18話 大地の玉、争奪戦Ⅳ

「この俺が負けるか!!」


 バロガンはそう言うとさらに魔力を込めて、デストロイ・ライトニングフラッシュのパワーを底上げした。


「なに!?」


 クルーデスのアビス・ダークフラッシュがみるみる押されていく。


「まだ足りんか! くれてやる!」


 バロガンはニヤリと笑みを浮かべたそのときだった。魔力はさらに膨張し、そのままクルーデスに魔法が直撃。


 直撃した瞬間、太陽のような眩い光が大地に降り注ぎ、響き渡る轟音は雲を揺るがしているかのよう。徐々に上がる茸雲は次第に空を覆う。


「これで生きていたらなかなかの化け物だがな――」


 衣服が破れ、褐色の素肌を晒しているクルーデスはそのまま地面へと落ちてきた。


 同時に四つの魔力を感じたバロガンは上を見上げた。


「やっぱり蒼雷だったか」


 蒼雷、玲、夜炎、雪菜は空から飛び降りてきた。そして彼がいたであろう空は飛行船が通過して行く。


「お前たち飛行船から飛び降りてきたのか」


「そうですよ! それにしてもさっきのデストロイ・ライトニングフラッシュえげつなかったですね。もうちょっと手加減してもよかったのに」


 蒼雷がバロガンに向かって話をしているのが、三人のなかでは違和感しかなかった。特に、玲と雪菜はナチュラルにビビっているようで、馬鹿デカい魔力に葬られた、倒れたクルーデスに視線を向けたり、バロガンに戻したり、見るからに不自然な行動を取っていた。


「で、何しにきたんだ蒼雷。それにまあまあ大きい魔力を持った奴等を連れてきたじゃないか」


「属性玉を探しに来たんですよ。それに、もう 闇の支配者ダークルーラー来ていますよね?」


「ああ――デカい魔力を持ったのが他に四人いたな。残りは雑魚だったが」


「成程。バロガンさんもついてきてください。五人で一緒に森へ入りましょう」


 蒼雷がバロガンの腕を引っ張り、森の中へ入ろうとしたその時だった。


 玲と雪菜が「えっ――」と声を漏らしていた。


 二人は、顔を青ざめながら口元を覆っている。その視線の先には、全身から流血をさせながらゆらゆらと歩くクルーデスの姿が。


「また心音が上がってきたな。奴は不死身か」


 夜炎は見えていないものの、どういう状況なのかはすぐに理解できる。降り立った時にはあれほど心音が小さかったのに、徐々に上がっていく。


「いい技だったぞバロガン・パウワ」


「お前マジか」


 バロガンはそう言って、額から汗が流れ始める。


 玲と雪菜は、流石の 七色の雷操者アルレーズのバロガン・パウワといえど少し怖気づいた――と思ったが。


「パウワさん。もしかしてワクワクしていますか?」


 夜炎がそう言うと、バロガンは怪訝な表情を浮かべながら夜炎を見る。


「なんで分かったんだ?」


「俺は普段、炎神の瞳ディスティハーダアイのハンデで、目が見えないのです。なので、訓練をしているうちに、異常聴覚を会得し、心音や脈の音まで聞こえるのです」


「蒼雷――お前、面白い友達できたな!」


 バロガンはそう言って蒼雷の背中をポンと叩くと、蒼雷は「いてっ」と言いながら躓く。


「もうちょい加減をしてくださいよ。それに敵さん置いてけぼりにしているし」


 蒼雷はそう言いながらクルーデスを指す。大分落ち着いてきたのか、荒かった呼吸が整ってきている。しかし、バロガンに焦る様子は無い。


「来るなら来い」


「いいだろう。本気を見せてあげよう。俺の本当の力を知る者は闇の支配者ダークルーラーにも少ない。でなければ俺の序列がNO.6イルービなわけ無かろう」


「数字が若いほど強いってことでいいんだよな? レイゾンとザギロスのNO.は?」


「レイゾンが 2ルサンで ザギロスが4ジェンだ」


「なるほど。しかし、あの二人ならそのNO.が妥当ではあると思うが」


「包帯を取れば分かるさ」


 クルーデスはそう言って顔の包帯を取り始めた。


 その正体が気になり、蒼雷、玲、雪菜は思わず固唾を飲む。


 俯きながらゆっくりと剝がれていく包帯――。


 全ての包帯が取れるとクルーデスの素顔を露わになると、玲と雪菜の顔を蒼白になっていく。


 蒼雷も「マジか――」と声を漏らす。


 無理も無い。クルーデスの素顔は、頭部に毛は無く、削げ落ちた鼻。そして薄い青色の目は、光の無い黄色の目に変色した。


「醜き顔と引き換えに、悪魔の力を一部を我に与え給え。発動、悪魔の顔イビルマスク


「おいおい、能力って聖霊と契約を交わして発動するじゃなかったのか? あいつ、聖霊の名前を出していないぞ」


 蒼雷の発言にバロガンも頷く。


「確かに――」


 クルーデスはその詠唱と共にみるみる大きくなっていく。200cm以上あった体は、600cmを越え、魔力も先程とは比較にならない程増幅した。


 魔力の嵐が土煙を巻き上げながら、石礫いしつぶてを飛ばす。禍々しい邪気で空気が一気に冷えたようだ。


「なかなかの魔力量だな。楽しめそうだ。蒼雷、ここ俺に任せてくれ、というか邪魔になる」


「もっと暴れるんですね」


「そうだ」


 バロガンのドスの利いた低い声が迫力が増す。


 蒼雷が森の中へ駆け込むと、夜炎、玲、雪菜も続く。それを確認したバロガンは首を左右に振って鳴らした後、右手でターバンを取った。


 朱色の髪の毛をオールバックにしているバロガンは口角を吊り上げてクルーデスを見上げた。



 





















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