第12話 意外な来訪者

「疲れた――」


 玲はそう声を漏らすと、蒼雷はそうだなと頷いた。


 あの後しばらく駿聖の特別授業は続き、玲、夜炎、雪菜はこっぴどくいじめられた。学校を出た頃には、辺りはすっかり暗くなり、街灯が点在する帰路についていた。


「これが明日も続くのか」


「ちょっと老けたな」


「え、酷い」


 蒼雷の毒に玲はすかさずツッコミを入れた。蒼雷にそうコメントされるレベルに、玲の目は疲れ切っている。


「ああ――駄目だ。蒼雷さん蒼雷さん、おんぶしてください」


「しゃあねえな」


 蒼雷はそう言いながら呟くと、屈んで背中を玲に差し出す。玲は遠慮なく蒼雷の背中に乗る。蒼雷は玲を担ぐとゆっくり歩きだした。


「なんかまた大きくなったね」


 玲はそう呟きながら満足気に笑みを浮かべると、蒼雷の背中を左手でゆっくり撫でる。


「まあ、筋トレしているからな。魔法をロクに使えないのじゃ、やることは限られている。それらを地道にこなすだけだ」


「そうか――でも、もし能力が自由に使えるようになれば無敵なんじゃない?」


「かもな。でも世界は広いから実際のところわからねえ。やっぱり俺が戦ったなかで一番強かったのは破壊帝ジェラ

だけど、それより恐ろしく強い敵がいるかもしれないしな」


「破壊帝より強い人って一体誰だろう――」


 玲は少し悩んでみたのものの思い浮かばなかった。


「まあ、可能性があるのは魔神ハデスだわな。正直に言うと未知の存在だから戦いたくないのが本音だな」


「怖いの?」


「正直言うとそうだな。だって神だぜ? 俺の能力もなんだけど神の瞳ゴッドアイっていう能力だけど、あらゆる恩恵が得られるんだ。熱感知眼サーモアイっていう暗闇の中でも生物の熱で判別できる目や、記憶眼メモリーアイという能力もあって、一度見たモノを一瞬で記憶することができる。ロードゲート先生曰く、他にも能力があるらしいんだけど」


「え、多くない? ちょっと待って、神の能力を持つ者ゴッドホルダーのお父さんも能力いっぱいあるの?」


「そらそうだろ。だからある程度ハンデがるんだよな。特に目にアイ系の能力に関しては全ての能力のなかで突出しているからな。だから不知火も普段は目が見えない。けれどもそのハンデの裏側には、能力を開拓できていないという事実があり、自分を高めていくことで、ハンデを凌駕する恩恵を感じることができるんじゃないかなって思っている」


「今でも十分恩恵あるような気がするけど」


「確かにな」


 蒼雷はそう言って笑みを浮かべたあとに続けた。


「正義と悪は常に境目。俺が正義だと思っていても、対峙している相手からすれば俺はただの悪。だって多かれ少なかれ俺も命を奪ったことがあるからな。だから自分の信念を貫き通しつつ、誇りを持って戦わなければならない。俺は奪った命以上に、助けられる命を増やしたい。だから強くなりたい。それだけなのさ」


 その言葉に呆気をとられ、目を丸くする玲。数秒経った後口を開いた。


「――蒼雷って時々凄いこと言うよね。とても同い年の考え方とは思えない。それも人生経験というか、七色の操雷者アルレーズだからこそなのかな?」


「どうだろう。単純にこの歳ながら色々な人と戦ったなかで、葛藤して理解をしようとして生まれた考え方なんだと思う」


「そうかーー蒼雷はいつの日か平和な世界が訪れると思う?」


「平和ってのは無理じゃないのかなー―誰かが苦しみ誰かが豊かになるのは、どう転がっても覆すことができない。けれども、今より明るい社会にすることは、俺にでもできるんじゃないかなって思ってる。それこそ俺の使命のような気がするんだ」


「作れるといいね」


「そうだな。さあもう着くぞ――降り」


「どうしたの?」


 蒼雷は玲の家の前にいる人物に拍子抜けさせられた。


「先生がいる」


 玲は「えっ?」と声を漏らしつつ、蒼雷の後ろからひょこりと顔を出し、その人物を確認した後、蒼雷から降りた。


「ロードゲート先生。どうしたんですか?」


 蒼雷の問いにロードゲートは軽く手を挙げて会釈した。


「急にけしかけて悪いの。実は蒼雷君に急用があってじゃな。早速じゃがワシについてきてくれんかの?」


「先生が来るって相当急用だからいいですけど――」


「玲君。悪いが蒼雷君を借りるぞ?」


「はい! 蒼雷気を付けてね!」


「あいよ!」


「あまり時間もかけてられんし。蒼雷君、ワシの腕に掴まってくれかの?」


 蒼雷はその要望でロードゲートの次の行動が読めた。そして、蒼雷がロードゲートの腕に掴まると、二人はこの場から姿を消した。


「すご――。校長先生転移魔法テレポートも使えるんだ――」

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