第27話 ハワイに到着したよ
「あおり、実は長距離を泳げる人たちを、みんな招待していたんだよ。
だから、本当にサプライズ」
仁堂くん、思いっきりの笑顔。……なんだろーな。
ほら、笑顔は口調だけで、顔はイカだから。
つまり、結婚式に参列者がいるんだ。
ということは、牧師さん役もいて、ああ、あこがれの結婚式じゃん。
なんか、可笑しいよね。
2人きりでの結婚式にあこがれていたのに、いざその時になったら参列してお祝いしてくれる人がいたらもっと嬉しいって。
私の持っていた夢って、なんかあまり周りが見えていなかったのかなー。
長田先輩が、私たちを案内してくれようとしたけど、あまりに泳ぐのが遅い。っていうか、私たちが速すぎるんだよね。
なんたって、ロケット噴射だもん。
仕方ないから、私が足で長田先輩を抱えた。仁堂くんの足はまた、復活しきっていないからね。
「こっちだ」
って長田先輩が首を伸ばす方向に、一気に加速する。
「ひゃっほぉーーーーっ!」
とか、
「タリホー!」
とか、長田先輩が興奮して叫ぶのが聞こえる。
先輩、ここは富◯急ハイランドじゃありませんからねー。
遠くからでも、特徴的な地形の島が見えてきた。
「あれって、もしかして……」
「そうだよ、あれ、ダイヤモンドヘッドだ。間違いない」
仁堂くんと話す。
本当に、泳いでここまで来ちゃったよ。
まさかの行動力だよね、私たち。
すごいよ、私たち。
そして、私たちは止まった。
「あまり近づくと、ハワイ周辺は怖いんだよ。
なんたって、米軍の本拠地だからセンサーが張り巡らされている。
仁堂とあおりちゃんは、巨大潜水艦と誤認されたら、それこそなにが起きるかわからないからね」
なんて、長田先輩、恐ろしいことを言う。
「そうですね、戦略原潜並みの大きさだもんね、俺たち」
と、仁堂くんもよくわからない相槌を打つ。
ともかく、私たち、攻撃されかねないってことだけはわかった。
「そか、身体が小さければ、もっとハワイに近寄れたのかな?」
ちょっと悲しくなって、そう聞いてみたら……。
「とんでもない。
俺らはトローリングとか、観光客に狩られる存在。
そっちの方がよほど怖いんだよ。
みんな一度は、怖い目に会っているからね」
うっわ、人間ってば横暴だよっ!
仕方ないね。
でも、それでもここでみんなに祝福されて、結婚式ができる方が遥かに嬉しい。
私たち、結婚式を用意してくれた、みんなの待っている場所に近づいていく。
私は目がいい。
いろいろな形のシルエットが、2列に並んでいるのが見えてきた。
「列の真ん中に行って」
長田先輩の言葉。
仁堂くんと頷いて、減速しながら近づく。
いよいよ、いよいよなんだよね。
仁堂くんにタキシードはないし、私にもドレスも、当然文金高島田の角隠しもないけれど、それでも、結婚式なんだよね。
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