第4話 仕事

 第4話 仕事 『十七歳』

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「さて、今日も働くか」


 俺は今、父さんの仕事を継ぎ、林業を営んでいる。


 ここは街から少し外れた森の中、父さんが仕事をしていた森だ。

 昔、この森は街の近くということもあり、たくさんの人たちが働いていた。

 しかし、今働いているのは俺だけだ。


 町は10年前の戦争で荒廃。

 主要機能をすべて隣街に移し、今ではスラムと化している。


 住んでいるのは、仕事を失い無職となった人、犯罪行為を行い追われる身となったお尋ね者、そんな彼らを求め食い物にするマフィアたち。


 俺は今でもそんな街に住んでいる。


「メレテさんお疲れ様です!!」


「お疲れ、何の用?」


「ボスがお呼びです。今後の組の方針について話があるということ」


「そう……しばらくしたら行くって伝え……いや、そうだったな。了解した」


「はい!!」


 ぽん、ぽん、


 うん、どれもよく育ってるな。

 木は古くから信仰の対象となることが多く、林業に携わる人々も当然木を信仰の対象としてきた。

 信仰の集まる場所には当然……


「メレテ様?」


「何でもない。元気に育ってくれよ」


「はい」


 昔はもっとたくさんいたのだろうか?

 当時信仰心を持っていなかった、山の男になる前の俺にはわからない。

 ただ、この妖精たちは父も信仰していた存在かもしれない。

 何となく、暖かいから。


 こんな場所に今でも住み続けている理由は単純、ここから離れたくなかったから。

 ここ以外に、行く場所がなかったから。

 どこにも居場所がなかった俺の、唯一の居場所だったから。


 さて、ドリスが呼んでるみたいだし、さっさと終わらせていかないとどやされるな。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ーー次話予告ーー

『第5話 呼び出し』

 明日更新

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る