最終話 出発

襲撃の翌日、学校にジュンは来なかった。

学校から帰宅し、テレビをつけるとニュースにジュンが映っていた。


フードを深くかぶっていて顔はよく見えなかったが同姓同名だったため、トシキはすぐにジュンだと分かった。


動機がどうにしろ、何人も人を殺害してしまったことには変わりはない。

少年院に収容されることは不可避だった。


トシキが最後の面会に行くと、以前よりやつれた表情をしたジュンがいた。


ジュンの顔を見ると言葉が出なかった。


「あ、、ジュンのお母さんの部屋からこんなものが出てきたぞ。」

トシキは思い出したようにバッグから手紙を出した。


ジュンは目を見開き、驚いていた。

すぐに受け取るとそこにはジュンに向けてメッセージが残されていた。


「ジュンへ。今はどうしていますか。この手紙を読んでいるということはお母さんはもうこの世にいないということでしょう。


ジュンを置いてこの世を去ってしまうことを謝らせてください。ごめんね。


ジュンはお母さんが死んでどう思っているのかな。

これで恨まれてもしょうがないと思います。でも、お母さんはジュンのこと大好きだよ。


もっと一緒にご飯食べればよかったなぁ、、、

今になって後悔しています。


でも、もう行かなくちゃ。


最後に、ジュン、、、お父さんやお友達を大切にしてね。

これから起こることにめげずに元気に過ごすんだよ

今までありがとう。   お母さんより」


「こんなのずるいよ、、、いまさら。」

ジュンは鳴き声混じりに言った。


「なぁ、ジュン。お母さんが言った通り、お前は愛されていたんだよ。もう一回俺と一緒にやり直そうぜ。」とトシキが言った。


「ゔぅん。」ジュンは頷きながら泣き崩れてしまった。


それからしばらくして

ジュンは元々学校で優等生だったこともあり、少年院の中でも模範生として少し早く釈放された。


トシキが迎えに行くと、ジュンは涙をこぼしながら

「ありがとう。」と一言だけ発した。


トシキも知らない間に泣いていた。

「これから2人で頑張ろうな。」


雲一つない空がトシキとジュンを励ましているようだった。


          ー完ー

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仮面時間 羽造 泰 @uzou-yasu

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