第9話 魔王の私が……

 第9話 魔王の私が…… 『六歳』

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 木の成長速度というのは、侮れないものだ。

 ついこの間、焼け野原になってしまったというのに、芽を出し枝を伸ばし確実に緑を取り戻しつつある。


「く、なんて神聖な場所なんだ。魔王の私が……」


「何が魔王だ。スギ花粉にやられる魔王なんかいるかっての」


 こいつはドリス。

 昔からたまに遊ぶ幼馴染のようなやつで、今俺の世話をしてくれてる爺さんのお孫さんだ。


 一応魔王の血は継いでいるらしいが、こいつが魔王になれるとはとても思えない。

 おっちょこちょいで、弱虫で……

 この前までは平気だったのに最近発症したのか、森に入ると勝手にダメージを受けてる。


 花粉症の魔王とか、ちょっと想像できない。


「いや、絶対これスギ花粉じゃないもん。それに、私とっくに魔王に内定してるんだからね。歴代最強の魔王になるんじゃないかって、もっぱらのうわさなんだから」


「中二病乙」


「何よ、それ!!」


 少し前までたまに遊ぶ程度だったのに、あれから頻繁に絡んでくるようになった。

 そんなもの、求めていないのに。


 花粉症の中森に入ってくるなんて、何がそこまでこいつを動かすのだろう。

 言っちゃなんだが、ありふれた出来事だ。

 俺は不幸な子供ではあるが、どこにでもいる程度の不幸な子供だ。


 何が彼女を……


「ドリス。そんなに気にかけてもらわなくても、俺は平気だぞ」


「……」


「ドリス?」


 あれ?

 返事がない。


 ついにあきれられて、帰ってしまったのだろうか?

 でも、それでいい。

 俺にはお似合い……


「ドリス!?」


 振り返ると、ドリスが倒れ伏していた。


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 ーー次話予告ーー

『第10話 森と命』

 明日更新

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