第7話 真実
「うわぁっ!!あっぶねぇ〜!」
トシキは危機一髪のところで男の攻撃を避けることができた。
以前のように走って交番まで逃げることも考えたが、コンビニからだと絶妙に遠く間に合うか分からない。
多少勇気はいるが、今度は男を説得してみることにした。
「もしかしてあなたは最近ニュースになっている殺人犯ですか。」
「あぁ、それがどうした。」
男は低い声で無愛想に返事をした。
「なぜこんなことをしているのですか。一体目的はなんなんですか。」
トシキは詰めるように男に問いかけた。
男は震えながら
「とぼけるのもいい加減にしろよ。お前が母さんをころしたんだろ。お前が突き飛ばさなかったら母さんは車に轢かれてなかったんだよ!」
と叫んだ。
この言葉を聞いた時、仮面時間が終わった。
トシキの目の前にいたのは、、ジュンだった。
「お、、い、ジュン、、、なん、で、、、」
狼狽えながらトシキは言った。
「ト、、トシキ、、、か?」
ジュンはその場で膝から崩れ落ちた。
互いに正体が分かり言葉が見つからないまま長い沈黙が続いた。
その時1人の男が
「その話、続きがあることを知っているか」
と言いながら近づいてきた。
その男は2人の担任の吉田だった。
「えっ?続きってなんだよ。もしかして先生がやったのか?」
ジュンが問う。
「違う。お前の母さんは、自殺だったんだ。誰もお前の母さんを殺してなんかいないんだ。」
吉田は俯きながら言った。
「なんでそんなこと先生が知ってるんだよ。」
不満をあらわにしながらジュンが聞くと
吉田は申し訳なさそうに
「自殺する前日、お前の母さんは私宛に1本電話をしてきた。もう生きるのに疲れました。単身赴任中の旦那とジュンには申し訳ないけど、先に逝きます。という言葉だった。」
と明かした。
「でも偶然通りかかって声をかけようとした時俺は見たんだ。鳥顔の仮面が母さんを突き飛ばしたところを。それがトシキの仮面とおなじだった。」
ジュンは苦し紛れに抵抗を見せたが、
「ごめん、それは違う。僕は止めようとしたんだ。信号が赤なのに渡ろうとする人がいて、必死に服を引っ張った。でも遅かった。あの人がジュンのお母さんだったなんて、、、。知らなかった。」
トシキはあの時のことを思い出し、少しずつ話し始めた。
「じゃあ先生、その言葉を聞いた時なんですが俺に教えてくれなかったんだ。教えてくれれば関係ない人を殺さずに済んだのに、、、。」
ジュンは罪悪感があったことを打ち明けた。
「今になっては言い訳になってしまうが、教えてしまえばお前は自分のせいだと思い込んでお前も自殺していたかもしれないだろう。それだけは避けたかったんだ。」
吉田は後悔していた。
「くそう。じゃ、じゃあ俺はとんだ勘違いをして何人も殺してしまったのか、、、。」
ジュンは絶望した。
「くそぉぉぉぉぉっっ!!」
ジュンの泣き叫ぶ声が静かな夜の町に響いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます