第6話 一人前の男
第6話 一人前の男 『十七歳』
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やっぱりここは落ち着く。
木々から零れ落ちる光、緩く流れる風、新鮮できれいな空気。
あの頃の記憶を思い起こさせてくれて、あの光景を癒してくれる。
「メレテ様お帰りなさいませ」
「おお、立派に育ってるなぁ」
妖精というのは、人なんかよりよっぽど成長が早くしっかりした存在だ。
いや、しっかりしたというのは俺に比べてか。
普通の人は、妖精と同じようにしっかりしているのかもしれない。
「えへへ、メレテ様のおかげです」
「よし、」
山が、街が真っ赤に染まってから10数年。
もうそろそろ時期だろうか。
俺は山の男になったが、まだ一人前の男になったわけじゃない。
「め、メレテ様? その手に持っているのは……」
「ん? 斧だけど」
父の後を継ぐ、立派な男になるときがついにやってきたのだ。
子供のころ、ふと思ったことがある。
これは前世の話だ。
いわゆる一次産業、林業や漁師、農家これって環境を破壊してお金を儲ける仕事なのではと。
悪、なのではないかと。
「それで何を……」
「伐採」
「……え??」
それは偏った考えだったのだろう。
聖書で徴税人が極悪人とされ、その考えを改めさせる行為がキリストの偉業の一つとして数えられたような。
受信料への反感だけで、国政の椅子を獲得するような。
この仕事は環境を守り、森とともに生き、木を殺す仕事だ。
恨まれて当然で、偏見を持たれて当然で……
誇りをもって、胸を張って取り組める仕事だ。
「バイバイ」
俺は大きく斧を振りかぶり、
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ーー次話予告ーー
『第7話 商売』
明日更新
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