第16話 大地の玉、争奪戦Ⅱ
「いくぞ! アドラー!」
「はい!」
すると、バロガンとアドラーは拳を突き出す。
「あ?」
と、ザギロスは声を漏らしたが、何が起きたかは瞬時に判明した、まだ誰もいないはずのところに突き出された二人の拳は、嵐のような突風を生み出した。
四人は一度後ろに吹き飛ばされたが、
「逃げろ!」
レイゾンがそう言ったと同時に、バロガンの突きで地割れを起こす。
「これでも手加減だがな。次はちと力を入れるぞ?」
バロガンはそう言うと、
「ちっ! ダークフラッシュ!」
ザギロスの掌から高圧のエネルギー波が発射。
そこにアドラーが横跳びで乱入し、右腕のみで
数十センチの幅の地割れは、
そこの前に悠然と立ち構えるのはクルーデスだった。
クルーデスが深呼吸したと同時に、レイゾン、ザギロス、ルビー、時雨は両耳を塞ぐ。
「らああああああああ!!!」
その怒号は、先程岩山を破壊した時のバロガンの声量と同等で、獣の雄叫びのように森全体に響く。その声を聞いた森の中にいた鳥類達が飛び立っていくのが確認できた。しかし、驚くべきところはそこではない。
横跳びで地面に両肘をついていたアドラーは、右方向にいる
「あのデカいオジサン――気合だけでダークフラッシュをかき消した――」
「ほう。面白じゃないか」
「少し本意ではないがコイツをお見舞いしてやる。ルビー準備はいいか!?」
「うるさいわね。いつでもOKよ」
ルビー返答にザギロスは満足気に笑みを浮かべた。
「喰らえ、グラビティワールド」
ザギロスがそう言い放ったと同時に、体の全てが重く感じる。当然、アドラーは立つことを許されない。バロガンは一瞬の突きをつかれ、クルーデスに身動きを抑えられた。
どういう
「そうか――あのルビーという女が、雑魚共にも魔法をかけて、自由にこの重力空間を動けるようにしたんだな」
「そういう事だ」
クルーデスがそう頷くと、バロガンは「そうかよ」と言った後、口を大きく開く。
「!?」
刹那、バロガンの口からは、耳をつんざくような轟音と共に、赤い雷光が放たれた。
クルーデスは咄嗟に下へ屈んだが、緩んだ力が仇となった。バロガンはクルーデスの顔を蹴り上げる。
上空に吹き飛ばされたクルーデスは数十メートル程吹き飛ばされた後、
「化け物め。顔に
そう言いながら、クルーデスは口元の血を拭う。
同時に、ザギロスの放ったグラビティワールドは解除されたようで、アドラーは普通に立つことを許された。
「さあ来い。俺をもっと楽しませろ!」
バロガンが子供のように生き生きしているところを初めて見るアドラー。以前、アルガロスがこのパルテナの森に訪れたとき、家にあるテラスで三人で食事をした。アドラーの能力に、子供のように感心を抱いていたのが印象的だが、それよりも印象に残っている会話がある。バロガンは普段は温厚で優しい心の持ち主だが、戦いが楽しくなると
「うわあ。めちゃくちゃ楽しそうじゃん」
「アドラー
「了解!」
アドラーはそう言って、魔力を抑えつつパルテナの森に入っていった。
それを見ていたクルーデスは思わず声を漏らした。
「素晴らしいな。あの年齢で魔力をあそこまで抑え込むことができるのか」
「そうだろう? 自慢の弟子だ」
「だろうな。さて続きをやろうか。少し気を抜き過ぎた」
クルーデスは右の掌に邪悪な魔力を集中させる。
「ほう。なかなかいい魔力が集中しているな」
クルーデスが集中させている魔力からは、ただならぬパワーを感じ取れる。放出される攻撃魔法は、100%闇魔法だと断言できる。パルテナの森の地形が変わるほどの、パワーが凝縮されているので、避けることはできない。
バロガンが「来い」と小さい声で呟くと、クルーデスはまるで聞こえていたかのように魔法を放つ。
「アビス・ダークフラッシュ!」
「ダークフラッシュの上位互換か!」
バロガンはそう言った後、右の掌を向けた。
「デストロイ・ライトニングフラッシュ!」
バロガンが放った、数メートルの横幅がある赤い雷光と、クルーデスが放った、バロガンと似た大きさを持つ、赤みを帯びた闇のエネルギー派が衝突した。
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